イルメシアス男爵家
本部は聞いていた以上にとてつもなくデカかった。半日掛けて案内してもらったけどそれでも一部分らしい。
正直どこに何があるなんて全くわからなかった。
「心配しなくても、これにマップとそれぞれの場所への最短距離が表示されるから態々覚えなくてもいいぞ?」
そう言って、ルーク先任曹長は、俺にスマホのような機器を渡してきた。何でもこれは一種の記録媒体で、いつもはそれぞれの機体に接続しているのだとか。
俺の機体にはそういう機能がないから、持ち歩くことになる。
別にいいけどね。
それよりも俺は今、心臓が飛び出そうな気分になっている。俺は今から彼と彼の実家であるイルメシアス男爵家の南部方面軍本部内屋敷にて一族の皆様に挨拶することとなっている。
…男爵なんだよね?ほんとに?どう見ても、城なんですけども?
俺が完全に固まっていると、またも俺の気持ちを汲み取ってくれた。
「俺は興味ないんだけど、うちの親父が城好きなんだよ。それに南部方面軍の航空軍率いているだけあって、金はあんだわ。それで他に特に使うとこもないからどんどんでかくなってね。」
「皇族から怒られないんですか?それに…パーティーとかは…」
「帝国ではあまりないかな。それに、うちは軍属家系だから、パーティーは女性も軍服なのさ。さて…入るぞ?」
「はいっ!」
彼がバカでかい門にある獅子のドアノッカーを叩くとドアは内側に開き…
「おかえりなさいませ。ルーク様。」
「久しぶりだね…セバス。姉上と父上、母上はダイニングかな?」
「いえ、そちらのお客様をお迎えするために応接室にいらっしゃいます。」
「そうか。分かった。」
やばい…お腹痛い。こんなにでかい家。しかも、日本にはいなくなった貴族。節操ないことしたらどうしよう。
「エドワード…まったく…(笑)そんなに心配しなくてもいい。言ったろ?君はうちの家族にとっては恩人だと。恩人の上、平民の君にそこまでのことは求めない。ほら、行くぞ?」
「…はい。」
「はじめまして。私がこのイルメシアス男爵家の先代当主であり、南部方面軍の航空部隊の司令官を務めているゲラール=イルメシアス少将である。」
「私は、ルークとザビーダの姉で第一航空団団長を務めているルーナ少佐よ。家名は呼ばなくていいわ。」
「…ケルベロス中隊所属エドワード伍長です。よ…よろしくお願い致します!」
俺は背筋を伸ばして、敬礼した。
ルーク先任曹長はああ言ったけど、それはあくまでも俺を気遣っての…
「ああ…良いのよ良いのよ。そんなに堅苦しいことしなくて。ルーク!ちゃんと伝えたの!?」
「言ったよ。エドワード君は生真面目なんだよ。伍長。さっきも言ったけど、うちの人達はこんな感じだから。ザビーダ兄上と一緒にいたならなんとなくわかるでしょ?」
「そういえば、あの子はどこなの!?家族がせっかく集まるっていうのに!」
「ファントム大隊の実力を再測定するってシュミレーションルームで監督するって言ってたな。そういえば。」
「なんです?それは…。せっかくあの子の無事な姿を確認できると思いましたのに。」
「母上!」
「あらあらまあまあ…。あなたがザビーダからの報告にあったエドワード君ね?」
「はっ…はい!」
「私はねこの子たちの母親。セルジューク伯爵家からこの人のところに嫁いできた、シルクといいます。よろしくお願いしますね?」
「こちらこそ、よろしくお願い致します!」
「ふふ(笑)あら…なら、あなた。」
「どうした?」
「せっかくエドワード君が来たのです。この南部方面軍のパイロットで誰が一番強いか確認してみたらどうです?」
「父上と姉上には悪いけど、最強はエドワード伍長だね。間違いない。俺が手も足も出なかったんだから。」
「ほう…それは、是非確認させてもらいたいところだ。」
「奇遇だな。私もだよ。」
「なら、私もやってみたいですわね。」
こういうのをヘビに睨まれたカエルって例えるのかな?
…怖い




