4話 ゴブリン抹茶ケーキ
「はぁ、はぁ。何とか逃げられたわね」
「そうですね!」
倒せない魔物から逃げる…。私は今、冒険者をしています!そう、強く実感しますね。
私達は、突然現れたコボルトから逃げ、森の奥深くまでやって来ました。少し走ったので、サクラさんは息を切らしています。…私はカーラに改造されたので、このくらいでは疲れませんけどね。悲しい事に…。
「ふぅ、結構奥まで来ちゃったわね。大丈夫かしら?まぁ、メイちゃんも居るし、何とかなるわよね」
「任せてください!先輩なので、どんどん頼ってくださいね!」
サクラさんには、いつもお世話になっているので、頼られるのは気分が良いですね。
ガサガサッ!
おっと、声を聞きつけてか、また何かが出てきそうです。次はコボルト以外でお願いしますね。
「ブルアァァ!!」
「きゃあ!オークよ!メイちゃん、デバフデバフ!早く!」
「え?…あ、はい!」
サクラさんに言われ、私はオークに最大出力でデバフを掛けました。
…危ない所でしたね。危うく、サクラさんにデバフを掛けそうになってしまいました。癖って怖いです。何だか、カーラ以外にデバフを掛けるのは久しぶりな気がします。
「…掛かってるわよね?」
「はい。倒しちゃってください!」
「えぇ、やってみるわ」
そしてサクラさんは、勢い良くオークに近づき、剣で首を切り落としました。オークはサクラさんより大きいですが、サクラさんは剣を大きく振り、一撃で倒してしまいました。正直凄いです。私よりレベルが低いにも関わらず、私よりよほど度胸がありますね。
「やりましたね、サクラさん!凄いです!」
「…凄いのはメイちゃんのスキルよ。オークはCランクの魔物なのよ。あ、レベルが上がったわ」
確かに、私のスキルの影響はあるでしょうね。ですが、倒したのはサクラさんです。もし逆の立場だったら、私は間違いなく逃げると思いますしね。因みに、私はオークも1人で倒した事がありませんし。
「そう言えば、サクラさんはレベルいくつなのですか?」
キャルシィよりも高いとは言っていましたが、正確には聞いていませんでしたね。もしかしたら、結構高いのかもしれません。冒険者登録するくらいですからね。
「今日2つ上がって39レベルよ。メイちゃんは?」
あ…。軽い気持ちで聞きましたが、聞き返してしまうのですね。…失敗しました。聞いてしまった以上、答えない訳にはいきませんよね。
「…283レベルです。秘密にしてくださいね」
はぁ。自分で言って悲しくなりますね。サクラさんは冒険者以外で考えると普通のレベルですし、その約7倍…。絶対に引かれますね。
「凄いわね!メイちゃんと居ると、怖いもの無しね。これからもよろしくね、メイちゃん先輩」
「サクラさん…!」
まるで天使の様です。笑顔が眩しいです。多少は引かれているかもしれませんが、それでも変わらずに私と接してくれるのですね。
思い返してみれば、サクラさんはほとんど態度が変わりませんね。それどころか、最初の堅苦しさは完全に無くなっていますし。私はサクラさんと冒険する為に、カーラにいじめられて強くなったのかもしれませんね。きっとそうです!
「サクラさん、今日はいっぱい冒険しましょうね!」
「そうね。でも、少しお腹空いちゃったわ。そろそろお昼にしましょうか」
「そうですね!そうしましょう」
サクラさんに言われて気付きましたが、私も少しお腹が空いてきていました。お腹の状況まで、私とサクラさんは似ているのかもしれませんね!ただお昼が近いからなだけかもしれませんが。
そして私達は向かいます。いざ魔物ケーキ屋へ!
♢♢♢
「うぅ…苦いです」
「…そうね。苦さでゴブリンを表現しているのかしら」
魔物ケーキ屋、ゴブリン抹茶ケーキ…。悲しい事に、はずれでした。ゴブリンの腰布風に抹茶チョコの飾りがあり、美味しそうに見えたのですがね。全然甘くなかったです。
「口直しに、コボルトチョコケーキいってみましょう」
「なら私は、角うさぎショートケーキにするわ」
サクラさんも、次は無難に美味しそうなケーキをチョイスしました。ゴブリンよりは可愛いので、美味しいはずです。
「これは美味しいです!普通のチョコケーキですね」
「こっちも美味しいわ。角の形をしたホワイトチョコが刺さっているのも可愛いわね」
やはり、冒険するのはほどほどが良いですね。行きすぎたら、良い結果にはなりません。私と一緒ですね。
そして私達はケーキを平らげて店を出ました。ザラメおじさんのケーキ屋さんには味で劣りますが、意外性は良かったです。たぶんもう来ませんけどね。
「はぁ、お腹いっぱい。食休みに少しぶらぶらしよっか」
「はい。そうしましょう」
あぁ、良いですね。カーラだったら、食べ終わったら直ぐに次の戦いに行く事も、よくありますからね。
「サクラさんって、アイテム袋持ってないですよね?買いに行きましょう!」
「えー。持ってないけど、流石に無理よ。1000万くらいするじゃない」
ふふっ、やはり持っていませんよね。ここは先輩として一肌脱ぐ時です!
「私が買ってあげますよ!」
お金はいっぱいありますからね。
「…え?…良いの?でも悪いわよ。メイちゃんがいっぱいお金持ってるのは知ってるけど、それはメイちゃんの為に使うべきよ」
「私のお金なのですから、私が使いたいように使います。私は、サクラさんにアイテム袋を買いたいです!」
そうです。私の自由です。そもそも、たまには使っていかないと、どんどん溜まっていきますからね。カーラのおかげで、一緒に居れば増えていきますからね。
「…メイちゃん。なら、お言葉に甘えちゃうわね」
「はい!」
そして私達はアイテム袋を購入し、それから少しぶらぶらした後に、森に戻りました。
いざ、午後の部開始です。次は何が出ますかね。冒険がこんなに楽しみなのは、随分と久しぶりな気がします。




