表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/155

5話 ………ばか

 

 ボクはどうすれば良いのだろうか…。


 どうしてボクとメイが結婚できない法律があるのだろうか。そんなの、おかしいと思う。何故? 誰が?


「ねぇ、サイコス…。ボクはどうすれば良いの?」


「サイコス殿と結婚すれば良いんだ」


 ボクの問いに、サイコスが答える前に父さんが答えた。父さんは、ボクの気持ちなんて全く考えていない。


「…やだよ。ボクはメイが好きなんだよ」


 今更メイと結婚することが不可能だと言われても、ボクの気持ちは変わらない。たとえ結婚できないとしても、ボクはメイと一緒に居たい。一緒に居る。


「カーラの気持ちがどうであろうと、サイコス殿と結婚してもらう。明日、教会に行き、手続きをするぞ。形だけの結婚で構わないんだ。それくらい言う事を聞いてくれ」


「なっ…。 …形だけ…か…」


 その父さんの言葉に、サイコスは何故か動揺し、小さな声で何かをボソッと言うと、悲しそうな顔をした。さっきは嬉しそうにしていたのに、やっぱりボクと結婚するのは嫌なのかな?明日っていうのが早すぎると思ったのかな?


 明日なんて期限も無いし、ボクだって、そんな事のために教会に行きたくない。


 …教会?


 そうだよ!教会だよ!


「神官様にお願いして、法律を変えて貰えば良いんだ!そうすれば、ボクはメイと結婚できる!神官様なら可能だよね⁈」


 そうすれば、ボクはメイと結婚できるし、サイコスも嫌な結婚をしなくて済む。そう思い、ボクは言ったけど、父さんとサイコスは明らかに表情を崩した。


「…カーラ、そんな簡単に法律は変えられない。教会での法律を変えたいのであれば、神官様が提案し王国会議にて討論し、可決されなければならない。神官様に今から提案してもらっても、明日までには絶対に可決されない。いい加減、諦めてくれ」


「…そんな。…ねぇ、サイコスも嫌だよね?ボクと結婚するのなんて嫌だよね?サイコスはボクの事が嫌いだもんね」


 自分で言うと悲しくなるけど、サイコスは、ボクの事を嫌っているんだから、本当は嫌に決まっている。父さんに何か良い条件を出されたから、ボクと結婚しようとしてるんだ。


 だけど、ボクの言葉にサイコスは目を丸くし、口を開く。


「…なんで、そうなるんだ?嫌な訳がないだろう? 俺はカーラの事が、ずっと好きだったんだから。俺はカーラと結婚したい」


「…え?」


 …どういう事?


 …サイコスがボクの事を好き?


 …え?


 サイコスはボクに対して、いつも素っ気ない態度だし、ボクの事を嫌っているはず…。


 …え?


 …サイコスが…ボクを好き???


 ボクは、頭の中が混んがらがった。


「カーラ、もう一度言うぞ。俺はカーラの事が好きだ。俺と結婚してくれ!」


「…え?…ええええぇぇぇぇ⁈」


 ボクは、今までの人生の中で、一番の衝撃を受けた気がする。サイコスがボクに向ける感情を全く逆に捉えていたからだ。結婚したくは無いけど、凄く嬉しい。ボクは、メイ以外に好きだと言われた経験がないからだ。


 ボクの事を好きだと言ってくれるのは、メイだけだと思っていたのに。


「…サイコス。…ありがとう。嬉しいよ。…でも、ボクは…」


「では決定だな。サイコス殿、明日はよろしく頼む。行くぞ、カーラ」


「ちょっ…!!」


 そしてボクは、それでも結婚できないという気持ちを伝えられないまま、父さんに無理矢理引きずられた。


 …どうしよう。



 ♢♢♢



 そして翌日、父さんは、抵抗するボクを無理矢理、教会に連れて行った。


 教会に着くと、入り口にサイコスが立っているのが見えた。サイコスはボクを視界に入れると、高らかな声でボクを呼んだ。


「カーラ!!待っていたよ!結婚しよう!!」


「…えっと」


 昨日も驚いたけど、今もまだ信じられない。サイコスがボクに好意的な感情を向けてくる実感が湧かない。長い長い夢を見ている様な気がする。


「はあぁぁぁぁぁぁ?!?!??????」


 ドタタタタタタッツ!!!!!


 すると、サイコスの大きな声に反応したかの様に、教会の中から声が聞こえ、走る足音が近づいてくる。


「ちょっと!!サイコス!!今なんて言ったのよ!!!」



 教会の中から現れたのは、ソフィーだった。ソフィーは、もの凄い形相で、サイコスに掴みかかる。


「聞こえたままだよ、ソフィー。悪いな」


「んな…! ふざけんじゃないわよ!!!」


 ソフィーは、更に凄い形相になり、サイコスに迫る。そして、数秒間サイコスを睨みつけた後、ボクの方を向いた。


「…カーラ、嘘よね?サイコスと結婚したりしないわよね?」


「…えっと。ボクは、そのつもりが無いんだけど、父さんが勝手に決めちゃって…。どうしたらいいんだろう…」


 ボクが、そう言うと、ソフィーの顔は崩れ、目から涙が溢れ出してきた。


「ちょ、どうしたのソフィー⁈ どっか怪我でもしちゃったの⁈」


 ソフィーは自分で怪我を治せるし、そんな訳が無いと思いつつも、ボクにはソフィーが泣き出す理由が分からず、そう言った。ソフィーが泣くのなんて、今までに2回しか見た事が無いし、ボクはどうしたら良いのか、更に分からなくなってきた。


「…カーラのバカ。…バカバカバカバカぁぁぁぁ!!!」


「ふうぇえぇ⁈ ごめんね、ソフィー。…えっと、ごめんね」


 何故、ソフィーがボクの事をバカと言ったのかは分からないけど、そう言われたという事は、ボクが分からない内にソフィーを傷つけてしまったのだろう。


 最近は、ソフィーと少し仲良くなれて、ソフィーの気持ちも少し分かる様になってきたと思っていたけど、どうやら、そんな事はなかったみたいだ。やっぱりソフィーは、今でもボクの事を嫌っているみたい。


「………ばか」


 そして、最後にもう一度、ソフィーは小さな声でそう言うと、黙りこけてしまった。


「えっと…。どうしよう。どうしたら良いの、サイコス?」


 ソフィーは、ボクよりもサイコスとの方が仲が良いし、ボクの分からない気持ちも、サイコスなら分かるかもしれないと思い、ボクはサイコスに尋ねた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ