8話 お肌の悩み改善
「おわっ⁈ …おはようございます、サクラさん」
「うん。おはよう」
私が目を覚ますと、目の前に私を見つめるサクラさん。思わず驚いてしまいました。目が覚めた瞬間に、凝視されている事に気付くと、びっくりするものなのですね。
「…眠れなかったのですか?」
「ぐっすり眠れたわ。でもね、1時間くらい前に目が覚めちゃったのよ。それから眠れなくて」
あぁ、サクラさんは今まで早起きしているはずですもんね。私がギルドに行く頃には、既に仕事をしていますからね。ほとんど休みなく毎日…。
きっと、その癖が完全に付いているのでしょうね。7年は長いですから、簡単には抜けないでしょう。
「メイちゃんって肌綺麗よね。若さかしら?」
「えっ?」
急に言われて驚きましたが、そう思うのは必然かもしれません。実を言うと、ここ最近はほとんど気にしていませんが、お肌の調子が良いです。安宿から抜け出して2カ月ちょっと。私はどんどん健康になっている気がします。その理由は、美味しいご飯と素敵なお風呂に激しい運動。そして何より…。
『回復』
「サクラさんも綺麗ですよ」
「…え⁈ 何したの?回復魔法?」
どうやら、私の回復魔法は凄い性能みたいなのです。というより、聖女の神聖魔法は凄いです。ソフィー様や神官様も、お肌が綺麗ですからね。そして、私がほぼ毎日掛けているカーラも。
近くで見ると、サクラさんは少し肌が荒れていましたが、少し綺麗になりました。続けていけば、もっと綺麗になるでしょうね。
すると、サクラさんはベッドから飛び起き、化粧台の鏡を見に行きます。そんなに慌てなくても良いと思いますけどね。
「…メ、メ、メ、メイちゃん!どうなってんの⁈ ありがとう!!」
ふふっ、サクラさんは凄く女の子ですね。ちょっと変わっただけなのに、そんなにも喜ぶだなんて。魔法を掛けて良かったです。
「どういたしまして」
「…今まで忙しくて、お手入れが疎かになってたのに。あーもう!メイちゃん大好き!」
サクラさんは元からお綺麗ですけど、それでも満足していなかったみたいです。あれだけ大変なお仕事をしていたのですから、多少の手抜きは必要だと思いますけどね。私だったら、毎日寝起きで仕事に行ってしまいそうです。
そして私達は、いつもより少しだけ豪華な朝食を食べ、ギルドに向かいます。理由は何であれ、ご飯が美味しくて幸せです。
♢♢♢
「サクラさん、今日は私の実家に行っても良いですか?」
「え?良いけど。近いの?」
キャルシィとギルドで別れた後、私はサクラさんに提案します。理由はただ1つ。ポチに会わせたいからです。サクラさんなら、ポチの可愛さを分かってくれるはずですからね。少なくとも、カーラみたいに酷い事はしないはずです。
「一瞬ですよ。では行きましょう」
そして私は、闇魔法を実家の近くに繋げます。
ジリッ…ジリジリジリ…
「…遂に、これに入る時が来てしまったのね」
私が闇魔法を使うとサクラさんはそう言い、尻込みしている様に感じられます。まぁ、無理も無いですね。私も最初に使った時は躊躇しましたし。…カーラはすんなりと入りましたけどね。
「大丈夫ですよ」
「…そうよね」
とは言いつつも、入るタイミングでサクラさんは私の手を握ってきました。サクラさんは、普段は気が強いですが、意外と怖がりな女の子らしい所もあるのですよね。魔物には立ち向かっていけるのに、こういうのは苦手なんて、何だか不思議です。
♢♢♢
「はい、到着ですよ」
「おぉ…。本当に着いたのね。…静かな場所ね」
何だか、遠回しに田舎と言われている気がしますが、事実なので仕方がありません。それが、この場所の良い所でもありますからね。
「キャウン!!!」
「ポチ!元気そうで何よりです!」
そして、到着するなり私に気付いてくれたポチが駆け寄ってきます。3つの首を揺らしながら近付いてくポチは、物凄く可愛いです。
「おぅ、よしよしぃ」
「…メイちゃん。その子、ケルベロスよね?大丈夫なの?」
そう言ってサクラさんは私達を見つめてきますが、顔を見て私は確信しました。心配しているのでは無く、少し羨ましそうに見ているのを。
「大丈夫ですよ。触ります?」
「…触りたいけど、ケルベロスはSSランクの魔物よね?」
確かに、世間一般のケルベロスはSSランクの魔物でしょうが、ポチは違います。そんなに怖い存在では、決してありません。事実、この村の人にポチを怖がる人は居ませんし、寧ろ崇められています。ポチ様ですからね。
「ふふっ。ポチ、こちらサクラさんです。仲良くしてくださいね」
「キャウン!!」
私がポチにそう言うと、ポチはサクラさんの近付き、頭の1つを擦り付けます。あぁ、これをされたら、どんな人でもメロメロになってしまいますね。
「可愛い!!あー可愛い!もう!頭が3つもあって、3倍可愛いわよ!」
「キャウゥン!!」
やはり、サクラさんはポチにメロメロです。3つの頭を撫でまわし、とても幸せそうです。ポチの可愛さに抗う事は不可能ですからね。…まぁ、例外な人物も居ますけどね。
「まあ、メイちゃん。もう帰って来ちゃったのね?」
「あ、お母さん。ただいま!」
すると、家の前で騒いでいた事に気付いたのか、お母さんが出てきました。元気そうで何よりです。そして、何故か疑問形なのは、私の帰郷が早すぎるからでしょうね。まだ、帰ってから3週間ほどしか経過していませんからね。馬車で片道約10日なので、普通ならおかしいですし。殆ど何もせずに戻ってきた事になりますからね。
「そちらのお嬢さんは?カーラちゃんとキャルシィちゃんは一緒じゃないの?」
「サクラさんです。新しくパーティーを組んだのですよ。カーラとキャルシィはお仕事です」
カーラとキャルシィは、お母さんに娘認定されていますからね。特にカーラは、お料理中にいっぱい話していたみたいで、かなり好かれています。戦いが絡まなければ、カーラは良い人な部分が多いですからね。
「あら残念。メイちゃんとパーティーを組んだのなら、サクラちゃんも私の娘ね。よろしくね」
「えっと…はい。よろしくお願いします」
急に娘と言われて戸惑っていますが、サクラさんはそのまま受け入れたみたいです。お母さんには誰も逆らえませんからね。
「今日は泊っていくの?」
「いえ、ポチと遊びに来ただけなので、夕方には帰ります」
晩御飯は要らないと言ってきていませんからね。それまでには必ず帰らなくてはなりません。決して、お母さんのご飯より、カーラの家のご飯を優先する訳ではありませんからね。私にとっては、どちらも同じくらい美味しく感じるものですし。




