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悪役令嬢に転生したおっさんは悪役令嬢になりきれない  作者: うさぎ蕎麦
2-1章「領主になったけれど」
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46話

「ルチーナ様、申し訳ありません」

「いえ、知らないのは当たり前ですから謝る必要はないわ」


 ステラたんがきょとんとした表情を見せる。

 うん? なんで? あーそうか、そう言えばルチーナとステラたんの歳は同じだったか。

 14歳の応対として違和感を覚えられたかな?


「ルチーナ様はお優しいのですね」


 俺の予想に反してニコッと笑顔を見せるステラたん。

 か、可愛い。

 いやいや、正気を取り戻せ。



「そんな事ないですわよ」


 俺は喜びで溢れそうな感情を必死に抑え平然とした返事をする。

 ステラたんが俺に笑顔を見せる余裕があるなら杞憂だったか?


「そうですか?」

「そうよ」


 ステラたんが謙遜しすぎるのは良くないと言わんばかりに俺の目をジッっと見つめる。

 ステラたんの眼力に負けた俺は一度ステラたんと視線を外し咳払いを一つ。


「は、話を戻すわ。それ等人間の負の感情は悪い方向へとぶつけられるのよ。略奪で済めば良い方で、人によっては殺める可能性だってある。食に対する負の感情は思いのほか強いの」


 食料は人が生きる上で必要なものだ。

 それがそこを尽き、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされた際どうせ死ぬならばと人を殺めてでも奪い取る、なんて珍しい話ではない。

 

「その時は、衛兵にお任せすれば良いのではないでしょうか?」


 負の情報を殆ど知らない温室育ちの令嬢ではこの辺りについて深い話は何も知らないか。

 いや、温室育ちの令嬢じゃなくて、普通の中学2年生ですら知っている子は稀だろう。


「それは私達の領地内みたく、治安の良い、犯罪者が少ない状況下では成り立つけれど、この村の様に恐らくは負の感情に負けてしまう人間が多い状況でしたらそれ等の人間を捕まえきるだけの人の数が足りないのよ」

「ですが……」


 ステラたんが食い下がろうとしない。

 俺の言葉に納得したくないのだろう。

 自分が知らない事を認めるという事は非常に難しい事、特に信念が強ければ強い程。

 ステラたんみたく実は信念が強いタイプの人間が俺の話を簡単に納得しないのは無理もない。


「それに、衛兵って貴女が思う程真面目な生き物じゃないわ。賄賂を貰えば悪事に対し見て見ぬふりをするなんて珍しい話じゃないの」

「そうなのですか?」


 ステラたんが驚いている。

 多分この事は知らなかったのだろう。


「そうよ。私達みたいに貴族令嬢を守る衛兵でしたら、地位も給金も他の衛兵より高いですしその地位を失う訳にはいかなくなりますから余程の事が無い限りその様な不正は致しません」


 勿論、貴族令嬢を高い金で売り飛ばす為に裏切る衛兵が居るかいないかと言われれば居る。

 ただ、俺やステラたんの領地内ではまず居ないとは思うが、多数の人間が貧困に喘いでいるこの領地では逆にそのレベルの不届きモノが居ると思った方が良いだろうな。


「それなら、どうして衛兵なんかになったんでしょうか」


 悲しそうな目を見せるステラたん。

 気持ちは分かる。

 衛兵と言う仕事に就いた以上、それは悪党を捕まえたい正義の気持ちの下そうであるはずだから。

 それなのに、そんな不正をするのは可笑しいとしか思えない。

 と考えるのは自然だろう。


「食べる事に困るからよ。誰だって食べる為に仕事は必要。腕っぷしに自信があるならそれを武器に衛兵の仕事に就く、別に珍しい話じゃないわ」


 ステラたんが、がっくりと肩を落とし小さな溜息を一つ。


「ルチーナ様、世の中って、わたくしが思う以上に暗いものなのでしょうか?」

「そうね。私達が思う以上に暗いものよ」


 ここにいる皆が衛兵に関して思う節があるのだろうか?

 そう感じてしまう様な静寂が部屋を包み込む。

 

「えいへいさん、ぼくのともだちからごはんをもらっていたよ」


 この静寂に対し何かを感じたのか、その静寂を打ちらんとばかりに子供が口を開く。

 この子の友達と言う事は、まず同年代か。

 ならば、その親を脅し子供に食料を持って来させたと考えて差支えが無いだろう。

 衛兵が機能不全を起こす事は良くある話だし、現代でも日本はましな方だが、海外では賄賂を徴収して罰を与えなかったり、要求された賄賂を拒否すれば罪をでっちあげられる話は聞いた事がある。

 俺からすれば、普通と言えば普通だけど一般人からしたら、治安を守る為の人達が治安の破壊に加担しているのは異常としか思わないだろう。


「そう。それを断った友達はいるのかしら?」

「うん……」


 俺の問い掛けに、子どもが元気なく頷く。

 大方、その親が暴行を受けたり身柄を拘束されたりするだろうな。


「その友達とは今も遊ぶのかしら?」

 

 子どもが黙って目を涙ぐませる。

 大方、ロクでも無い目にあったのだろう。


「いなく、なっちゃったの……」


 堪えきれ無い涙が子どもの瞳から溢れる。

 きっと仲のいい友達だったのだろう。

 行方不明となれば、愉快的に暴行をした結果絶命したから其処等辺に投棄したか奴隷商人辺りに売り飛ばしたか。

 衛兵ですら食うに困る状況下ならば、彼等もまた生きる為にこうするしかないと言われればその通りではある。

 勿論、極めて良くない事ではあるが。

 ただ、彼等を投獄した所で根本的な問題が解決する訳でも無い。

 少なくとも、同じ仕事に就く他の誰かが同じ事をする可能性自体残る訳だから。

 自分の道楽の為、金を稼ぐ為では無く生きる為の人身売買ならばマシと考えるべきか。

 現代である、臓器を売り飛ばす為に拉致し売り飛ばすよりは。

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