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メイちゃんが大魔王になるまで  作者: 畑田
1章 勇者討伐編

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39話 カーラに鉄槌を

 

「待て待てメイ!お父さんが?カーラちゃんと?勇者様だよ?」


 カーラにお父さんと戦ってみないかと言うと、お父さんは信じられない事を言われたと言わんばかりの顔で私を止めてきました。


「大丈夫ですよ、お父さん。勇者の称号を持っているからといって、強いとは限りません。お父さんの方が強いですよ」


 まぁ、それはあり得ませんけど。カーラはランキング1位ですし。


「…いや。…だが」


「ふふっ、良いじゃない。『メイが冒険者になるなら俺も鍛える』って鍛えていたじゃないの」


 え…お父さんがそんな事を?


 …何だか、少し嬉しいですね。なら、尚更戦ってもらいましょう。どれだけ強くなったのか見たいですし。それに、お母さんも完全に乗り気です。まぁ、きっとお母さんのことですから、勝算はあると薄々思っているのでしょうね。お母さんは私のデバフスキルの事を知っていますし、私がカーラを倒した事も知られてしまったので。


 とはいえ、そんな事を知らないお父さんからしたら、カーラと戦う事は遠慮したいですよね。まぁ、お父さんにやる気を出させるのは簡単なので、問題ないですけど。


「お父さん、実は、カーラはポチをいじめたのです。だから、適度に懲らしめてもらえませんか?」


「なんだと!それは許せんな!本当なのか、カーラちゃん」


「ぇえ⁈ …うん。ただの魔物だと思って倒したよ。でも、謝ったから!」


 カーラは正直です。私と違って、咄嗟に嘘をつけません。その代わり嘘をつかない分、余計なことを言ったりします。そのうえ、必要なことを意図して言わなかったり、話を盛って伝えたり、変な事を言ったりします。つまり、カーラは嘘をつかない嘘つきです。なので、普通の問いかけに対しては、事実が回答されるのです。


「謝ったとはいえ、家族を傷つけられたなら、何もしない訳にはいかないな。…分かった。勝てるとは思えないが、やれるだけやってやる」


「大丈夫ですよ。私が補助しますから。一緒にカーラを倒しましょう!…ではカーラ、先に外で待っていてください。木刀を準備しておいてくださいね」


「うん、分かった!」


 カーラはいじめっ子扱いされて少し気を落としていましたが、戦えると分かった時点で完全に復活していますね。


 バフはデバフと違い、掛けると少しだけ体が光ります。それを見られると、私が何かしているとカーラにバレてしまう可能性があります。その為、私はカーラが家から出たのを確認してから、お父さんにバフを掛けました。もちろん、全力です。


『攻撃力上昇』『防御力上昇』『速度上昇』


「おお、何だこれは!」


「バフです。今のお父さんならドラゴンにも負けません。そして、カーラにはデバフを掛けています。なので、今のカーラはドラゴンくらいの強さです。だから余裕で勝てます!」


 カーラへのデバフは村に入る前に掛けたままです。レベル差は、おそらく300くらいあると思いますが、そのくらいは覆せるはずです。


「…お、おう。凄いんだな、メイは」


「さあ行きましょう!」


 何だか、お父さんが少し引いている気がしますが、気にしない事にしておきます。私だって、もう分かっていますよ。私の力が少しだけおかしい事ぐらいは。もう気にしたって仕方がありません。



 ♢♢♢



「カーラ、本気を出して良いですからね。お父さんはカーラより強いですから」


「え!うん!」


 カーラは本当に単純で戦闘狂ですね。とても嬉しそうです。


「じゃあ、いくよ!」


「お、おう。来い、カーラちゃん!」


 そして、お父さんが木刀を構えると、カーラは待ちに待ったと言わんばかりに駆け出しました。


 ガンンッ!!


「くっ…。…お?あれ? …大した事ないな?」


「んふぅ!!まだまだぁ!」


 お!凄いです!カーラの一撃を簡単に受け止めてしまいましたよ。


 ですが、お父さんは自分で受け止めたにも関わらず、その手ごたえのなさに驚いているようですね。最強の勇者に振り下ろされた木刀を簡単に受け止める事ができたのですし、驚くのも仕方のない事でしょうけど。


 それにしても、カーラは嬉しそうですね。気持ち悪い笑みがこぼれていますよ。攻撃が受け止められた事が、凄く嬉しいのでしょうね。貴族令嬢とは到底思えない顔です。 


 カンッカンッ


 その後も、カーラの攻撃は全て受け止められ、戦いが続きます。カーラは簡単に自分の攻撃が対処されるのが楽しい様で、何度も何度も攻撃を仕掛けます。


 でも、おかしいですね。お父さんは攻撃を受け止めるだけで、反撃しません。かなり余裕がある様に見えるのですが。


「お父さん!お父さんもカーラに攻撃してください!」


「だ、だ、だ、だがメイ、どうすれば良いんだ!カーラちゃんの攻撃が途切れないぞ!」


 あ、そういう事ですか。私と会話ができるくらいの余裕があるにも関わらず反撃できないのは、お父さんに剣術の心得が無いからみたいです。どのタイミングで攻撃すれば良いのか分からないのでしょうね。


 ですが、今の2人の差は、剣の実力なんて関係ない様に見えます。


「お父さん、攻撃を受けた瞬間に、そのまま力いっぱい、はね返してみてください」


「お、おう…」


 すると、お父さんは受けた攻撃をはね返し、カーラが少しよろけます。


「今です!カーラに思いっきりやってください!」


「お、おう!」


 ボキッツ


「ぐふぇえ!!」


 ふふっ、最高です。カーラは持ち前の反射神経で、木刀を構えましたが、お父さんはそのまま振り下ろしました。そして、木刀は耐えられずに折れ、カーラの頭に直撃です。やはり、きちんと状況を理解すれば簡単な事でしたね。


「そこまでです!お父さんの勝ちです!」


「おおぅ!…勝ちなのか? …うおぉう⁈」


 お父さんは、勝ちに疑問も持ちつつも木刀を降ろし、その後に変な奇声を上げました。そうです、あれが来てしまったのだと思います。


「メ、メ、メ、メイ⁈ レベルアップが止まらねぇ!」


 ふふっ。懐かしいです。私の時と一緒です。初めてそれを体験すると、変な声が出ますからね。


「メイー。痛いよぉ…」


「あぁ、忘れていました。すぐ治しますね」


 私は、頭を押さえながら弱弱しい声を出してくるカーラに、急いで回復魔法を掛けました。どうやら少々ハンデが大きすぎたのかもしれません。まさか、カーラに一撃で、こんなにもダメージを与えるとは思いませんでした。私の予想以上に、お父さんは鍛えていたみたいです。


「ねぇ、メイ。メイのお父さんは農家なんだよね?強すぎない?まるでメイと戦っているみたいだったよ」


 近からず、遠からずですね。ほぼ私の力ですが、教える必要はありません。被害者が増えてしまうかもしれませんからね。きっとカーラなら、自分を弱くして戦うより、相手を強くして戦う方が楽しいと言うと思いますし。その方が爽快でしょうからね。


 ですが、カーラの力に合わせる事には問題があります。カーラは楽しめても、カーラの力が強大で周りがもたないのです。事実、カーラは魔王城で簡単に扉を破壊しましたし、私の攻撃を受けて壁にぶつかると、壁が壊れたりしました。もし、近くに一般人が居たならば、被害を受ける可能性があります。それは回避しなくてはなりません。だから、カーラにバレるまでは教えない事にしておきます。


「先ほど言っていたではありませんか。お父さんは鍛えていたと」


「そっか!メイのお父さんだもんね!強くて当然だね!」


 …その納得の仕方はどうかと思いますが、カーラが単純で良かったです。


「さっ、今日はもう疲れたので、そろそろお風呂に入って寝ましょうね」


「うん!」


 そして私達は、家に入りました。口では簡単に言いましたが、本当に疲れましたね。


 今日は馬車で移動してきて、歩いてサイコス様の家に向かっていたら、魔王城に飛ばされ魔王になりました。そしてキャルシィと出会い、カーラと戦いました。その後は実家に帰り、皆の家を周って回復魔法を掛けていき、そして今、カーラを懲らしめました。本当に濃い一日でしたね。


 …あ。サイコス様の家に行っていませんでした。…まぁ、もう良いですかね。行く理由がありませんし、面倒ですし。きっとカーラは忘れているでしょうから、私も忘れましょう。



 ♢♢♢



「またいつでも帰ってきなさいね。カーラちゃんもキャルシィちゃんも」


「はい。お母さん、お父さん、ポチ、いつまでも元気でいてくださいね。お父さん、もう怪我しないでくださいよ」


「おう!大丈夫だ。本当に強くなってしまったからな!」


 私達は実家で一泊し、朝から出発です。本当はもっとのんびりしていたいですが、そうもいきませんからね。和平を結ぶと言った以上、早急に対応してもらわないといけませんから。


「では、「「いってきます!」」」


「「いってらっしゃい」」


「キャウン!」


 そして、私達は別れの挨拶をして歩き出し、村から出ていきました。たった半日でしたが、とても楽しい時間を過ごせましたね。今度は2年後とかではなく、もっと早く帰りましょう。


「じゃあメイ、馬車で7日・徒歩で12日・走って20時間、どれが良い?」


 おっと、またですか。カーラはこの質問が好きなのですかね?


 キャルシィが居るので、走って20時間は物理的に無理です。カーラがおぶれば行けるかもしれませんが、させません。徒歩は嫌です、疲れます。馬車はもう嫌です、凄く疲れます。


 だから、私は新しい選択肢を追加します。私だからできる、新しい選択肢。それは…。


「魔法で帰ります!」




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