54話
「申し訳ありません。わたくし達は領主業務を遂行する手前、どうしても皆腹の黒い事をやらなければなりません。ですので貴殿のお望みを叶えられる純白な人材をわたくし共はお持ちになっておりません」
この神父の要望を見抜いた上でやんわりと断る訳だが、
「ははは、何をおっしゃいます、其方にいらっしゃる方は何とも綺麗な心をしているじゃありませんか。わたくしとしては其方の方が我が教会のシスターとなって頂ければ貴女の要求に従いますよ」
やはり、粘って来た。
しかも、粘度が少々高い。
この時代、特に栄養状態が悪いならば巨乳は超希少種なのだから是が非でも手籠められる人間として入手したいのだろう。
……まぁ、コイツの視線が物語っているからな。
下半身の力には逆らえないのかと思うが、それが大体の男だから致し方あるまいと思うしか無いだろう。
「不思議ですわね。貴方がおっしゃいます其方の方はまだ一言もお話をしておりませんわ。にも拘らず何故綺麗な心をしていると分かるのでしょうか?」
まぁ、ぶっちゃけ顔つきとか目付きで初対面でもそれなりに分かるけどなー。
現代と違ってこの世界じゃその辺りの心理学だって研究されていないし纏められていない。
論理的にそれを説明するのは不可能だわな。
「それは長年の勘ですよ」
神父が一瞬言葉を詰まらせた。
まぁ、何を考えているかは大方俺が想像する通りだろう。
「そうですか。わたくしは領主を勤める身であります。長年の勘等理屈の通らないお言葉で貴方の言葉を信じる訳には参りません」
大体この手の輩は、実力行使すると言いたいけどそこまで暴力的な風貌をしていないな。
神父を務めている以上仮に裏の顔があったとしても、行き成り領主である俺に対して本性を現す事は無いだろう。
そんな人間としての分かり易いクズならばとっくの昔に村人達から追放されている訳だから。
「まぁまぁ、そんな事は仰らずに、貴殿はまだお若い事でしょう? 年功者の感覚に従うのも一興でしょう」
これまた交渉とは無縁な感情的な話でやんの。
ひっとしてこいつ、下半身には逆らえねぇのか?
既にステラたんとあれこれする事を想像して臨戦態勢に入ってねぇか?
「御忠告の1つとして受け取らせて頂きます」
俺は神父に深く一礼し、踵を返す。
「しかし、それでは貴殿が救いたいと仰ったシスターを救えませんがそれで宜しいのですか?」
クズが良く言う人間の良心に付け込んだ脅迫か。
で、救いたいって単語を無自覚に発した、と。
俺は会いたいと要求し、その理由に対して困っているならば手を差し伸べたいと言っただけだ。
救いたいとは一言も言っていない。
が、その言葉を無意識だろうな、発してしまったとなればそのシスターが何か窮地に陥っている事を知っている事の証明になる。
ま、俺が予想する限りそのシスターはほぼほぼこの神父から手籠めにされているのだろう。
仮説にすぎないが、その仮説すらこの二人に話すべきでは無いな。
ステラ嬢は当然助けようとする、何なら俺に隠れて単身で。
サナリスはアホだから内密にしろと言っても何処かでステラ嬢にポロリとバラスだろうね、本人に悪気が無かったとしてもだ。
「その件については持ち帰って考えさせて頂きますわ」
読み違いの可能性も十分あるが、読み筋の本線としてこの神父が裏でシスター達を手籠めにしていると見て良いだろう。
俺はステラ嬢を目で制止、教会の出入口へ向け歩みを進める。
ステラ嬢は、俺の圧に負けたのか一度作戦を立てる事に賛同したのか分からないが割と素直に俺の後を着いて来た。
勿論サナリスもだが。
「しかし、それでは」
私の背後から神父の声が聞こえる。
言葉を詰まらせた彼であるが、恐らく表面上は善人で居なければならないとこれ以上の言葉を飲んだのだろう。
表面上善人で居る事は徹底している、そこだけは買ってやろうじゃないかと思うがそれは別の話か。
教会の外を出ると辺りは薄暗くなっていた。
現代日本と違い街灯と言った灯りは皆無に等しい。
これ以上この村を調査するのは危険と判断し、この村の森林エリアで可能な限り目立たない様にカボッチャムを展開。
一旦、魔法のタクトをカボチャに振る事で作り出される人型機動兵器カボッチャムの中で休息及び今後について2人と対話する事にした。
ざっくりと言えばこのカボッチャム、大きさ含めて見た目は大体ガ〇ダムみたいな感じだ。
で、多分4人位までなら内部で居住出来るスペースもあったりする。
この辺り、恐らく俺が都合の良い様に作られていると思うがその辺りは面倒な事は簡略させてくれるファルタジナリングの力も加わっているのだろう。
その他細かい事を考えたら俺の髪の毛が抜けるから止めておく事にする。
「ルチーナ様ぁ、お腹が空きましたぁ」
カボッチャムの居住スペースに入り一息ついた所でサナリスが声を上げた。
確かに俺達は本来ならばお昼に食べるハズのお弁当を例の家族に差し出している。
つまり、朝ごはんを食べてから今の今まで何も食べて煮ない訳で、サナリスが言う通り俺もお腹が減って来ている。
「そうね、サナリス。一度食事にしましょう。このカボッチャムには食料の備蓄がありますわ」
最も、その食料が何かまでは覚えていないが俺にとって都合良く作られているカボッチャムなら、日本で言うカップラーメン等それなりに良い食料が入っているハズだ。
俺はカボッチャムにある食料庫に向かい、何か食べられそうなものを探した訳だが。




