表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メイちゃんが大魔王になるまで  作者: 畑田
1章 勇者討伐編
39/155

39話 カーラに鉄槌を

 

「待て待てメイ!お父さんが?カーラちゃんと?勇者様だよ?」


「あら、良いじゃない。『メイが冒険者になるなら俺も鍛える』って鍛えていたじゃないの」


 へぇ、お父さんがそんな事を。…何だか、少し嬉しいですね。なら、尚更戦ってもらいましょう。


「お父さん、実は、カーラはポチをいじめたのです。だから、適度に懲らしめてほしいのです」


「なんだと!それは許せんな!本当なのか、カーラちゃん」


「ぇえ⁈ …うん。ただの魔物だと思って倒したよ。でも、謝ったから!」


 カーラは正直です。私と違って、嘘をつけません。その代わり嘘をつかない分、余計なことを言ったりします。そのうえ、必要なことを意図して言わなかったり、話を盛って伝えたり、変な事を言ったりします。つまり、カーラは嘘をつかない嘘つきです。なので、普通の問いかけに対しては、事実が回答されるのです。


「謝ったとはいえ、家族を傷つけられたなら、何もしない訳にはいかないな。…とは言っても。メイ、俺がカーラちゃんを懲らしめるほどの実力があると思っているのか?」


「その点は大丈夫です。私が補助します。ではカーラ、先に外で待っていてください」


「うん、分かった」


 そして私は、カーラが家から出たのを確認してから、お父さんにバフを掛けました。バフはデバフと違い、掛けると少しだけ体が光ります。それを見られると、私が何かしているとカーラにバレてしまいますからね。


「おお、何だこれは!」


「バフです。今のお父さんなら、ドラゴンにも負けません。そして、カーラにはデバフを掛けています。なので、今のカーラはドラゴンくらいの強さです。だから勝てます」


 カーラへのデバフは村に入る前に掛けていますからね。レベル差は、おそらく300くらいありますけど、今の私の力があれば、そのくらいは覆せますから。


「…お、おう。凄いんだな、メイは」


「さあ行きましょう!」


 何だか、お父さんが少し引いている気がしますが、気にしない事にしておきます。私だって、もう分かっていますよ。私の力がおかしいことぐらいは。気にしたって仕方がありません。


 そして、私たちも外に出ました。カーラに木刀を出してもらい、戦いの始まりです。


「カーラ、本気を出して良いですからね。お父さんはカーラより強いですから」


「え!うん!」


 カーラはいじめっ子扱いされて、少し気を落としていましたが、私の一声で復活しました。本当に単純で戦闘狂です。


 そして、カーラはお父さんに向かって駆け出しました。


「くっ…」


 カンッ


「お?あれ? …大した事ないな?」


 お父さんは、カーラの一撃にビビりつつも受け止めると、その手ごたえのなさに驚いているようです。最強の勇者に振り下ろされた木刀を、簡単に受け止めることが出来たわけですからね。驚くのも仕方のない事でしょう。


「んふぅ。まだまだぁ!」


 あぁ、カーラが嬉しそうです。気持ち悪い笑みがこぼれています。攻撃が受け止められた事が、凄く嬉しいのでしょうね。貴族令嬢の顔とは、到底思えませんね。 


 カンッカンッ


 その後も、カーラの攻撃は全て受け止められ、戦いが続きます。ですが、お父さんは攻撃を受け止めるだけで、反撃しません。余裕はあるはずなのですがね。


「お父さん!お父さんもカーラに攻撃してください!」


「だ、だ、だ、だがメイ、どうすれば良いんだ!カーラちゃんの攻撃が途切れないぞ!」


 そうなのです。お父さんは、私と会話出来るくらいの余裕があるにも関わらず、反撃できません。何故かというと、お父さんは剣術の心得が無いからです。どのタイミングで攻撃すれば良いのか分からないのだと思います。


「お父さん、攻撃を受けた瞬間に、そのまま力いっぱい、はね返してみてください」


「お、おう…」


 すると、お父さんは受けた攻撃をはね返し、カーラが少しよろけます。


「今です!カーラに思いっきりやってください!」


「お、おう!」


 ボキッツ


「ぐふぇえ!!」


 ふふっ、最高です。カーラは持ち前の反射神経で、木刀を構えましたが、お父さんはそのまま振り下ろしました。そして、木刀は耐えられずに折れ、カーラの頭に直撃です。


「そこまでです!お父さんの勝ちです!」


「おおぅ!…勝ちなのか? …うおぉう⁈」


 お父さんは、勝ちに疑問も持ちつつも木刀を降ろし、その後に変な奇声を上げました。そうです、あれが来てしまったのだと思います。


「メ、メ、メ、メイ⁈ レベルアップが止まらねぇ!」


 ふふっ。懐かしいです。私の時と一緒です。初めてそれを体験すると、変な声が出ますからね。


「メイー。痛いよぉ…」


「あぁ、忘れていました。すぐ治しますね」


 私は、頭を押さえながら弱弱しい声を出してくるカーラに、急いで回復魔法を掛けました。少々ハンデが大きすぎたのかもしれませんね。まさか、カーラに一撃で、こんなにもダメージを与えるとは思いませんでした。


「ねぇ、メイ。メイのお父さんは農家なんだよね?強すぎない?まるでメイと戦っているみたいだったよ」


 近からず、遠からずですね。ほぼ私の力ですが、まだ教えません。被害者が増えてしまうかもしれませんからね。きっとカーラなら、自分を弱くして戦うより、相手を強くして戦う方が楽しいと言うでしょう。その方が爽快でしょうからね。


 ですが、それには問題があります。カーラは楽しめても、カーラの力が強大で周りがもたないのです。事実、カーラは魔王城で簡単に扉を破壊しましたし、私の攻撃を受けて壁にぶつかると、壁が壊れたりしました。もし、近くに一般人が居たならば、被害を受ける可能性があります。それは回避しなくてはなりません。だから、カーラにバレるまでは教えない事にしておきます。


「先ほど言っていたではありませんか。お父さんは鍛えていたと」


「そっか!メイのお父さんだもんね!強くても不思議じゃないね!」


 …その納得の仕方はどうかと思いますが、カーラが単純で良かったです。


「さっ、今日はもう疲れたので、そろそろお風呂に入って寝ましょうね」


「うん!」


 そして私達は、家に入りました。口では簡単に言いましたが、本当に疲れましたね。


 今日は馬車で移動してきて、歩いてサイコス様の家に向かっていたら、魔王城に飛ばされ魔王になりました。そしてキャルシィと出会い、カーラと戦いました。その後は実家に帰り、皆の家を周って回復魔法を掛けていき、そして今、カーラを懲らしめました。本当に濃い一日でしたね。


 …あ。サイコス様の家に行っていませんでした。…まぁ、もう良いですかね。行く理由がありませんし、面倒ですし。きっとカーラは忘れているでしょうから、私も忘れましょう。



 ♢♢♢



「またいつでも帰ってきなさいね。カーラちゃんもキャルシィちゃんも」


「はい。お母さん、お父さん、ポチ、いつまでも元気でいてくださいね。お父さん、もう怪我しないでくださいね」


「おう!大丈夫だ。本当に強くなってしまったからな!」


 私達は実家で一泊し、朝から出発です。本当はもっとのんびりしていたいですが、そうもいきませんからね。和平を結ぶと言った以上、早急に対応してもらわないといけませんから。


「では、「「いってきます!」」」


「「いってらっしゃい」」


「キャウン!」


 そして、私達は別れの挨拶をして歩き出し、村から出ていきました。たった半日でしたが、とても楽しい時間を過ごせましたね。今度は2年後とかではなく、もっと早く帰りましょう。


 そして、村から出ると、恒例のあの質問が、カーラから飛んできます。


「じゃあメイ、馬車で10日・徒歩で12日・走って20時間、どれが良い?」


 キャルシィが居るので、走って20時間は物理的に無理です。カーラがおぶれば行けるかもしれませんが、させません。徒歩は嫌です、疲れます。馬車はもう嫌です、凄く疲れます。


 だから、私は新しい選択肢を追加します。私だから出来る、新しい選択肢。それは…。


「魔法で帰ります!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ