47話
「そ、その様な事致す訳ないですわ」
ステラ嬢が俺に向けていた視線を咄嗟に外した。
言葉に強さも感じられず、嘘をついている時の挙動に見える。
やはり、隙をついて俺の命令を無視して一人で行動すると考えるべきか。
その時は、サナリスに任せるしかないな。
ステラ嬢を追う際、カボッチャムに乗るのは目立ち過ぎて話にならない。
だからと言って原付もこの時代じゃ最先端通り越した代物で尋常じゃ無く目立ってしまう。
サナリスはサナリスで、この世界に存在しないハズの魔族である以上目立ちはするがフードを目深に被ればパッと見人間と変わらない。
ひょっとしたら、このドジっ娘は俺の監視が外れた際何かの拍子でフードをポロリとする可能性はあるがカボッチャムや原付よりそのインパクトは小さいと考え妥協するしかない。
「そう、その言葉を信じますわ」
俺はステラ嬢の目を見てにっこりと微笑む。
「は、はい、大丈夫です」
と答えるステラ嬢であるが、なんだかそわそわしている。
俺達のやり取りが終わり、少し間が生じたところで、
「そうですよね……」
母親が落胆した様子を見せる。
お腹一杯食べられる事を期待させてしまったのか。
これはまいったな。
今この瞬間1食だけ満足に与える手も無くは無いが……。
この事を周りの誰にもバレ無ければ良いけど4人家族だからな、しかも子供が2人。
特に子供から高い確率で秘密を漏らされる。
秘密を洩らされたとするなら、多数の人間が俺達をたかろうとするが訪問頻度を抑えれば良いか。
この世界は携帯電話すら無いから知られたとしても精々この家族の近隣数家庭位か。
それでも、2-30人分は必要だが、金銭的な問題は特に無いだろう。
最悪前の領主が個人的に買い込んだ宝石を売り飛ばせば良いのだから。
いや、そうなるとそれ等の人達がもっと広い範囲に噂を広めるな……。
これでは収拾が付かなくなってしまう。
「ルチーナ様」
俺が思案していると、ステラ嬢が、せめて今日一日だけでも助けられないかと言いたげに俺をみつめる。
この母親に対し中途半端な期待をさせた俺のミスはある。
良くは無いが致し方あるまい。
「仕方ないわね。サナリス、今日位お昼ご飯抜きで宜しくて?」
「う……ふぁ、ふぁい、ルチーナ様がそうおっしゃるならが、我慢します」
サナリスが涙目になりながら俺に従った。
予定ではお昼に食べるつもりで持って来た弁当、俺とステラ嬢とサナリスの3人分ある。
子ども達には0.5人前ずつでちょうどいいだろう。
……。
まぁ、ファルタジナリングの機能として備わっているアイテムボックスの中には不測の事態に備えて何日か分の食料を入れているが、この存在は隠すしか無いだろう。
誰に知られても面倒な事にしかならないからな。
「ルチーナ様、有難う御座いますッ」
ステラ嬢が嬉々とした表情を見せる。
「この件に関して、くれぐれも他言厳禁して下さい」
俺は、俺達が食べる予定だった弁当を母親に手渡した。
「あ、ありがとうございます……この御恩は一生忘れません」
母親は涙ぐませながら、俺に対して丁重にお礼を述べた。
大袈裟な、と思いつつも食料に対するありがたみを考えればこれが当然なのかもしれない。
日本では頭が可笑しい位に食料を廃棄していた事を思い出すと心が痛むと言えばそうなる。
1つの家庭は見終わった。
ここだけでもこの村の悲惨さが伝わるが、まだこの村の全貌を見た訳じゃない。
引き続き調査が必要だ。
「いえ、大した事ではありません。この村に貴女よりも悪い境遇の方は見えますか?」
出来ればそんな人間は居ない、自分達がこの村の最底辺だと言って欲しいが。
「はい……家を持てない方もいます。教会には孤児達が集まっていますし、それ等の人達は多分私達一家よりも貧しいと思います」
やっぱり、そうだよな。
雑に考えても、親が餓死して孤児になった子供は多数居るだろう。
それ等の孤児が教会に集まっている訳か。
教会に対し食糧支援を行う手はあるが、大人達多数が飢えているなら滅茶苦茶高い確率でそれ等の大人達が教会に対し食料の略奪を行うだろうな。
この領地全体の食糧事情が悪過ぎるのか、現代日本で思い付く支援を行った所で負の感情がうごめき合い、結果何もしない方がマシなんて事がほぼほぼ起こってしまうだろう。
支援はしつつ、人間が抱くヘイト迄管理しなきゃならないのは大変な話かもしれない。
「情報を有難う。では私達はここで失礼させて頂きます」
俺達は、この一家に別れを告げまずは家を持てぬ者達が集まっていそうな場所へと向かった。
先の家族よりも貧困な人達は、橋の下と言った雨を凌げる建造物の近くに住んでいるとの事だった。
つまり、日本で言うホームレスだろう。




