罪の行き所
私には好きな人がいた。
その人はいつも好きな人のことを自慢げに語っていて。
その顔が好きだった。
そんな人の顔が好きなのだろう。
「おう、牧田さん」
「はあ、いつもいつもなんで私のいる場所がわかるんですか?堂本さん?」
「うん?そりゃ好きだから!」
「答えになっていませんが?」
私は最近彼、堂本喜一先輩に付きまとわれている。
「あのですね?面倒で言わないだけで嫌がってるんですが?」
「まあ、そう言わないでよ?」
そう言って隣に座ってくる。
「またお昼一人なんですか?」
「牧田さんもだろう?」
「はあ、私は友達があなたといるのをよく見てるから遠慮して一人にしてくるんですよ」
とんだいいおせっかいである。
「ふふ、分かっているな」
「はあ」
こんな調子で彼は決して私を嫌わない。
そして離れない。
「あのですね。私はあなたが嫌いです」
「俺は好きだ」
いつもこれだ。
「なんでなんですか?」
「なんでとは?」
「だから、好きな理由ですよ」
「ああ、それは君が俺に教えてくれたからだよ」
「岐路ですか?」
「ああ、俺はあれで考え直せた」
「結果ハーレムですか?」
「ぐっ!?そ、それはまだ間違いだった。すまんない」
このことだけは弱いのかいまだに言われるとへこむようだ。
「俺は怖かったんだ……」
彼は静かに語りだす。
「昔は俺地味で大人しくて目立たなかった。それで、妹の京子に頼んだ。俺を変えてくれってな」
「へえーそんな経緯が……妹!?」
「ああ、言ってなかったか?」
「言ってませんよ!」
「離婚して俺は母親のもとに京子は父親のもとに行ったんだ」
なるほどそれで京子さんのご両親は娘に興味がなかったのか。
「で、俺は変わった。そして、俺に女が群がった。はじめは戸惑ったよ。だから、俺は京子に頼んだ。俺と同じ男慣れしてないやつを紹介してくれって」
「それで桃花先輩ですか?」
「ああ……」
彼の顔は一層暗くなった。
「今思えば哀れだった。そんなになってまで好きでもない人を抱いて最低だ」
彼はそう吐き捨てる。
「反省はしているみたいですね?」
「ああ、西木にも悪いと思ってる」
「はあ、本当に初めからから気付いてほしかったですね」
「ああ、すまない……」
彼なりに反省はしているが……
「許されないことなのは分かってますね?」
「分かってる。一生背負っていく気だ」
彼の眼は本気だった。
「はあ、仕方ないですね?」
「??」
私は彼のほっぺをビンタする。
「これは先輩の分です」
「牧田さん……」
そして再度ビンタする。
「そしてこれが私からの分です」
「ああ……確かに受け取った…」
「ならよかったです」
私は一息おいて告げる。
「これからは、道を誤らないように私が近くで見てあげます。」
彼は固まっていた。
「いいのか?俺なんかで?」
「二度は言いませんよ?」
彼は少し泣きながら私の手を握る。
「ありがとう……」
そこには確かに生きた人間の生きた感情が流れていた。
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