女の子になってしまった
ジリリリリと目覚まし時計の音が聞こえる…
起床の時間だ…
寝相の悪さで目覚まし時計から遠ざかっているが、この距離ならギリギリ届く…
「よっと…あれ?」
届かなかった…
いつもなら届いてるのに…
今度はもうちょっと前のめりに…
「ん…あっ…」
左手で止めようとしたが支えていた右手が少しズレる…
次の瞬間、俺の指が目覚まし時計の小さいハンマーみたいな形のやつと鐘に挟まれた。
「ぎゃあああああああ!!!」
【第1話:女の子になっちゃった系男子】
「ぬおあああああ!!!」
めちゃめちゃ痛いんだけど!!
結構な勢いだったぞ!!
てか今ので指細長くなって見えるんだが!!
「「兄ちゃん!?」」
弟の月と妹の光が俺の部屋に駆け込んできた。
「どうしたー?…ん?」
続いて姉の涼奈が入って来た。
ってなんだその睨むような目は!
「あれ?」
「兄ちゃん…じゃない…?」
!?
「むしろ姉ちゃんだ!」
「は!?姉ちゃんってどういう…なんで俺こんなに声が高いんだ…?」
「その髪色見ただけで大体わかるけど…一応聞いておくわね、あなたの名前は?」
「『緑毛 陽』だけど?」
「やっぱり陽なのね…あなた今どっからどう見ても女の子になってる事に気づいてる?」
「へ?」
そう言って自分の手を見ると…うわ!さっき挟んだ指以外も短い!
「ほんまや…」
「なんで指を見ただけで判断するのよ…」
「僕ちょっとお母さんに知らせてくるよ!」
「あっ!光も!」
2人が出ていった。
ちょっと頭の中の整理が追いつかないぞ…
そう思いつつ頭をかく…
「髪まで長くなってやんの…」
「背も見た感じ縮んでるわね。」
「え゛っ!?」
変な声出た。
というか背が縮むのは勘弁して欲しいんだけど!?
この前170行って喜んでたのに…
「通りで目覚まし時計に届かないわけだ。」
「その目覚まし時計なら止めておいたから私達も行きましょ。色々考えたら結構めんどくさい事になりそうなのに気づいたから。」
「夢オチとかないかな!」
「それならあんたあんなに痛がらないでしょ?」
「姉さんの夢とか!」
「朝起きてすぐタンスの角に小指ぶつけたわよ?」
なんだこの家庭トラップハウスかよ…
とりあえずいつものように階段を降りてリビングに行く。
「あんたの髪の毛が黄緑で良かったわ。特徴的ですぐ誰かわかったから。」
「髪の毛深緑も似たようなもんだろ!?」
「母さーん、連れてきたよー。」
あんにゃろ話そらしたな。
まあ階段がリビングに直結してるから無理ないけど。
「あら〜陽、可愛くなっちゃって〜♪」
「母さんはなんでそんなマイペースで居られるんだよ。」
「まあ2人から話を聞いてるからね。主に説明してたのは月だけどね。」
話を聞いてもそんな落ち着かないぞ普通!
ちなみに月が今年中2で光が小4、俺が今年高1、姉さんが今年高2だ。
で、今が春休み…あっ。
「学校どうすんだよ…」
「お父さんがもう連絡入れて手続きしてるわよ?」
「父さんもよくそんなに早い対応できるわね。」
「ついでに戸籍とかにも連絡入れてくれるわよ?」
「俺が戻れるかもしれないのにか!?」
「こういった奴って大体戻らないもんなのよ♪」
俺の家族どうかしてやがる…
「で、服とかどうする?」
あっ、全然考えてなかった…
「いつもので!」
「いつものと違うのにするから聞いてるのよ?」
「えー…」
せめてスカート履くのは勘弁…
「あ、スカート履くのは勘弁って思ってるかもしれないけどどうせ制服で着るわよ?まだ注文してないからちょうど良かったわ〜。」
「マジかよ…」
知り合いに見られたら面倒じゃん…特に幼馴染みの『赤井 劉生』……そういえば
「今日って劉生来るって言ってなかったっけ…?」
「そういえばそうね。あと2分ぐらいかしら?」
そうだよ!
集合時間起きて十分程度じゃん!
幼馴染みだから別に目の前で着替えても大丈夫って思ってたけど今はまずいだろ!
「母さんちょっと着替えてくる!」
「着替えてもブカブカよ?」
「そうじゃんチクショー!」
「あ!劉生君だ!」
「あ…」
「タイムオーバーね、まず着替えなくても別に家の中で過ごせばいいじゃない。」
「そうだった…」
焦り損した…
ってそれどころじゃない!
「これどう説明するんだよ!」
「……自分で考えて♡」
「えっ!ちょっ「おじゃましまーす。」あっ…」
「???」
…まずい事になったー!!
めっちゃ困惑した顔してるんだけど!!
そりゃ幼馴染みのパジャマ着てる女を見たらそうなるけど!!
「えっ…なんで陽女装してるの…?」
「そう来たかっ!!」
ちょっと今「お前誰?」って言われると思って構えてたのに変化球投げてきたか!!
「陽…なんか声が…」
これをどう説明すれば…
「劉生君、私が説明するわね。」
姉さんぐっじょぶ!
「(小難しい説明)」
「あ〜、さっぱり。」
「まあそうなるわね普通。」
ダメだったかい…
「まあ大体は状況が掴めた。つまり朝起きたら陽が女になったと。」
「話が早くて助かるわ。」
「いや!まだ例の所を確かめてない!」
「話をややこしくするな!もこってしてないから確かめなくてもわかるわよ!」
「下品だぞ姉さん!」
「話を戻したいのだけど…」
「「ごめんなさい。」」
(息合ってる…)
「リビングにずっといるより姉ちゃんの部屋に移動した方がいいと思うな。」
「「「アッ、ハーイ。」」」
(((息合ってる…)))
ニンジャの如くリビングから立ち去る。
「所で俺は陽の事をなんて呼べばいいんだ?」
「「あっ…」」
「決めてないのか…」
「陽…よう…(σ`・д・)σYO!!!」
「余裕だな。」
「何やってんのよ…」
余裕では無い、混乱のゆえにこうなっているのだ。
「はい、ついた!着席!」
「女の子になった副作用で熱でもあるんじゃない?」
「知らない、知らない!」
それで何を話すんだっけ?
「ポカーンとするな、名前を決めるんだよ。」
「そうだった!」
「それより先に顔洗ってきなさい。すっかり忘れてたわ。」
「うっす!」
顔を洗いに洗面所に行く。
そういえば今どんな顔になってるんだろ?
ついた、鏡、鏡。
「あー…やっぱり顔立ちは女になってるな…」
でも造りはほとんど同じだなー。
《数分後》
「ただいま!」
「おかえり。」
「今、あなたの名前考えてたのよ。」
本人を差し置いて考えてたのか…
まあ自分で考えるより楽でいいや。
「で、名前に『陽』の字を残そうと思ってな。」
「今思ったんだけど名前そのままじゃダメ?」
「知り合いに会ってめんどくさい事になっていいならいいわよ。」
「やっぱ変える。」
「本題に戻すけど、二人で考えて『陽菜』ってのが思い浮かんだ。」
oh...なんと女の子チックな…
「で、どうだ?」
「ボクオトコノコダカラワカンナイナー。」
「今は女の子だろ…じゃあ涼奈さん。」
「陽菜で決定します!」
「ちょっ!はぁ…もうそれでいいよ…」
「じゃあ私は報告してくるわ。」
「いってら〜。」
「それで陽…じゃない陽菜、この先どうするんだ?」
「どうするって何を?」
「知り合いにあった時自分だと言うかか他人だと言うか。」
「他人って言う。」
中学時代ほんと友達劉生しかいなかったし俺だとわかると気まづくなっちゃうからね。
「それで喋り方とかいなくなったって事になる陽の事はどうするんだ。」
「喋り方は変えなくていいでしょ、そんで俺はアメリカにでも留学したって事にしておこう。」
「そんなんでいいのか…?」
「いいでしょ。」
「やっぱり喋り方は治そうな。」
「えーー…」
「特に一人称。」
「俺じゃダメか?」
「せめてボクにしような?」
「やだって言ったら?」
「じゃあオレ?」
「どこが違うんだよ!」
「文面?」
「??」
会話がよくわからないな…
「じゃあ自分の事はオレで他はそのままと。」
「もっと優しい感じでいこうな?」
「え゛ー。」
「優しい感じでいこうな???」
「はーい…」
「おーい、もう大体の方針は決まった?」
「決まりました。」
「じゃあ陽菜の服を買いに行くわよ。」
「「えっ。」」
長い1日になりそうだ…
続く