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メイちゃんが大魔王になるまで  作者: 畑田
2章 勇者パーティー結成編

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3話 スライム

 

 貴族社会は社交シーズンを迎え、王都に貴族が集まります。貴族令嬢であるカーラも例外ではなく、冒険者をお休みして、王都のユリアール家王都邸に向かいました。今日から約1週間、カーラの居ない日常が始まります。


 そしてこの期間、私はサクラさんと遊ぶ約束をしているので、ギルドへと向かいました。


「サクラさん、おはようございます。今日からカーラが居ませんが、仕事終わりに何処かに行ったりするのですか?」


「ふふっ、待ってたわよ。受付嬢の仕事を終わらせてくるから、少しだけ待っててね」


 そう言って、サクラさんは奥へと入っていきました。出勤して間もないはずでしょうに、もう終わらせられるという事は、事前に休暇を取れる準備をしてくださっていたのかもしれませんね。キャルシィが受付嬢として働き始めて暫くが経ち、ある程度はサクラさんの代わりを務められるはずですし。キャルシィは優秀ですからね。


 それに、サクラさんはカーラの担当受付嬢なので、カーラが居ないという事は仕事が減りますからね。こちらの要因の方が大きい気がします。


 そして待つこと十数分。意外と時間が掛かりましたが、サクラさんはにこやかな顔で出てきました。


「お待たせ。じゃあ行きましょうか!」


「おおっ!何だか意外な私服ですね」


 どうやら、時間が掛かったのは着替えていたからみたいです。サクラさんはもう少し可愛い系の私服を着ると思っていましたが、動きやすそうな服装で、腰には私がプレゼントした魔剣がさしてあります。護身用に帯剣してくれているのですかね。何だか嬉しいです。


「結構似合うでしょ?」


「はい!かっこいいです!」


 サクラさんは仕事ができる上に、優しくて美人でセンスも良いなんて凄すぎますね。冒険者ならまだしも、受付嬢のサクラさんが、帯剣しても違和感がない服装をチョイスできるなんて簡単ではないですからね。私なんて、もう諦めて、聖剣は常にアイテム袋の中ですよ。何年も冒険者をやっているというのに。


「ところで、どちらに向かうのですか?」


「メイちゃんがいつも行っているところで良いわよ」


「ザラメおじさんのケーキ屋さんですね!」


 何処で遊ぶか決めていませんでしたが、どうやら、ただ一緒にぶらぶらするだけみたいですね。サクラさんはいつも忙しいですし、朝からのんびりできるなんて稀でしょうし。カーラが居ない間だけでも楽しみたいのかもしれません。


「違うわよっ。冒険するわよ!」


「え?…冒険ですか。…あ、魔物ケーキ屋の『ゴブリン抹茶ケーキ』辺りですか?」


 意外でした。サクラさんは冒険するタイプだったみたいです。確かに、良い機会かもしれませんね。実は私も少し気になっていましたが、そういうお店にカーラと行く機会は無かったのですよね。何となく、1人で入るのは抵抗があるお店ですし。サクラさんとだったら楽しめそうな気がします。


「もぉ、違うわよ!ちょっと興味はあるけど。メイちゃん、これ見て!」


 そう言って、サクラさんが私に見せてきたカードは、私が見慣れている冒険者のライセンスカードでした。カードには『SAKURA  Rank E』と記載されており…え?


「サクラさん、冒険者だったのですか⁉︎」


「2人が魔王討伐に向かってる間に受けといたのよ」


 …おぉ。す、凄いですね。冒険者になるのも簡単ではないというのに。


 冒険者になるには、筆記と実技で合格する必要があります。筆記はともかく、実技は対人戦です。受付嬢の仕事も忙しいというのに、冒険者登録試験を受けて合格しただなんて凄すぎますよ。私は試験官さんにデバフを掛けただけで、何故か戦わずに合格にしていただけましたが、普通はそうではないですからね。


 …サクラさん、スペック高すぎませんか?


 …まぁ、とはいえ、Eランクという事は初心者さんという事になります。つまり…。


「私が先輩ですね!」


「えぇ、よろしくね。メイちゃん先輩」


 ふふっ。良いですね、先輩という響きは。冒険者の先輩として、しっかりと教えてあげないといけませんね!楽しみです!



 ♢♢♢



 私達はギルドを出て、いつもの森に向かいました。カーラと来る時は素通りしますが、森の入り口に近い場所は比較的危険の少ない場所です。


「サクラさんは剣で戦う予定ですか?」


「そうよ。魔法スキルも持ってるけど、私のレベルじゃ戦闘には使えないのよ」


「え、魔法ですか⁉︎どんなのですか?見たいです!」


 まさかの展開です。サクラさんが魔法まで使えるだなんて。ちょっと、できる事が多すぎると思いますよ。


「良いけど、あんまり期待しないでほしいわ。…ん、んー…えいっ!」


 ぽわんっ。


「おぉ!水魔法ですね!凄いです!」


 サクラさんの左の手のひらの上には、直径5㎝ほどの水球が浮いています。


 …ですが、何だか安定していませんね。私が知っている水魔法とは全然違い、ぽわぽわと浮いていて少し可愛いです。


「えいっ!」


 びしゃっ。


 そして、サクラさんが水球を近くの木に放つと、木は大きく抉れ…る事はなく、ただただ水の塊が木にぶつかっただけという感じです。目くらまし程度には使えそうですが、その辺に落ちている石でも投げた方が、よほど効果がありそうな気がします。


 …どうやら、全く使いこなせていないみたいですね。私のお母さんも水魔法が使えますが、もっと殺傷能力がありましたし。


「でも、スキルを持っているだけで凄いですよ!」


「…それ、メイちゃんが言う?」


 …う。確かに、サクラさんの言う通りですね。


 スキル持ちは1000人に1人くらいしか居ないので、珍しい事に変わりはありません。ですが、私は何故か沢山持っていますからね。勇者であるカーラでも1つしか持っていないので、明らかに私は異常です。カーラとパーティーを組むまでは、デバフの3つだけだったのですけどね。はぁ。


 …いやいや、今はサクラさんとの冒険の最中なのです。暗い事を考えるなんて勿体ないですよ。満喫しなければ!


「じゃあ、早速行きましょう!何を倒しに行きましょうか?」


「もちろんスライムよ!」


 あぁ、良いですね。スライム。最高です。カーラだったら、直ぐにドラゴン(トカゲ)とか言い出しますもんね。



 ♢♢♢



「あ!見つけたわ!危なそうだったら助けてね」


「はい!」


 ザシュッツ!!


 ぷしゅー、ころん


 何でしょう、この平和な感じ。心が落ち着きます。スライムを探して倒し、核だけが残る。ドラゴンみたいに、巨大な死体が残ったりしません。…平和です。


「ふぅ、意外と簡単なのね。もうちょっと強い敵でも大丈夫そうな気がするわ」


「そうですね。サクラさんは剣を振るのが正確です。私より上手だと思います」


 サクラさんは、空振りとかもせずに、一撃でスライムを倒し続けています。それだけで凄いです。元から器用なのでしょうね。


「そんな事ないわよ。この魔剣が使いやすいだけよ」


「それでも凄いですよ。私なんて、最初は手からすっぽ抜けて、飛んで行っちゃったりしたのですよ」


 そして、そのままドラゴンの首元に刺さって『ズシィィィィン!!!!』でしたし。それに比べれば、サクラさんは天才と言っても過言ではないでしょう。聖剣だとか、魔剣だとか、それ以前の問題でしたし。


 まぁ、それは置いといて。


「どうします?次はコボルトや角うさぎ辺りが一般的だと思いますけど」


 私は倒した事ありませんけどね。


「うーん、可愛い系は無理ね。ゴブリンとかにするわ」


 …もしかしたら、サクラさんは私と似ているのかもしれませんね。私も怖い系の魔物は…凄く頑張れば倒せますが、可愛い系は倒せませんし。過去に狼の魔物は倒せましたが、犬の魔物を倒すなんて無理です。


 あ、という事は、サクラさんなら絶対にポチも可愛いと言うはずですね。近々会わせてみましょう。ポチは一応魔物ですが、とても可愛くて安全な魔物ですからね。


 ガサガサッツ!


「何か居るわね」


「…はい」


 そして、何か魔物が居ないか探していると、茂みが揺れる音が聞こえてきました。…これは、強敵の予感です。


「ワンッ!!」


 噂をしたら、コボルトです。ど、どうしましょう。


「メイちゃん、逃げるわよ!」


「はい、逃げましょう!」


 あぁ、なんて楽しいのでしょう。危険な冒険とはいえ、気の合う人とだと、こんなにも違うのですね。強い敵だけが強敵とは限りません。倒せなければ、それは強敵です。大事なのは相性ですね!



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