忍び寄る影
時刻は10時32分。
いつもなら2人とも寝ている時間だが、彼女達は眠気を我慢して身支度を整えていた。早い話が、狩りの準備。
この時間なら暗くて見つかりにくい上にターゲットを絞りやすいのではという沙樹の提案からである。
ロープを持ち、山を降りた2人はターゲットを探し始めた。
昼間と比べて流石に人は少なく、淡いオレンジ色の街灯だけが辺りを照らしている。
それでも人肉が必ず手に入ると信じ、京子はひたすら沙樹の背中を追いかけていた。
探し歩くこと10分。
重なり合う影を掻き分けていく中、2人はターゲットを発見した。
それは、泥酔して地面に寝転がっている1人の青年だった。
服は嘔吐物に塗れ、モデル並の端正な顔は酒気のさめない赤色を帯びている。
しめたと言わんばかりの表情を浮かべた沙樹は彼に近寄り、そっと寄り添った。
「※◇♂×△……」
何やら沙樹に話しかけているようだが呂律は回っておらず、夢の世界に旅立つ一歩手前の状態だったのだが、狩る事が目的である沙樹にはそんな事はどうでも良かった。
むしろまともに歩く事も話す事もできない分、殺すのに好都合なのだろう。
彼女はロープを手に取ると青年の首にそれを括りつけ、喉を思い切り締め上げた。
青年は突然の窒息で悶え始め、幼虫のように身を捩らせたがその抵抗もまったくと言っていいほど意味がなく、3分経過する頃には充電が切れたように動かなくなった。
沙樹の成すがままとなり、アルコールの臭いが残った若い男の死体。
首のロープをほどき、締めた痕跡を彼の髪の毛で隠すと、京子と2人で抱えて山へと戻った。
知らない人から見たら爆睡しているようにしか見えない為、万が一通りすがりの人に見つかっても怪しまれる事は無かった。
まさか上品そうな美少女2人が、男を殺して運んでるとは夢にも思っていないのだから……。




