6話 ??
ボクは、ソフィーが泣いた理由も、黙った理由も分からず、サイコスに尋ねた。すると、サイコスは言いにくそうに、口を開いた。
「ソフィーは、カーラが俺と結婚する事が嫌なんだ」
「…え? …そうなの?」
ボク達が結婚するのが嫌…。という事は、ソフィーはサイコスが好きだから、結婚したいと思っていたって事?
それなのに、サイコスがボクと結婚する事になってしまって、泣き出してしまったという事か。だから、ボクはソフィーにバカと言われたんだ…。
…やっぱり、サイコスは凄いな。ソフィーに好かれているし、ソフィーの気持ちを理解している。
…ボクとは大違いだ。
…そっか。そうだよ!
「だったら、ソフィーがサイコスと結婚すれば良いんだよ!」
「…な! 何を言い出すんだよ、カーラ!」
すると、サイコスはあからさまに動揺し、ボクにそう言ってきた。
やっぱり、サイコスはボクの事を好きだと言ったけど、それ以上にソフィーの事が好きなんだ…。今の反応を見れば、ボクでも分かってしまうよ。
「サイコス、ごめんね気づかなくて。サイコスはソフィーと結婚する方が幸せになれるよ」
「そうじゃない!!そんな事を提案してしまったら、ソフィーが…」
「そうよ!その手があったわ!!サイコス、私とも結婚しなさい!!」
ボクが考えた通り、ソフィーはサイコスの事が好きみたいで、サイコスの言葉を遮るように、急に元気になって声をあげた。
「ちょ、ちょっと待て、ソフィー!!」
「待たないわよ!今を逃したら、もう一生無理になるじゃない!」
サイコスが結婚する前。つまり、今日を逃せば、ボク達が離婚するのを待つか、第二夫人になるかの道しかない。貴族は簡単には離婚できないと思うし、サイコスの一番になるには、本当に今しかない。
ソフィーは気が強いし、きっと諦めたりしないだろうけど。
…でも、良かった。このまま言われるがままにサイコスと結婚してしまっていたら、サイコスの幸せを奪い、ソフィーに恨まれたに違いない。本当に良かった。
「…いや、だが…」
「黙りなさい!あんただけ抜け駆けするなんて、絶対に許さないんだから!」
…ん?
…あれ? サイコスが抜け駆け? …そんな話だったかな?
「いや…、これはユリアール侯爵に決めていただいた事で、そんな無茶は許されないだろうが」
そう言うと、サイコスは父さんの様子をうかがった。
すると、父さんは少し考え込むと、訳の分からない言葉を発した。
「…いや、寧ろありがたい。カーラが変な事をしない様に見張ってくれる相手は、少しでも多い方がいい」
「決まりね!私も結婚するわ。よろしくね、カーラ!」
「うん。……え?」
さっきから、何故かみんなが言っている事が理解できない。サイコスはソフィーと結婚するんだよね?何がどうして、ボクを見張ってくれる相手が多くなるの?
「さっ、行くわよ、カーラ!」
「え、うん。…え?ボクも行くの?」
そして、ボクはソフィーに手を引かれ、教会に入っていった。
ボクは今から、サイコスとソフィーが結婚するところを祝福すれば良いんだよね?そう思うんだけど、父さんはボクが結婚しない事をすんなり受け入れたとは思えないし、疑問点が多く残る。
それに、ソフィーが手を引く相手は、ボクではなくてサイコスだと思うんだよね。ソフィーはサイコスと結婚するんだよね?
ボクは、もう何が何だか分からない。理解できていないのはボクだけみたいだし、今はみんなに任せるしか無いけど…。大丈夫だよね?
♢♢♢
「神官様!!」
「あらあら、ソフィーちゃん。随分と嬉しそうね。カーラちゃんとサイコスちゃんが結婚する事を聞いちゃったから、絶対に阻止すると思っていたんだけどねぇ」
神官様は、サイコスの声を聞き、ソフィーがボク達の元に駆けつけたのを見ていた様で、そんな事を言ってきた。つまり、神官様もソフィーの気持ちにしっかりと気づいていたという事だろう。
…やっぱり、ボクだけがソフィーの気持ちを理解できていなかったみたいで悔しいな。
「大丈夫です!私もカーラと結婚しますから!」
「…あらあら」
「…え?」
…何かがおかしい。さっきも疑問に思ったけど、ソフィーはサイコスと結婚するんだよね?
…言い間違いだよね?
…でも。もし、言い間違いでないならば、ソフィーもボクと同じで、女同士で結婚できない事を知らないんじゃないだろうか。
…いや、そんなはずは無い。ソフィーは教会に住んでいて、次の神官になるだろう人だ。そんなソフィーが、法律を知らない訳が無い。…やっぱり、サイコスがボクに嘘を付いている?…でも、サイコスはボクに嘘をつかないし。
ボクは、さっき以上に、訳が分からなくなってきた。
「神官様、急いで準備しましょ!」
「あらあら…。どうしましょうか」
そして、ボクの疑問が解消される事はなく、ソフィーと神官様が、婚姻の儀の準備を始めた。分からない事を誰かに聞こうにも、父さんとサイコスは2人で難しそうな話をしているし、ボクが入っていける余地がない。ソフィーは凄く嬉しそうにテキパキと準備をしているし、邪魔する事も出来ない。ボクは、あんなに笑顔で嬉しそうなソフィーを、初めて見た気がする。




