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朝思暮想

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*


 宇宙(そら)を走る汽車にはレールがない。

 行き先を失った人を探しながら、星の闇をさまようように漂ってゆく。

 終着駅を同じくする旅人を求めて――だからレールはいらない。


 夜のホームに立つ女性の前を、汽車は影のように通り過ぎる。

 音も光も残さず、ただ“誰か”の気配だけが、冷たい風となって頬を撫でてゆく。


 彼女はひとり。


 凍えた手のひらには、もう戻らない温もりの記憶だけが残っている。

 呼びかける声は届かず、呼ぶ声に耳を澄ませても、返ってくるのは沈黙だけ。


 汽車は止まらない。


 彼女を知る者が降り立つこともない――それでも彼女は待つ。

 二度と戻らぬ影の足音を、奇跡のようにもう一度だけ聞けると信じて。

 横顔に宿る祈りは、触れれば崩れてしまいそうなほど脆く、それでも消えずに揺れ続けている。


 その祈りが誰へ向けられたものなのか、旅猫にはわからない。

 ただ、胸の奥がひどく痛んだ。


 女性は今日も、想いを乗せた汽車が訪れるのを待ち続ける。

 待つことだけが彼女の最後の灯火であるかのように。


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*


挿絵(By みてみん)

 気にかけてくださり、本当にありがとうございます

※挿絵は Gemini Nano Banana Pro による生成画像です※

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