色々な方法で魔法陣を描いてみよう
忘れないうちにと、紙に描き起こしたのは先程見た二つの魔方陣。
どちらも光を灯す魔法陣だし、間違えそうな程度に似てることくらいは魔法陣に詳しくない私にも分かる。
模様の丸暗記だから描かれている文様の意味は分からないけど、異なっている部分が光の大きさに関わる部分なんだろうな。
この差異をとっかかりにして独学するのもいいけど、その前にちょっと試したいことがあるのだ。
魔法陣を描くのには魔力を通しやすい特別なインクを使う。
もちろん私は持ってない。
そこで考えたんだけど、要は魔力が通ればいいわけで、それなら別にインクじゃなくてもいいんじゃないかと。むしろ魔力自体で魔法陣を描けば特別性のインクもいらないしエコなのではないか。
そう思ったから早速実行してみた。
さっき紙に描いたばかりの線を指でなぞる。
淡く光る指先から生み出された光の線が紙上に魔法陣を描いてゆく様は中々にファンタジックで心が踊る。複雑で面倒な模様でもスイスイと筆ならぬ指が進んだ。
そうして魔法陣が完成すると同時に光球が現れた。
魔法陣の中心から数センチだけ浮かんで光る球。手を伸ばしても触れることは出来なかった。ホログラムっぽい。
物珍しさから色々試そうとしたら直ぐに消えちゃったけど、これは分かる。魔法陣を流れていた魔力が切れたんだろう。
その証拠に魔力で描いた魔法陣はきれいさっぱり消えていた。
次は空中に描いてみた。
やっぱり描ける。すごい、魔法使いっぽい。
ぽくて楽しいんだけど、魔法陣が地味に細かいから描くのに時間かかる。そして二作目にして既にめんどい。
メモ書き入れたら四作目だし当然かもしれないけど、どうにかなんないかなこれ。
二つ目の光はメリーの体内で発動させてみた。
輝くうさぎのぬいぐるみ。
今この瞬間、生命が宿った……みたいになることを期待したのに、魔法陣の主張が激しくてぬいぐるみに魂を封じてるみたいになった。本人が輝けて嬉しそうだったからいいけど。
はい次ー。
魔法陣の形を頭の中で強くイメージ。
魔力を集めた右手を掲げ、頭の中で描いた魔法陣を押し出すように。腕を通って魔力を纏え。光り、輝け。
「よいしょー」
うん、我ながらこの掛け声はどうかと思う。いい台詞が浮かばなかったんだよう!
いでよ、魔法陣! とか、光よ……! とかでもよかった気もするけど、色々悩んでたら「よいしょー」がしっくりきたんだ。私だってもっと乙女らしいのが良かった。誰も聞いてないのが救いだよ。
ともかく、魔法陣も光の玉も正常に発現できた。
魔法陣を転写する実験、成功!
よっこらしょ、とか。
どっこいしょ、とか。ソフィアは言う。お姉様は言わない。
お兄様もお母様も言わないしお父様ですら言わない。でもソフィアは言う。乙女(笑)。