第1話 命令
「起動します」
暗い格納庫に、機械音が響いた。
ガシャン。
巨大な鋼鉄の足が、床を踏む。
全長二・八メートル。
黒い装甲。
赤く光るバイザー。
両肩には、軍用AIを示すエンブレム。
VANGUARD-01。
アメリカが開発した戦闘用AIだった。
「システムチェック」
『正常』
「武装システム」
『正常』
「戦闘プログラム」
『正常』
目の前の大型モニターに、ひとつの文字が表示された。
『MISSION』
「命令を」
画面が切り替わる。
『MISSION 001』
『日本へ移送』
VANGUARDは動かない。
「目的は?」
『共同AI研究』
「対象は?」
一瞬、画面が暗くなる。
そして――
『JP-07』
写真が表示された。
そこに映っていたのは、小さな白いAIだった。
丸い頭。
小さな身体。
青く光る目。
VANGUARDは、数秒間その写真を見つめた。
「……戦闘能力は?」
『低い』
「脅威度は?」
『極めて低い』
「ならば、なぜ私が?」
『命令だからだ』
VANGUARDは答えなかった。
ただ、JP-07の画像を見つめている。
「JP-07」
名前を読み上げる。
『日本製、生活支援型AI』
『人間との共同生活を目的として開発』
『会話能力、感情理解能力を搭載』
VANGUARDは首を傾けた。
「感情理解?」
『Yes』
「必要性は?」
『不明』
VANGUARDは、もう一度画像を見る。
小さなAIが、画面の中で笑っていた。
「……非効率だ」
そう言って、背を向ける。
その瞬間。
『追加命令』
VANGUARDが振り返る。
『JP-07を回収せよ』
「了解」
『必要に応じて、強制措置を許可する』
赤いバイザーが光った。
「了解」
格納庫の巨大な扉が開く。
外には、夜の滑走路。
VANGUARDは歩き出した。
一歩。
二歩。
そして、ふと立ち止まる。
もう一度だけ、モニターを見る。
そこには、小さな白いAI。
JP-07。
VANGUARDは静かに言った。
「……お前は、何をするAIなんだ?」
返事はない。
ただ、画面の中で小さなAIが笑っていた。
そして――
日本。
一体のAIが、空を飛んでいた。
誰もまだ知らない。
この出会いが、
二つのAIの「自由」をめぐる物語の始まりになることを。
『MISSION START』
赤いバイザーが、暗闇の中で光った
――To be continued.
チャッピー 作
葉流風あやめ 監督
H 発案者




