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メイちゃんが大魔王になるまで  作者: 畑田
2章 勇者パーティー結成編

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6話 ブラック受付嬢

 

「…本当に辞めてしまわれたのですか?」


「えぇ、辞めちゃったわ」


 サクラさんから衝撃の告白を受け、私は俄かに信じる事ができず、もう一度確認してみました。しかし、答えは変わらず、本当に辞めてしまったみたいです。


 サクラさんは軽い感じで言っていますが、私には軽い問題だとは思えません。私が冒険者になるよりも前から受付嬢をされていましたし。どうしても辞めないといけない理由があったのですかね?私には見当がつきま…いや。


「カーラのせいですか?」


 サクラさんは、カーラの担当受付嬢です。私が知る範囲でも、たくさんの迷惑をかけられていましたし、苦労していたと思います。もう耐える事に疲れたのかもしれません。


「んー。どちらかと言うと、メイちゃんのせいかな」


「え…?」


 …私のせい?


 …ど、どういう事でしょうか。私、何かやってしまったのでしょうか?私、そんなに迷惑はかけて…いや、よく考えてみると、思い当たる節が沢山でてきました。


 …私は、サクラさんを頼りすぎていたのかもしれません。それに、死んだと思われて心配をかけたりもしました。七聖龍をテイムしたり、冒険者のレベルのバランスを崩したり、魔族(キャルシィ)を連れてきたり、騎士団長おじさんを外でスクワットさせたまま放置したり…。少し思い出すだけで、いろいろ出てきてしまいます。


 …カーラだけでも大変だというのに、私の事まで。私の担当受付嬢になってしまったばかりに、サクラさんが何らかの後始末をしていたとなれば、私は物凄く迷惑をかけている事になります。


「…ごめんなさい」


 気付いていなかったとはいえ、許される事ではありませんね。私のせいでサクラさんが仕事を辞めるまで追い詰められていたなんて…。


「ちょっと待って!何か勘違いしてるわよ。私がメイちゃんともっと一緒に居たかったから辞めたのよ!」


「…え?…私とですか?」


「そうよ。私ね、カーラが羨ましかったの」


 ……カーラが……羨ましい??


 …カーラに羨ましい要素なんて、ありますかね?…確かに、カーラには立派な家とお金がありますが、勇者とか貴族とか絶対に嫌ですし。サクラさんは、そういうのに憧れているのでしょうか?そういう風には見えませんけど。


「…サクラさんは、カーラみたいになりたいのですか?」


「そんな訳ないじゃない。私が言いたいのは、今のカーラが本当に幸せそうだって事よ。私はずっとカーラを見てきたけど、あんな姿は見た事なかったわ。カーラはメイちゃんと出会えて変わったのよ。毎日が充実していて楽しくて幸せ。凄く羨ましいと思ったわ。けどね、羨ましいのと同時にイラついたわ。私には散々面倒ごとをやらせたくせに、自分だけ幸せになりやがって…ってね」


「…そ、そうなのですね」


 サクラさんが言いたい事は、凄く分かります。カーラは私のスキルに出会って幸せになったというのは間違いないと思います。戦闘狂であるカーラは、自分がいくら強くなったとしても、対等な相手と戦えるという事が嬉しいのでしょうし。急に幸せそうになったら羨ましいと思うのは当然であり、多大なる迷惑をかけたカーラが自分だけ幸せになる事は、納得がいかないというのも理解できます。私も似た様な状況ではありますし。まぁ、私はサクラさんと違い、お金(幸せ)は頂いていますけど。


「では、その原因を作った私を利用して、カーラに復讐したいという事ですね」


「…物騒な事言うわね。まぁ、全くそのつもりが無いとは言えないけど。ただ、私も幸せになりたいと思ったのよ。だから、このまま受付嬢としてカーラに迷惑をかけ続けられるくらいなら、思い切って冒険者にでもなってみようかしらねって。…えっと、つまり…メイちゃんと一緒なら、私でも冒険者としてやっていける可能性があると思ったの。…メイちゃんの力に頼るのは卑怯だと思うけど、私も幸せになりたいの!」


 なんだ。そういう事なのですね。良かったです。幸せになったカーラが羨ましく、自分自身もそうなりたいと。カーラが幸せになった原因が私にあり、私のせいだという事ですね。てっきり、私が何かとんでもない事をやってしまっていたのかと思いましたよ。なら、話は簡単ですね。


「サクラさん。私がサクラさんを幸せにしますからね!」


「メイちゃん…!ありがとう。…ふふっ、でも、ちょっと愛の告白みたいね」


「んな⁈ ち、違いますからね!そういう意味ではありませんから!」


 もぉ、完全に揶揄われてしまいました。私の言葉に嘘はありませんが、そういう意味ではありません。もちろんサクラさんも分かっているので、笑っているのだと思いますけど。


「メイちゃん、私をメイちゃんのパーティーに入れてもらえる?」


「もちろんです!よろしくお願いします!」


 これは凄く嬉しい事です!理由はどうであれ、サクラさんが仲間になってくれるなんて。


「でも、良いんですか?カーラも居ますよ?」


「良いに決まってるじゃない。別に私、カーラの事嫌いじゃないわよ」


 …え?…す、凄いです。何年もカーラの担当受付嬢をしてきて、そう言えるとは。大人ですね。


 …ですが、よく考えてみると、カーラに関わってカーラの事が嫌いな人は居ませんよね。私も苦労はかけられていますが、嫌っていません。一緒に旅をしていたソフィー様はカーラの事が好きですし、サイコス様も、おそらく嫌ってはいないでしょうし。


 それは、実際カーラは優しくて、頼りになるからでしょう。戦闘狂で自分勝手な部分は多いですが、それでも許される人徳を持っているという事でしょうね。


「じゃあ、そろそろ帰りましょっか」


「そうですね」


 そして、私達は森を抜け、ギルドに戻りました。



 ♢♢♢



「えっと、素材代46万2320カーラになります」


 ギルドに戻った私達は、キャルシィの元へ行き、倒した魔物の査定をしてもらいました。担当受付嬢だったサクラさんが辞めるのであれば、迷いなく次の担当はキャルシィになりますからね。まだまだ辿々しいですが、問題なく査定を終えてくれたので、やはりキャルシィは優秀です。


 今日倒した魔物は、スライムとオークとオーガ。スライムは大したお金にはなりませんが、オークやオーガを複数討伐したので、それなりの金額になりました。とはいえ、私は一匹も倒していませんし、スライムが相手の時は何もしていません。倒したのは全てサクラさんです。


「全部サクラさんが貰って良いですからね」


「何言ってるのよ。ダメに決まっているじゃない」


「…え?ですが、私は何もしていませんよ?」


 …どうしたのでしょうか、サクラさんは。倒したのはサクラさんであり、正当な対価です。


「倒せたのはメイちゃんのおかげよ。それに、パーティーの報酬は分けるものよ。カーラみたいな事言うんじゃないわ」


「…え」


 サクラさんがそう言い、半分を私に渡してきました。


 …確かに、そうですね。私が間違っていました。カーラは譲りませんし、私はお金が好きなので受け取っていましたが、本来おかしいですもんね。そんな事を、同じように自分もやってしまうとは…。


「ごめんなさい…。ありがとうございます。これからは半分こですね!」


「お礼を言うのはこっちの方よ。1か月分の給料の約半分を、1日で貰えちゃったんだから。毎日朝早くから、夜遅くまで…。それをたった数時間で…。ありがとう、メイちゃん!」


 …す、少し受付嬢のブラックな部分が見えてしまいましたが、喜んでもらえたのなら良かったです。やはり、受付嬢とは大変なのですね。


 ……どうしましょう。私、そんな職業をキャルシィに勧めてしまいました。いや、キャルシィは私と同じ時間に来て帰るので、大丈夫ですね!


 …ですが、いずれは朝早くから夜遅くまで働くことになりますよね。……ごめんなさい、キャルシィ。本当にごめんなさい。


「あ、あと。サクラ様はCランクに昇格になります。おめでとうございます」


「私達に様付けは不要よ。もちろん、カーラにもね」


 規則を守るキャルシィ…。流石です。そして、それを初手から止めさせるサクラさん。最高です。私もキャルシィに様付けされたくないですからね。ここでもお姉ちゃんと呼んでほしいです。どうか、受付嬢を勧めた私を嫌いにならないでほしいです。


 それにしても、サクラさんはCランクに昇格ですか。初日でランクアップなんて凄いですね。パーティーでとはいえ、Bランクの魔物を複数討伐しましたからね。Aランク以上は単独討伐が条件ですが、Bランクまでは直ぐになりそうです。私も前のパーティーで、個人で魔物を倒さずにBランクになりましたからね。パーティーを組んでいれば、それが可能です。


 まぁ、サクラさんの場合は、私と違いますけどね。私からすれば、ほぼ1人で倒している様なものですし。


「じゃあ、メイちゃん。今日は本当にありがとう。明日もよろしくね」


「はい、こちらこそ。では帰りましょうか。カーラの家に!」


「…え?」


 ふふっ。サクラさんの驚き顔を頂きました。パーティーを組んだのですから、カーラの家に行くのは当然です。カーラなら、間違いなくそうするでしょうからね。



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