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037_技巧者

 


 甲板の上で目覚めたカトリナだったが、自分はなぜこのようなところで水夫たちと一緒に寝ているのかと、盛大に焦った。

 また、カトリナは二日酔いのおかげで船酔いがぶり返してしまい、ダブルパンチで寝込んでしまった。

 自分の神聖魔法で治癒の魔法をかけるが、効果はあまりない。


「ラック様、昨日は大変なご活躍だったそうで」


 船に慣れてきて、船酔いも軽くなったゴルドが起き出してきた。


「デスシャークっていうモンスターを五匹倒しただけだよ」

「海上でデスシャークに出遭ったら、高い確率で船が破壊されます。ラック様はこの船に乗る皆の命の恩人ですよ」

「そんなものなの?」

「そんなものです」


 ゴルドは屈託のない顔で笑う。


「しかし、聖女殿にお力を見せたとか。大丈夫でしょうか?」

「見せたと言っても槍を投げただけだから、大丈夫だと思うよ。それに、彼女を試すいい機会だと思うんだ」

「ほう、試す。ですか」

「うん。僕は帝国とサダラム教を信じていないとカトリナさんに言ってある」

「ほう、それはまた大胆なことを」

「そのうえで、あの槍のことを根掘り葉掘り聞いてきて、帝国や教会に報告するようなら今後カトリナさんを信じることはない」

「承知しました」


 ゴルドはラックから海面へと視線を移す。


 その後の船旅はモンスターに遭遇することもなく順調に進み、ラックたちはとうとうボドル王国の玄関口である港に到着した。


「賑わってますな」


 船の上から賑わう港を見てゴルドが感嘆する。


「ラックさん!」


 続々と降りてく冒険者たちの波へ加わろうとした時、ラックの名が呼ばれたので振り返るとフック船長だった。


「フック船長、お世話になりました」

「なーに、世話になったのはこっちだぜ。また船で旅することがあったら是非俺の船に乗ってくれよ」

「はい。できるだけそうさせてもらいます。ありがとうございました」


 フック船長と固い握手を交わしてラックは船を降りていく。

 カトリナは二日酔いが治ってからは起き出すことができるようになり、ゴルドも最後には船に慣れて船酔いを克服した。

 しかし、シャナクとローザは最後まで船酔いに苦しみ、酷い顔で幽鬼のようにフラフラ歩いている。


「うぅ……。地面が揺れているのです……」

「陸地なのにふわふわする……」


 シャナクとローザはしばらく使い物になりそうにないので、宿屋に早めにチェックインすることになった。


「ここならゆっくりできそうですね」


 カトリナが見つけた宿は冒険者が泊まるような宿ではなく、金持ちや貴族がとまるような宿だった。

 彼女やローザにしてみれば普通なのかもしれないが、一泊するだけでラックたちが泊まっていたような宿の二十日や三十日分の料金が取られるような高級宿だ。


「……いかがしますか、ラック様」

「いかがって……どうしようか?」

「さあ、ラックさん、入りましょう。ほら、ゴルドさんも」


 つい先日までサダラム教の教皇の孫として、そして聖女としてお金の苦労を知らないカトリナである。

 そのことを責めることはできないが、冒険者の常識というものを教えなければいけないと思うラックであった。


「とりあえず、今は二人の回復を優先しよう」

「承知しました」


 カトリナがチェックインすると、老紳士が部屋へ案内してくれる。


「こちらがエクストラスイートになります」

「エ、エクストラ……」

「スイート……」


 ラックとゴルドは恐る恐る部屋の中へ入る。

 ふわふわの絨毯と大きなリビング、奥には四つの寝室があってそれぞれの部屋にキングサイズのベッドが二つある。


「これ、三十日分で収まるのかな?」

「さ、さぁ……?」

「とにかく、二人を寝かそうか」

「そうですな」


 シャナクとローザを別々の部屋に寝かせてリビングで寛ぐが、どうも尻が落ち着かない。

 バーニングガーデンの冒険者ギルドが用意してくれたスイートルームは、たった一日のことだったし冒険者ギルドが支払いをするということだったので、気にはしなかった。

 しかし、今回は自分たちで支払いをするのだから、請求金額に戦々恐々とする。

 今のラックたちはドラゴンを売った代金によって大金持ちなのだが、貧乏性の二人にとってこの宿は全てにおいて「ない」のだ。


 その日、何度か治癒魔法をかけてもらったシャナクとローザが起き出してきたので、ラックは金銭感覚について共有しようと五人でテーブルを囲んだ。


「そんなわけで、僕たちは貴族ではなく冒険者として生きていくつもりです」


 貧乏貴族だったラックの金銭感覚はほとんど庶民で、ゴルドは騎士だったが元は庶民の出身、シャナクも庶民の出身でカトリナとローザと金銭感覚が違うことを説明した。

 また、ラックたちは冒険者として活動するのだから、貴族的な考えは忘れてほしいとカトリナとローザへ再度語って聞かせる。

 冒険者として活動することは、二人がラックと行動を共にする時の条件の一つでもあるので、受け入れないのであればここでお別れである。


「申し訳ございません。この宿がそれほど高額だとは思わなかったものですから、私ったら……」

「すぐに冒険者の常識を覚えろとは言いません。しかし、自分たちが冒険者だということは、忘れないでください」

「はい、冒険者の常識を覚えるように全力で努力します!」


 カトリナが胸の前で手を合わせる。


「努力する」


 ローザは言葉少なく答える。


「それでは明日から普通の宿に泊まりますし、場合によっては野宿しますので、今日は豪華にいきますか!」

「え、いいのですか?」

「もう泊まってしまったのですから、しっかりとこの宿の豪華さを味わいましょう。もっとも僕たちにとっては豪華でもお二人にとっては普通の料理なのかもしれませんが」


 その日は豪華なディナーに舌鼓を打った五人である。


 その夜中、カトリナとローザが寝静まった頃にラックは起き出した。


「ラック様、箱庭へ向かわれるのですか?」


 ラックが起き出した気配にゴルドが気づく。


「ちょっと様子を見てくるよ。多分大丈夫だと思うけど、二人がきたら適当に誤魔化しておいて」

「承知しました」


 ラックは扉を通って箱庭へ入っていく。


「マスター、いいところにきたね!」

「ん、どうしたの?」


 家に入るとすぐにラッキーが出てきた。


「工房ができあがったよ」

「あ、そうなんだ。見せてよ」


 工房とは生産活動ができる拠点のことで、ラックがあるスキルを手に入れたことでラッキーに造るように頼んでおいた施設だ。


「ここは鍛冶場だよ」


 炉や金床などがあって、壁には大小のハンマーなどの道具がかかっている。


「この炉ならオリハルコンだって溶かせるよ」

「いい感じだね、気に入ったよ」

「えっへん~」


 ラッキーは可愛らしく胸を張った。

 その姿がラックの心をほっこりさせる。


「次は調合室だからね~」


 調合室に入るには、エアーシャワーという風が吹き出す小部屋に入ってからじゃないと入れない。エアーシャワー室は体についたホコリを落とす部屋だと、ラッキーは説明してくれた。

 ホコリを落として入る調合室は、主に調薬に使う部屋だ。調薬というのは薬を作る部屋だと思ってくれればいい。

 調薬室はいくつもの作業机が設置されていて、ビーカーやフラスコなどの器具が棚に並べられていた。


「清潔感があって、いいね」

「これは薬草を乾燥させる乾燥庫だよ」


 エアーシャワー室よりも少し大きい部屋が乾燥庫だ。


「この乾燥庫は乾燥させるものを判別して最適な乾燥をしてくれるんだよ~」

「それはすごいね!」

「ふふふ~」


 ラッキーはとても自慢げに次の部屋に案内してくれた。


「ここは彫金や宝飾の工房だよ~」


 工房自体はそれほど広くないが、作業性を重視した感じの作業台が設置されていて、細かな細工ができるように拡大鏡やピンセット、小さな金槌などが置かれている。


「ここは縫製工房だよ~」


 広い部屋の中に長くて大きめの作業台が並んでいる。


「最後は木工所だよ。ここは大きな木を製材したりするから、とても広いよ」


 大きな木を切る巨大な丸鋸などがあって、工房の規模は木工所が一番大きい。

 これならどんな木工製品でも加工できそうだ。


「こんな感じかな~。他に造ってほしいものがあったらいつでも言ってね~」

「十分だよ。ありがとう、ラッキー」


 ラックはさっそく木工所で火炎木を加工し始めた。

 この火炎木は灼熱のダンジョン内で採取できる珍しい植物で、湿気を吸い虫を寄せつけない高級木材になる。

 太さ一メートル、長さ二十メートルほどの巨大な火炎木から板をいくつも切り出していく。

 火炎木は乾燥させなくてもそのまま木材として使えるので、ラックは固有スキル技巧者を発動させて火炎木の板から家具を作っていく。

 この固有スキル技巧者は、レジェンドレアガチャの景品として出たもので鍛冶、錬金、薬、彫金、宝飾、縫製、木工など全ての生産スキルを含んだ複合スキルになる。

 この固有スキル技巧者があれば、どんな生産もお手の物である。



【氏名】 ラック・ドライゼン 【種族】 人族 【性別】 男

【天職】 ガチャマン 【レベル】 29(249475/290000)

【HP】 271549/270049+500+1000 【MP】 271549/270049+500+1000

【腕力】 135021+300 【体力】 135031+300+500 【魔力】 135010+300+500 【俊敏】 135022+300 【器用】 135020+300

【称号】 モンスターデスメイト 【加護】 精霊王エフェナイスの祝福

【レジェンドスキル】 箱庭 召喚術

【固有スキル】 ガチャ ガチャ変換 剣聖9(3500/9000) 支援8(2500/8000) ガチャポイントアップ 技巧者1(30/100) 【ガチャポイント】 766700

【スキル】 物理攻撃耐性1(1/100) 真贋の目10(7000/10000) 異空間庫 結界魔法8(3300/8000) 超越強化8(3100/8000) 氷魔法8(2700/8000) 状態異常無効 パーフェクトフェイク 神速8(3200/8000) パーティー共有 神聖魔法5 鍛冶5

【契約】 精霊王エフェナイス

 装備品: 聖鎧ヴァルギニア 聖剣ソラスティーバ 勇者の指輪 聖騎士の指輪 賢者の指輪 聖者の指輪 名工の指輪 生命の指輪 サラウンディングマップ


 

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