格闘試験
# 日記:地球歴 残存記録 第193日
# 場所:南部方面軍本部 試験場【教習場】格闘技場
「結局、あの2人は最終試験に進みそうですね。」
「嬉しそうだな。」
笑いながらこちらを向いたザビーダ大尉がそう告げる。
「先程、近くを通ったら直立不動で敬礼してくれたんです。彼らは私に対して、全く拒否反応を示さなかった。あの2人とは一緒に飛んで見たい。そう思えただけです。」
「君がそう思える存在が確認できただけでもこの試験をやった甲斐があるというものだ。」
「ザビーダさん。」
「ん?なんだ、どうした?」
「あの教官に私も手合わせしたいとお伝えいただけますか?」
「やってみたいのか?」
「一応、毎日格闘シュミレーションドロイドと試合をしています。1回、今の実力を確認しておきたいんです。」
「その心意気は良いことだ。ジレル一等軍曹!」
「何ですか?ザビーダ大尉。」
「もう1戦彼に付き合ってくれ。手加減する必要はない。叩きのめすつもりでやれ。」
「よろしいんですか?彼はこの部隊の空軍の主力では?」
「だからだ。1度くらい挫折を味あわなければ、成長できないからな。」
「わかりました。」
「両者用意はいいな?…始め!」
…どういうことだ。エドワード二等軍曹は、元戦争奴隷。戦場に連れてこられるまでは民間人だったと聞いている。にもかかわらず…
なんなんだこの動きは…?
「くっ…」
俺は本気で打ち込んでいるのに…それを掻い潜って逆に俺を仕留めに来ている。
ほら…今の右ストレート。明らかに俺のあごを狙っている。意識奪うつもりだろう…ぎりぎり避けてはいるが…
全く手加減していないのに、彼に勝てる未来が見えない。彼はパイロットではないのか…陸軍の優秀な新兵だってここまででではなかった。
「ここっ!」
彼の鋭い上段蹴りを咄嗟に左手で止めようとする…良いのか?本当にこの判断で良いのか?いや…それならよっぽど…
俺はすぐにかがみ、彼の残された左足を払い、倒れたところに被さり、首元に手刀を止める。
「ここまで…ですな?」
「参りました。あリがとうございます!」
彼はそう元気よく言って大尉のもとに駆け寄っていった。大尉は驚きつつも彼を褒めてるようだな。
…か…勝ったぁ…。
俺がへたり込んでいると大尉が近寄ってきた。だが、立ち上がる気力もない。
「急な申し出だったのに、あリがとう。ジレル一等軍曹。」
「いえ…。それよりも、ザビーダ大尉。彼を是非大事にしてください。彼の先ほどの動きはパイロットのそれとは思えない。陸軍の幹部候補生たちだってこんな動きはできません。言葉が過ぎるかもしれませんが、空軍には勿体ないと感じたほどです。」
「…そうか、分かった。大事にすると約束するよ。」
「では…私はこれで。」
俺はなんとか立ち上がることができた。
エドワード二等軍曹か…。




