容赦ない呆れの視線。
「サラ様は凄い方だったのですね…。」
市場エリアの中で比較的新しいカフェ。その隅で新作スイーツをつつきながらメロは何度めか分からない台詞を口にする。
視察は滞りなく終わった。元々の住民と今回受け入れたオズマン領の領民が衝突してないかの確認だけだったが杞憂だったようで、更に活気づいた街に思わずガッツポーズしてしまったくらいだ。
「私は特に何もしてないよ。皆が頑張ってくれたから。」
「この森を開拓したのはサラ様ですもの。それがなければこうはなっていませんもの。」
だから凄いのですよって手放しで褒められまくって心境は複雑である。なんせ今までの魔女の遺品で切り拓いたものだ、私は動かしただけ。開発も結局進んでいない。
ループを私で終わらせると意気込んだ割にたいしたことは何一つしてないのだ。
「それより、私が出ていった後のお姉様の様子を聞かせてくれる?」
本日のもう一つの目的の方に話題を移せば、メロは背筋を伸ばして咳払いを一つ。
「サラ様が屋敷を飛び出してすぐにリーナお嬢様が部屋にやってきて何やら騒いでいましたが、その内容が全く理解出来ないまま出ていかれてしまい結局何だったのやら…。」
「お母様は?」
「特に何も。」
メロが理解できない内容は恐らくストーリー通りに動かない私への不満と、これからどう動くべきかの独り言だろう。母はまぁ予想通りというか。
私の部屋にあった物はほとんど処分され、お金になりそうな物だけリーナが持って行ったらしい。メロがだいぶ抵抗してくれたようだが、他の使用人に邪魔されてどうにも出来なかったと。そんな家に嫌気がさして、私が出て行った数日後に彼女も辞めたそうだ。
「辞めるなんて思い切ったことしたよね。」
「でもそのおかげでサラ様と再会出来たので良いのです。」
それは確かにそうなので頷いておく。屋敷にいたままでもいずれ再会は出来ただろうけど、母達と共に王都へ行く可能性があったわけで。本当に父に会ったタイミングといい、なかなか運がよろしいようで。
「まぁ今はこんなものかな。」
「たいした話が出来ずに申し訳ありません…。」
「いいのよ。寧ろメロに被害が無くて良かったわ。」
彼女のご両親にも先程の視察で顔を合わせたけれどだいぶ感謝されてしまったし。傍らの籠に詰められた沢山の料理はお礼として渡されたものだ。お店にも後で食べに行くつもりである。
綺麗な所作でコーヒーを啜っているメロを見て、先程の疑問を思い出す。
「ねぇメロ。ちょっと気になったのだけど。」
「なんでしょうか?」
「レイル君ともしかして付き合「ありえません。」…そうなの?」
え、なんでそんなに食い気味?そして何故呆れた視線を寄越すんだ?




