格闘試験
「結局、あの2人は最終試験に進みそうですね。」
「嬉しそうだな。」
「先程、近くを通ったら直立不動で敬礼してくれたんです。私に対して、拒否反応を示さなかった。あの2人とは一緒に飛んで見たい。そう思っただけです。」
「君がそう思える存在が確認できただけでもこの試験をやった甲斐があるというものだ。」
「ザビーダさん。」
「ん?なんだ、どうした?」
「あの教官に私も手合わせしたいとお伝えいただけますか?」
「やってみたいのか?」
「一応、毎日格闘シュミレーションドロイドとやり合っています。1回、今の実力を確認しておきたいんです。」
「その心意気は良いことだ。ジレル一等軍曹!」
「何ですか?ザビーダ少尉。」
「もう1戦彼に付き合ってくれ。手加減する必要はない。叩きのめすつもりでやれ。」
「よろしいんですか?彼はこの部隊の空軍の主力では?」
「だからだ。1度くらい挫折を味あわなければ、成長できないからな。」
「わかりました。」
「両者用意はいいな?…始め!」
…どういうことだ。エドワード二等軍曹は、元戦争奴隷。戦場に連れてこられるまでは民間人だったと聞いている。にもかかわらず…
なんなんだこの動きは…?
俺は本気で打ち込んでいるのに…それを掻い潜って仕留めに来ている。
ほら…今の右ストレート。明らかに俺のあごを狙っている。意識奪うつもりだろう…
ザビーダ少尉…無理です。彼には勝てない。
彼はパイロットではないのか…陸軍の優秀な新兵だってここまででではなかった。
「ここっ!」
彼の鋭い上段蹴りを咄嗟に左手で止めようとする…良いのか?本当にこの判断で良いのか?いや…それならよっぽど…
俺はすぐにかがみ、彼の残された左足を払い、倒れたところに被さり、首元に手刀を止める。
「ここまで…ですな?」
「参りました。あリがとうございます!」
…か…勝ったぁ…。
「急な申し出だったのに、あリがとう。ジレル一等軍曹。」
「いえ…。それよりも、ザビーダ少尉。彼を大事にしてください。彼の動きは陸軍の腕利きの動きです。空軍には勿体ないと感じたほどだ。」
「…分かった。」
「では…私はこれで。」
エドワード二等軍曹か…。




