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攻略済みの戦国世界に転移した私、無双して明智光秀を救ったのに歴史がズレ始めた  作者: 西住


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第一話「戦火は消えない」

前作とは別作品です。

「攻略できるはずの戦国世界がズレていく」話です。

 ——息が、白い。


「……え?」


 目を開けた瞬間、視界に広がったのは空だった。

 やけに高くて、やけに冷たい青。


 体を起こすと、枯れ草がぱきりと音を立てた。


 山だ。


 見渡しても、木と斜面しかない。


「なんで……」


 言葉が、続かない。


 ポケットに手を突っ込む。スマホはあった。

 画面をつける。圏外。


 それ以前に——


「ここ、日本……だよね?」


 ありえない。


 さっきまで、あーしは部屋にいたはずだ。

 動画を見ていた。自分で作った「ゲームの攻略動画。」


 ——本能寺の変から後


 どうすれば、明智光秀は死なずに済んだのか。


 何度も調べて、何度も考察して。

 もしあの時、こうしていたら——なんて。


「……いや、今それ考えても意味ないでしょ」


 頭を振る。


 とにかく降りないと。

 山なら、下に行けば人がいるはずだ。


 あーしは斜面を下り始めた。


 どれくらい歩いただろう。


 不意に、声が聞こえた。


「——これまでか」


 低く、落ち着いた声。


 反射的に足を止める。


 ゆっくりと、木の陰から覗いた。


 そこにいたのは——


 血に濡れた、武士だった。


 鎧は壊れ、体中に傷。

 膝をつき、地面に手をついている。


 その周りを、数人の男たちが囲んでいた。


 一人が、刀を抜く。


「お覚悟を」


 ——分かる。


 これが何か、分かる。


(介錯……)


 喉が、乾く。


 止めなきゃいけない。

 そんなの、分かってる。


 でも——


(無理でしょ……)


 足が動かない。


 だって、刀だよ?

 血だよ?

 人が、今から死ぬんだよ?


 視界が揺れる。


 その時。


 膝をついている男が、顔を上げた。


 目が、合った。


 ——その瞬間。


(……え?)


 胸が、妙にざわついた。


 どこかで見た顔。


 いや、違う。

 こんな状況で、知ってる顔なわけがない。


 でも——


(この人……)


 頭の奥で、何かが引っかかる。


 名前が、浮かびかけて。


 でも、それを必死で否定する。


 ありえない。


 そんなはずがない。


 だって——


(この人は……)


 その時、刀が振り上げられた。


(やばい——)


 分かってる。

 このままだと、間に合わない。


 声を出せばいい。

 分かってるのに——


(声、出ない……)


 喉が、固まっている。


 頭が真っ白になる。


 その瞬間。


 ポケットの中で、スマホの角が指に触れた。


(……これ)


 心臓が、跳ねる。


 使う?

 いや、でも——


(そんなこと考えてる時間ないでしょ!!)


 震える手で、画面を開く。


 適当にタップする。


 再生。


 ——次の瞬間。


 山に響いた。


 鬨の声。

 怒号。

 そして——鉄砲の轟音。


 全員が、動きを止めた。


「なっ……!?」


 刀を持っていた男が、周囲を見回す。


「敵襲か!?」


 ざわめきが広がる。


 今だ。


 あーしは、無理やり一歩踏み出した。


「……まって、ください」


 声は、かすれていた。


 でも、出た。


 全員の視線が、こちらに向く。


 怖い。


 逃げたい。


 それでも——


 目を逸らさなかった。


「その人……」


 言葉が、震える。


「その人、死なせちゃダメです」


 静まり返る。


 ありえないことを言っているのは、自分でも分かってる。


 でも。


 分かってるからこそ、言った。


 あの目を、見てしまったから。


 膝をついた男が、こちらを見る。


 静かな目だった。


「……娘」


 低い声。


「何故、止めた」


 問われる。


 答えなんて、まとまってない。


 でも——


「……分かるんです」


 気づけば、そう言っていた。


「このままだと、その人……」


 喉が詰まる。


 それでも、続ける。


「ここで、終わるはずの人だから」


 空気が、凍る。


 誰かが息を呑む音がした。


 それでも、あーしは言った。


「でも、それ……間違ってるから」


 沈黙。


 長い、長い沈黙。


 やがて。


「……面白い」


 小さく、声が漏れた。


 膝をついていた男が、わずかに笑った。


「名を、聞こう」


 風が吹く。


 冷たい空気が頬を打つ。


 あーしは、一歩近づいた。


「春日部です」


 声は震えていた。


 でも、逃げなかった。


「……春日部」


 その男は、ゆっくりと繰り返す。


 そして——


「ならば問おう」


 静かに、こちらを見た。


「この先、何が起こると知っている?」


 ——確信する。


 もう、否定できない。


 この人は。


 この目は。


 この声は。


(……明智、光秀)


 心臓が、強く鳴る。


 知っている。


 知っているからこそ、分かる。


 この人は、このあと——


 死ぬ。


 山崎で敗れ、逃げて、落ち延びて。


 ここで終わるはずの人だ。


 でも。


 あーしは、息を吸った。


「……変わります」


 はっきりと言う。


「ここから先の歴史は、全部」


 全員がこちらを見ている。


 それでも、続けた。


「その人が死なない未来に、変えます」


 沈黙。


 次の瞬間——


「はは……」


 小さく、笑いが漏れた。


 血に濡れた男——明智光秀が、笑っていた。


「戦は終わったと思っていたが」


 静かに、言う。


「どうやら、まだらしいな」


 風が止む。


 空気が、変わる。


 ——戦火は、消えていない。


 この日。


 本来ここで終わるはずだった歴史は。


 一人の少女の選択によって、書き換えられた。


 それがどこへ向かうのか。


 まだ、誰も知らない。

本小説をご覧になって頂きありがとうございます


この小説の元になった動画(攻略動画)は

夏頃に公開予定ですので

忘れずにチャンネル登録及び

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