表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/33

ミアを守るのは二度目

「――っ⁉」

「~~~~~っ⁉」


 ベニスの体の内側から、声にならない声が聞こえる。吸収された人々は、まだ、生きているようだ。


 僕が額に冷や汗を掻いていると、ベニスの肉塊に浮き出る目玉の全てが、ギョロりと動いた。僕を見て来たのだ。そして、ベニスは動くことを一瞬だけ止めた。


「……お、おばべ(お前)、ダ、ダンバ(ジャンバ)


 先ほどの騒動で、蝶仮面も取れてしまったから、すぐに僕だと分かったようだ。


「ベニス……」

「お、おでば(俺は)おばべが(お前が)ぎにびらなくて(気に入らなくて)……」


 ベニスは、こんな怪しげセミナーに参加し、果ては化け物へとなり果てた原因が僕だと告げた。


「……僕が気に入らなかったから?」

おばべが(お前が)みどめだででる(認められてる)どぅがつく(ムカつく)‼」


 そんなくだらないことで……。


ごんだじゅがた(こんな姿)ぬなっどぅの(になったのは)などもがの(なにもかも)おばべのせべだ(お前のせいだ)‼ どぅっどじょうだ(きっとそうだ)‼」


 ベニスはそう言うと、触手を操り、僕へと攻撃を繰り出して来る。肉弾戦はあまり得意ではないけれど、どうにかこうにか躱して――そして、ふと、触手の生え際に術式を見た。

 目視で解析。

 すると、それが、先ほど”神”が行使した繋ぐ魔術であることが分かった。

 

 ……そうだった。ベニスの体は生来のものではなく、魔術によって作られたものなのだ。


 これは裏を返せば、術式をどうにか出来れば、元の姿に戻すことが出来るかも知れない、ということでもある。可能性がある。


 解除が出来れば、取りこまれた人々もなんとかなるかも知れない。出来ることであれば、助けられる命は助けてあげたい。そうは思うのだ。

 だから僕は、ベニスにかけられた魔術式を、一つ一つ破壊していく事に決めた。

 けれども――


「――くそっ」


 向こうが攻撃をしてくるものだから、集中が出来なかった。

 ベニスにかけられた魔術は凄く拙いものだ。

 だから破壊も容易ではある。

 しかし、だと言うのにすぐには行えないのは、戦いながらということに僕が慣れていないからだ。


 対抗戦の時とは違う。あの時は、僕は既に使える魔術をいじくっていただけに過ぎない。


じね(死ね)!」


 ベニスは僕に攻撃を加えつつも、周囲に残っている人間を、どんどん吸収していく。そして更に肥大化し、一撃はより重くなっていく。

 建物の壁や天井を破壊し、とうとう、外にその姿を露出させるまでに至った。


「う、うわあああ‼」

「なにあれ⁉」


 街の人々が、ベニスの姿を目にし、そして慄く。んな化け物が出てきたら、驚いて当たり前である。


「……早くなんとかしないと、周りの人たちに死傷者が出るかも」


 焦る。

 そして、その時だった。僕の眼にミアが映った。

 そういえば近くの書店で働いているのだった。

 今が仕事終わりで、帰ろうとしていた所だったようだ。

 運が悪すぎる……。


「――ダンバ(ジャンバ)ァァァアアアア‼」


 ベニスが、周囲の瓦礫や棒を拾い上げ、ところ構わずに投げ始めた。死傷者を出すわけには行かない。僕はすぐさまに小太陽を創り、全てを迎撃する。

 しかし――そのうちの一つを、取りこぼしてしまった。そして、それはあろうことかミアに襲い掛かった。


「い、いやぁあああああ‼」


 ミアの叫び声が聞こえる。僕は小太陽での迎撃を行おうとして――一瞬踏みとどまった。ベニスの放り投げた棒切れが、ミアとの距離を縮め過ぎていたからだ。


 小太陽で迎撃をしたら、ミアにまで被害が及ぶ可能性がある。幸いだったのは、迎撃をしているうちに僕とミアの間の距離も近づいていたことだ。


 僕は動いた。

 気づいたら体が勝手に動いていた。


 だから……、



「え……?」



 腹部が妙に生暖かい。ぽたぽたと水滴が地面に落ちる音がする。

 分かっている。

 自分の体の状況なんて分かっている。

 太い棒きれが、僕の体を貫いているのだ。

 そして、攻撃に驚いて転んでいたミアが、そんな僕を見上げていた。


「……ミア、大丈夫?」

「そ、その怪我……」

「僕は大丈夫だよ。それより、早く逃げて」

「えっ……でも……」

「ほら早く」


 僕はミアの腕を掴み、持ち上げて立たせると、背中を叩いた。それから肩を竦めて、最大限のやせ我慢で笑いつつ語り掛ける。


「……僕はこう見えて、色々な魔術が使えるんだ。対抗戦の時の魔術、凄かったでしょ? だから、治療とかも出来るんだ」


 ウソではない。

 状況さえ落ち着けば、安心して集中出来る状態になれば、治療用の魔術を”創る”ことも可能だ。

 ただ、その状態を作るには、まずベニスをどうにかしないといけない。

 この怪我を負った状態だと、ミアを守りながらベニスを相手するのは少々キツいので、早く逃げて欲しいのだ。


「お願いだから」


 僕が再び笑いかけると、ミアも信じてくれたのか、短く頷いて駆けた。今にも泣きそうな顔はしていたものの、この場に自分がいれば邪魔になると、それは雰囲気で察してくれたようだ。

 僕はミアの後ろ姿を見届けて――


「ごふっ……」


 ――棒切れを体から引き抜くと、傷口と口から大量の血が飛び出した。ぼたぼたと止めどなく溢れてくる。

 痛みを感じないのは、傷が深すぎるせいだ。


 このままだと、さすがに、僕も危ない。早くベニスを……。


 僕は朦朧となりながらも、改めてベニスを見た。更に大きくなったベニスが、暴れまわっている。


 もう、術式の解除等と言っている場合ではない。ここまでの事態になってしまったのであれば、やるしかない。


 僕は覚悟を決めた。取り込まれた人々諸共ベニスを殺す覚悟を決めた。

今回の展開に関してですが、以前に主人公最強モノを書いた事があり、その時に苦戦をほぼ無しにしてみたのですが、その作品が全く伸びなかったことがありました。なので、本作では少しばかり切羽詰まった展開を試して見た次第です。

感想欄の制限、無しにしております。小説家になろうのIDを持っていない人でも感想を書けるようにしております。次作を書く場合に参考したいと思いますので、今回の展開がどうであったか、どしどし感想を頂けると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ