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1話 強制依頼

新章開幕です。

 

『七聖龍』


 それは世界に7匹のみ存在する聖なる龍。


 だが、近年ある者の手によって、数を減らした。七聖龍とは名ばかり。現在は氷龍、地龍、黒龍、海龍の4匹のみとなっていた。



 ♦︎♦︎♦︎



 月日は流れ、王城での会議から20日ほどが経過しました。魔王に選ばれたとはいえ、私自身の生活は大きく変わることなく、冒険者としてカーラに振り回される毎日です。その間もレベルは上がり続けましたが、私はランキングに記載されないので、もう気にする必要はありません。というより、気にしたくありません。


 私以外で一番変わった事と言われれば、キャルシィがギルドの受付嬢になった事ですかね。サクラさんの指導の下、毎日頑張っています。キャルシィならば、立派な受付嬢になる事は間違いありません。


「メイ、早くー!」


「はいはい、分かっていますよ」


 そして私は、今日もカーラに急かされて、ギルドに向かいます。



 ♢♢♢



「カーラ、ちょっと来なさい!」


 そして、私達がギルドに到着するなり、サクラさんがカーラを呼びました。また何かやらかしたのでしょうかね。名指しで呼ばれた以上、私達はそのままサクラさんの元に向かいます。


 キャルシィはこれから仕事なので、ここで一先ずお別れです。私が『今日も頑張ってください』と言うと、にこやかに『はい』と返事をしてギルドの奥に向かいます。本当に、いつ見ても可愛いですね。


 さてさて、私も頑張りましょう。今日はどんなトラブルでしょうかね。


「カーラに指名依頼よ」


「…えぇ、やだなぁ」


 指名依頼ですか。どうやら、トラブルでは無いみたいですね。カーラは勇者として有名ですから、お金をかけてでもカーラにやってもらいたいという、物好きも居るみたいです。…カーラは凄く嫌そうにしていますけど。


 ですが、サクラさんは気にする事なく続けます。


「依頼内容は『サザナミ領の北の森で山火事が発生した為、消火してほしい』との事よ」


「え?…それ、ボクじゃなくてよくない?」


 私もカーラの言う通り、火事であれば、水魔法を使える様な人が適任だと思いますけどね。カーラは脳筋なので、そういうのは向いていない気がしますし。


 ですが、サクラさんは再び無視して続けます。


「達成報酬は1カーラ。2日以内に解決しろとの事よ」


「「…え?」」


 …少々意味が分からなくなってきましたね。本来、指名依頼は高額になるはずです。確実に達成してもらう為に、有能な人を指名して、相場より高く設定するからです。ですが、1カーラというのは、完全におかしいです。こんな依頼、受ける訳が無いと思いますけど、受けさせる気はあるのでしょうか?


「…カーラ、どうして山火事が発生したと思う?」


「…え?…誰かが火を付けたとか?」


 ですが、何だか雲行きが怪しくなってきました。…まさか、カーラがやらかしたのでしょうか。それなら、1カーラも納得です。


「山火事の原因は落雷よ。過去に無いくらいの落雷が起きたそうよ」


「へぇ、そうなんだ」


「普通はね、そんな雷が発生したら、落ちる前に雷龍が食べるらしいのよ」


 ……つまり、雷龍を殺したカーラのせいですね。


 そしてサクラさんは、ため息交じりに話を続けます。朝からこんな依頼の話をしなくてはならない事に、少し同情しますね。


「森が燃えたとしても、炎龍が抑えてくれたり、緑龍が森を守ってくれたしするらしいわよ」


「…へぇ」


 はい。もう逃げ道が残っていません。話の流れ的に、カーラが過去に討伐した七聖龍でしょうね。カーラも自分のせいだと気付いたのか、少しだけ覇気がなくなっています。


「まぁ、あくまで可能性の話よ。受けるって事で良いわよね」


「…うん」


 そして、私達の今日の依頼が決まりました。流石にカーラでも、この状況で断ることは出来ないようです。あくまで可能性と言われても、カーラが1㎜も悪くない可能性は無いでしょうからね。



 ♢♢♢



 私達は依頼を受注した後、サザナミ領に向かっています。今回は、大した距離でも無いので、走って向かう事になりました。


 闇魔法で行ければもっと楽なのですが、私はサザナミ領に行った事が無いので、止めておきます。行けない事は無いのですが、何処に出るか分からないと不安ですからね。最悪の場合、人様の家や危険な場所に出る可能性もありますからね。


「カーラ、どうやって消火するのですか?」


「水魔法で消してもらおうと思ってるよ。あてがあるからね」


 走りながらカーラに聞いてみると、意外にも、カーラには考えがあったみたいです。水魔法を使える知り合いが居るみたいですね。


 そして走る事、約3時間。私達は、サザナミ領内の浜辺に到着しました。広大な海が広がり、とても美しい風景です。ですが、近くに民家らしき物は無く、人が住んで居る様には見えません。


「こんな場所に住んで居られるのですか?」


「うん。あそこに島があるでしょ。そこに住んで居るんだよ」


 そしてカーラが指差す方向を見てみると、海に浮かぶ様に島がありました。島には大きな山があり、洞窟の様に大きな穴が開いています。カーラの知り合いというだけあって…というのは失礼かもしれませんが、随分と変わった所に住んで居るのですね。これは変人の可能性が高い気がします。


「メイ、あの島に行ける?」


「行けますよ。繋げますね」


 本来は船で行くような場所ですが、見えてさえいれば、私の闇魔法で一瞬です。私は出口を島の上に出し、島に向かいました。


「…遠目で見たより大きな山ですね」


 浜辺からは距離があったので分かりづらかったですが、近くに来ると、首が痛くなるほど見上げないと頂上が見えません。つまり、浜辺から見た洞窟の様な穴も、私が思っていたよりも巨大です。


 …物凄く嫌な予感がしてきました。


 ですが、カーラは一切の迷いなく、穴に入っていきます。


「メイ、居たよ!」


 そしてカーラは、あたかも知り合いかの様に言いました。私は一瞬めまいがし、絶望しました。


「………。もう、いい加減にしてくださいよ…」


 …少しでもカーラを信じた私が馬鹿でした。もしかしたら、私には学習能力が無いのかもしれません。確かに、水魔法は使えそうです。それも、かなり強力な…。


 私は、少し前にも同じような体験をしました。あの時は、氷龍さんでしたね。


 普通のドラゴンよりも、水中を移動する事に長けた細長い体。それでも飛ぶ事が出来る、立派な翼。


 そして、カーラが水魔法だけを目当てで来た訳が無く、笑顔で私に言ってきます。


「さあ、メイ!よろしく!」


「…はぁ」


 帰りたいです。



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