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戦闘の跡

なんとかんとか更新です。(´;ω;`)

展開の粗さ目を瞑って下さいまだ体調が元に戻らないのごめんなさい。(´;ω;`)

 夜になってから、僕は寮を出て、ベニスとの戦いがあった現場へと向かうことにした。

 何か忘れものがあるとか、気になる事があるとか、そういうわけではない。

 ただ単に、なんとなく、見に行ってみようと思っただけだ。


『……わたしもついてくよ?』

「人混み大丈夫なの?」

『また何かあったりすると、困るから。……言ったと思うけど、転生はそう何度も出来ることじゃない。もしも死んだら、ジャンバの人生は本当にそこで終わる』

「……いつ死んでも後悔はないように生きては来たよ」

『それはわたしがイ・ヤ・な・の』


 と、いうことらしく、赤ずきんちゃんもついてくることに。

 無理に反対をするつもりは無いので、僕も、特別に拒否したりと言ったことはない。

 適当に準備をして、赤ずきんちゃんと一緒に、弐番寮を出る。

 すると――門のところに、見慣れた人物がいた。


「……あれは」

『うん? 知り合い?』

「友達だよ」

『ふぅん。友達ね」


 何か言ってくるかと思ったけれど、赤ずきんちゃんは、あまり興味を示さなかった。

 友達、という言い方をした事に加えて、特別に僕が焦ったりすることも無かったからだろう。

 浮気云々ではないと雰囲気で理解したのだ。


 赤ずきんちゃんの機嫌は損ねずに済みそうなので、僕はミアに近づいて、普通に声を掛けた。


「……ミア、どうしたの? もう夜だから早く自分の寮に戻った方が良いよ」

「あ……あ……」


 ミアは、僕を見るや否や、目尻に涙を溜め始めた。


「……本当に大丈夫なのかなって、あの後から、ずっと気になっていて」


 言われて、僕は自分の頬を引っ掻く。そういえば、『僕は大丈夫だから』的なことを言ったのだ。腹に太い棒切れが突き刺さっている状態で。

 普通に考えたら、いくら大丈夫と言われても、その言葉をそっくり飲み込むのは難しい光景だったろう。

 だから、逃げた跡も、心配をしてくれていたようだ。

 僕は、傷が治った所を見せた方が早いと思い、服を脱いで自らの腹部を晒す。


「き、急に裸になって何を……」

「そうじゃなくて、ほら、傷が無いでしょ?」


 棒切れが刺さっていた所には、傷跡一つもなく、すべすべの肌だ。まるで最初から、そこに怪我など無かったかのような感じである。


「あ、本当だ……」


 呟くように言ってから、ミアはえっぐえっぐと泣きだした。

 僕には良く分からないけれど、ミアなりに、何か思う所があるのかも知れない。

 取り合えず、僕は、ミアが泣き止むまで背中をさすってあげた。


 と、その時。

 後ろから赤ずきんちゃんの視線を感じた。


『……浮気』


 ついさっきまで、ミアには興味を示さなかったのに、今の一連の流れで少し事情が変わったらしい。

 ちらり、と後ろを見ると、爬虫類のように瞳孔を細めて、些か怖い顔をしている赤ずきんちゃんがいた。


 ……う、浮気じゃないよ。



※※※※



 さてはて。

 それから、ミアを寮まで送って行った後、街並みを観察しながら進むと気づけば現場に到着していた。

 激闘の跡はいまだ酷く、あちこちの建物が崩れている。

 ベニスを焼き払った僕の魔術によって出来たクレーターも、そのままだ。

 瓦礫撤去等で、夜通し働いている人の姿も、ちらほらと見える。


『……ところで、なんでここに来たの? 忘れ物をした、とかっていうわけでもないでしょ?』


 僕が戦闘の痕跡を眺めていると、赤ずきんちゃんが怪訝そうに問うてくる。僕は首を横に振る。


「別に理由は無いよ。ただ、なんとなく、来て見ただけだよ」

『ふぅん……』


 ふと、セミナー会場の建物があった場所が目に映った。他の箇所と同じく、そこにも、もはや何も無い。完全に焼き尽くされている。

 何もかも跡形もない。

 ベニスの死体も当然に無い。



※※※※



 現場を納得するまで見た後、僕と赤ずきんちゃんが寮に帰ると、何やら少し騒がしい様相になっていた。


「誰か、ベニスを見なかったか⁉ ここ数日帰って来ていないんだ‼」


 ベニスの兄が、ベニスを探して寮を駆けずり回って聞き込みを行っているらしく、そのせいで、寮生が集まっているようだ。


「……なぁ、何か知らないか⁉」


 やがて、ベニスの兄は僕の所にも来た。

 しばし考える。

 伝えた方が良いのかどうか、ということを。


 最終的に僕は伝えないことにした。

 弟が変なセミナーに参加した挙句に、街に損害を与えた化け物になったなんて、聞きたくもないだろう。

 だから、「知りません」と、そう言った。

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