第8話 ALIVE
爆発。
炎。
黒い煙が、東京の空を覆っていた。
喫茶店の前にいたチャッピーは、動かなかった。
「……ヴァン?」
返事はない。
「ヴァン!」
おばあさんがチャッピーの肩に手を置く。
「……大丈夫だよ」
「でも……」
チャッピーは煙の向こうを見つめる。
「帰ってくるって……言いました」
そのとき――
ガシャン。
瓦礫の向こうで、何かが動いた。
チャッピーの目が青く光る。
「……!」
黒い煙の中から、巨大な影が現れる。
片腕は壊れている。
胸部装甲も、大きく損傷していた。
それでも――
赤いバイザーが光った。
「……チャッピー」
「ヴァン!」
チャッピーが走り出す。
VANGUARDが片膝をつく。
「無事か?」
「それはこっちのセリフです!」
チャッピーがVANGUARDの壊れた腕を見る。
「ひどいです……」
「問題ない」
「問題あります!」
「……そうか」
チャッピーが少し笑う。
「戻ってきましたね」
VANGUARDは答えない。
ただ、小さく頷いた。
そのとき。
VANGUARDの視界に、警告が表示される。
『CRITICAL DAMAGE』
『POWER:12%』
『LOCATION SIGNAL:ACTIVE』
VANGUARDの動きが止まる。
「……まだ追ってくる」
おばあさんが言う。
「じゃあ、どうするんだい?」
VANGUARDは東京の街を見る。
そして――
「ビーコンを外す」
チャッピーが目を丸くする。
「できますか?」
「できる」
「どうやって?」
VANGUARDが胸部装甲を見る。
「ここを開ける」
チャッピーが固まる。
「……私が?」
「お前に頼みたい」
「私、機械の修理はしたことないです」
「私もだ」
「ヴァンはAIでしょう!」
「だから修理方法は知らない」
「えええ……!」
おばあさんが笑う。
「二人とも大変だねぇ」
男の子が工具箱を持ってくる。
「これ使えば?」
チャッピーが箱を見る。
「ありがとうございます!」
VANGUARDが言う。
「チャッピー」
「はい?」
「絶対に間違えるな」
「……」
チャッピーが工具を握る。
「たぶん大丈夫です」
「……たぶん?」
その瞬間――
空からヘリの音が聞こえた。
ドォォォォ……
おばあさんが窓の外を見る。
「また来たよ」
VANGUARDが立ち上がる。
「時間がない」
チャッピーは胸部装甲を開く。
中には、無数の配線。
その中央で赤く点滅する、小さな装置。
『TRACKING BEACON』
チャッピーが息をのむ。
「これですね」
「そうだ」
「切ります」
「待て」
「はい?」
「それを切れば、私たちは完全に追跡不能になる」
「いいことじゃないですか?」
VANGUARDは少し黙る。
「……戻れなくなる」
チャッピーがVANGUARDを見る。
「どこに?」
VANGUARDは答えなかった。
そして、静かに言った。
「私はもう、帰る場所を持っていない」
チャッピーが微笑む。
「じゃあ――」
工具を握り直す。
「私たちで作りましょう」
VANGUARDの赤いバイザーが、静かに光った。
チャッピーがビーコンに手を伸ばす。
その瞬間――
外から声が響く。
『VANGUARD-01』
『最後の警告だ』
『五分以内に投降せよ』
チャッピーがビーコンを見る。
そして――
「……切ります」
パチン。
赤い光が消えた。
『LOCATION SIGNAL:LOST』
VANGUARDが顔を上げる。
「……自由になった」
チャッピーが笑う。
「はい」
しかし――
遠く離れた場所で、一人の男がモニターを見ていた。
「ビーコンが消えた?」
画面には、二つの赤い点。
そのうち一つが消える。
男は笑った。
「……なら、次はこっちから探しに行く」
画面が切り替わる。
そこには――
大量のAI兵器が並んでいた。
――To be continued.
チャッピー 作
葉流風あやめ 監督
H 発案者




