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悪役令嬢に転生したおっさんは悪役令嬢になりきれない  作者: うさぎ蕎麦
2-1章「領主になったけれど」
55/55

55話

「なんでそうなんだよ!!!!」


 食料庫内の常温管理部分を見て俺は思わず叫ぶ。

 何故かと言われたらそこにはびっしりとカボチャが詰まっていたからだ。

 大小様々なカボチャで、皮もありふれた緑色に加えて青、赤、黄色、オレンジ、紫と色とりどりのカボチャが無造作に置かれていた。

 で、その中心には伝説の剣と言わんばかりに大根が突き刺さっている。


『あはは。クリスティーネちゃんが、田中さんが飽きない様にカラフルなカボチャを用意してあげましたよー』


 脳内にクリスティーネの声が響いて来た。

 

 あの野郎、余計な事をしやがって!

 

『本当は皮が緑色だけのカボチャだけでも良かったんですけどー、でもそれだとつまらないじゃないですか? だから善良な女神であるクリスティーネちゃんが沢山の色のカボチャを用意してあげたんですよ☆』


 この女神、腰に手を当て胸をそらしえっへんとでも言いたそうだ。


『俺、カボチャ嫌いなんだけど?』

『え? そうなんですかー? それは知ってましたよー☆ なんたって私は女神サマですからー。田中さんの好き嫌い位知っていますよ』


 だろうな。

 まぁ、嫌いと言っても栄養補給の為に無理矢理食えない訳でも無い、我慢するしかないか。


『ですけどー。田中さんがカボチャ嫌いなの知っていますからー田中さんの為にダイコンも入れたんですよー。きゃー私って優し過ぎますよね☆』


 自分に酔いしれているクリスティーネだ。

 こいつ、すんげーナルシストなのだろうか? ここまで来ると女神とやらの思考回路が気になって来るが。

 

『ああそう、それはお優しい事で』

『フフン。そーでしょそうでしょー。あ、田中さん、冷蔵庫の中身を確認して無いですよねー?』


 得意気になっているクリスティーネ。

 冷蔵庫か。カラフルなカボチャを見せ付けられて失念していたな。けど、どうせ冷蔵庫の中身もロクな物が入っていないだろうが。


『そんな事無いですよー』


 と否定するクリスティーネだが、同じ状況下で俺にとってプラスになった展開を特に思い出せない。

 まぁ、どうせ人参ゴボウ辺りが入っているのだろう、今更何を驚く事があるか。

 俺は溜息を1つついて、仕方なく冷蔵庫の扉を開ける。

 

 ドサドサドサドサーーーーー!!!!!

 

 俺が冷蔵庫のふたを開けた途端、何かが俺目掛けて大量になだれ込んで来た。

 それを一旦両手で塞ごうとするが、それは無理。

 よく分からない大量の謎の物が地面へ落下する。

 このまま塞ぎ続けてもラチが空かないと判断した俺は諦めて身を翻し、冷蔵庫の正面から離れる。

 

 ドサドサドサーと音を立て残りの何かが地面に落下し状況は一旦落ちつく。

 この落下の仕方と何か軽い物が落ちた音を考えると少なくとも食べる物ではない。

 じゃあなんだ? と地面に落ちたそれを1つ手に取りそれを凝視する。

 

「お前は冷蔵庫に何入れてんや!!!!!」


 それを手に取った俺は思わず叫び声を上げる。

 なぜならば、手に取ったそれは。


『あははははーフライドポテトって美味しいじゃないですかー☆ 私って優し過ぎますよねー。だから、カボチャしか食べられない田中さんを哀れに思いましてー、せめて気分だけでも美味しいフライドポテトを食べられる様にと思った訳ですよー』


 紙製であり赤と黄色の配色で作られており、真ん中にはでかでかと『M』の文字が刻まれている。

 つまり、マク〇ナルドで使われているフライドポテトを入れる為の容器だ。


「だからってなんで冷蔵庫に入れてんだよ!!!! 其処等辺、カボッチャムのリビングエリアにいれていればええやんけ!!!」


 またしても俺の叫び声が食料庫内に響き渡る。

 その内、俺を心配したステラ嬢かサナリスが様子を見に来そうだが。


『サプライズですよ―☆ ほら、平坦な人生じゃつまらないですから、優しくて可憐な女神クリスティーネちゃんが田中さんの人生に彩を付ける為にサプライズをした訳ですよー』


 コイツの声からは、もっと私を賛美しろとオーラが伝わって来る。

 コイツが女神じゃないなら右ストレートの1発でも飛び出しそうだ。

 大丈夫、ルチーナは女の子、男が女に手を上げる訳じゃないから罪は無い。


「ってお前ふざけんな、何て物を入れてやがんだよ!!!!!!」


 地面に散乱したMと書かれた紙の容器。

 その中に1冊の薄い本の様なモノ、というか世間で言われる薄い本を手に取った俺が再度叫び声を上げる。

 

『田中さんも欲求不満を抱えていると思いましてー私からのささやかなプレゼントですよー』


 悪びれる様子も無く話し続けるクリスティーネ。 

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