41話 強制イベント
「え?ちょっ、サクラさん⁈」
何という事でしょうか。ギルドに到着するなり、サクラさんが私達に抱きついてきましたよ。新しく獲得したスキル『闇魔法』を使って帰ってきたので、驚かれる事は想定していましたが、これは予想外の展開です。
ふふっ。私たちが居なくて、そんなに寂しかったのですかね?まさか抱きつかれるとは思いませんでしたよ。凄く嬉しいですね。
…と思いたいのですが、単に喜んでくれているだけではない気がします。
「んな…なっ……!!」
「あれ?ソフィーが居る。神官様も。どうかしたの?」
そうなのです。何故か、神官様にソフィー様。それに、ギルマスまでもが居るのです。明らかに、普通の状態ではありません。
「…あ、あんたねぇ。私達がどれだけ心配したと思っているのよ。バカカーラ!」
「ぇええ⁈ …えっと。ごめんね、ソフィー?」
…これは絶対に何かありましたね。あのソフィー様が涙を流し、カーラに向かって『心配した』と言っているのです。普通ではありません。
「あらあら!メイちゃん、生きていたのね!」
「…え?」
…一体何を言っておられるのでしょうか、神官様は。まるで、私が死んでいたのかもしれないという発言をなさいます。確かに、今までカーラに殺されそうになった事は何度かありますが、死にはしませんよ?
……ますます理由が分かりません。まさか、私達が魔王討伐に向かっている間に誤情報でも摑まされたのでしょうか?私が死んだという誤った情報を。
「…えっと。神官様、何かあったのですか?」
「あらあら。私達にも分からないわぁ。何があったのかしらねぇ」
……え?
……何かがあったから、ここに集まり、ソフィー様がカーラに会えて泣いているのですよね?疑問が深まるばかりです。
「取り敢えず、これからみんなで王城に行くわよぉ。メイちゃんとカーラちゃんも一緒に。あ、サクラちゃんも一緒に来るかしら?気になるわよねぇ?」
「はい、行きます!」
「「……え?」」
……どうしましょう。どういう事ですか?
…え?私、これから王城に行くのですか?王城というのは、王城の事ですよね?帰ってきて早々に王城だなんて、心の準備が間に合いませんよ。私が王城に行くのですか?
「ねぇ、カーラ。確認だけど、あんたたち魔王は倒してきたのよね?」
いやいやいや、ソフィー様。そんな事は今どうでも良いですよ。
…いや、そうでもないですけど!これはこれで、慎重に答えなくてはならない質問ではありませんか!この答え次第で、今後の状況が大きく変わってしまう可能性がありますし。
「ソ、ソフィー様。魔王はわ…」
「負けちゃったよ!手も足も出なかったよ!」
「…は?」
…最悪です。私が発言するよりも早く、カーラが余計な情報を与えてしまいました。
「カーラ、少し黙っていてください」
「え?」
…はぁ。カーラが余計な情報を与えてしまった以上、上手く隠せる気がしませんよ。できるだけは隠しますけど。
「…えっとですね。魔王は和平を望んでいます。倒す必要はなくなりました」
「はぁ?何言ってんのよ!勝てなかったから適当な事言ってんじゃないわよね?」
「あらあら、メイちゃん。魔王がそんな事を本当に言うのかしら?」
うぅぅ……ダメでした。やはり、これだけでは納得してもらえませんよね。まぁ、予想はできた事ですけど。
…はぁ。仕方ありませんね。予定とは違いますが、切り札を投入するしかないみたいです。
「キャルシィ、出てきてください」
「…はい、お姉ちゃん」
物凄く可愛いけど、どこからどう見ても魔族。そんなキャルシィが登場すれば、分かってくれるはずです。
…………。
……どうしたのでしょうか?返事は聞こえたというのに、全く出てきてくれません。
「キャルシィ?」
「は、はい!!」
あ、やっと出てくれましたよ。もしかしたら、こちらに来るのが怖かったのかもしれませんね。私達の会話が聞こえ、人族がたくさん居るのが分かったでしょうし。ですが、心配は要りませんよ。キャルシィの可愛さを見れば、誰だって…。
「はぁ⁈ ちょっと、何あんた魔族連れてきてんのよ!馬鹿なの?」
…あれ?反応がおかしいです。私の予想では、キャルシィのあまりの可愛さに『魔族との争いを止めよう!』となると思ったのですけど。
…ソフィー様の感性がおかしいのですかね?
「…可愛いですよね?」
「「…………」」
…どうしたら良いのでしょうか。
「あらあら…。どうしましょうか」
本当に、どうしたら良いのでしょうね。神官様まで困った顔をされていますよ。
………はぁ。
…もう、仕方ありませんね。なる様になれです。私には正解が分かりません。
「わ、私が魔王に選ばれました!キャルシィは私の配下で妹です!」
「…はぁ⁈」
「…あらあら」
「んふぅう!!」
驚き、困惑する神官様とソフィー様。何故か誇らしげなカーラ。
…カーラは自分が『勇者』である自覚は無いのですかね?…まぁ、私に聖剣をあげるくらいですから、無いのでしょうね。
♢♢♢
「……という感じです」
「…あらあら」
…これは、どうしたものですかね。
私が昨日起きたことを話し終えると、神官様が反応してくださったのみで、他の皆は声も出さずに固まってしまっています。私が知られたくない個人的な情報は伝えていませんが、伝えた最小限の情報でさえ、驚きが隠せないみたいです。まぁ、それでも、カーラが全てを肯定するので一応は信じてもらえたと思います。
あと、私がお土産としてサクラさんに渡した『魔剣』ディスティリオンの効果が大きかったかもしれませんね。実際に魔王城に行かないと、手に入れる事はできないでしょうし。
「はぁ、私達で判断できる内容じゃないわね」
「そうねぇ。ガーランドちゃん達も待っているでしょうし、行きましょうか」
うぅ……。やはり、王城に行くのは変わらないのですね。ガーランドちゃんという方が何方なのかは分かりませんが、行きたくないです。
……ん?
…ガーランドちゃん?
……何処かで見た事のある名前な気がしますね。……誰でしたっけ?
まぁ、今更私が何を言っても変わらないみたいなので、付いて行くしかありませんね。難しいかもしれませんが、私がいじめられない事を祈ります。
♢♢♢
そして、話は一応終わり、私達は王城に歩いて向かっています。神官様とソフィー様、ギルマスにサクラさん、そこに私達3人。今更ながら、凄い組み合わせですね。この集団を見た人は、朝から何事かと心配してしまいますよ。キャルシィの耳と尻尾は隠しているので魔族だと騒がれる事は無いでしょうが、それを除いても凄い集団な気がします。
王城までは歩いて20分ほど。ただただ歩いているだけでは、緊張が増すばかりです。こんな時は、誰かと話をして落ち着くしかありませんね。
んー。カーラはソフィー様が嬉しそうに独り占めしていますし、邪魔はできませんね。となると、いろいろと聞かれてしまいそうで怖いですが、サクラさんとお話ししましょう。…うーん。ボロが出ずに楽しめる会話……あ!
「サクラさん、キャルシィは可愛いですよね?」
よく考えてみれば、未だに誰もキャルシィの事を可愛いと言っていないのですよね。私には納得できません。
「…か、可愛いわよ。…でも、魔族よ。強いのよね?」
ふぅ、良かったです。可愛いとは思っていてくれているようです。私の感性がおかしいのかと疑ってしまいましたよ。…ですが、どうなのでしょう。
「…キャルシィ、強いのですか?レベルはどれくらいですか?」
「…えっと。…今、34レベルです」
おぉ、カーラの10分の1くらいのレベルですね。ですが、どうしてでしょう。キャルシィは申し訳なさそうにしている気がします。子供にしては強い方だと思いますけど。そもそも、私にとってはレベルなんてどうでも良い事ですし。
「え⁈ 私より低いじゃない! …頭撫でていいかしら?」
「にゃ⁈」
ふふっ、やはりサクラさんも私と同じ気持ちみたいです。サクラさんは、ただ警戒していただけなのですね。やはり、キャルシィの可愛さは最強のようです。これならきっと、直ぐに他の皆とも仲良くなれるに違いありません。間違いなく人気者になってしまいますよ。




