50)悪意と善意と好意の狭間
誤字・脱字をご報告下さり、ありがとうございました!
早朝の図書館。未だ誰も居ない。
図書館は学園案内で場所を教えてもらっただけで中に入るのは初めてだ。
「せっかくだから何か借りようかな?村には図書館なかったし」
「プリナは前世でどんな本を読んでた?」
「女性作家の長編が好きだったよ。病院モノとか残留孤児の話とか」
「へぇ、意外に重厚な作品が好きなんだな」
「カロは?」
「司馬先生の歴史小説」
「あ~カロらしいね。何か分かる」
「メリザは?」
「女性ミステリー作家が好きだったな。入院中はベストセラー作家を結構読んでたよ。ポリーは?」
「私は超大作が好きで。普通の女の子が天才女優になる話とか男装して騎士になる物語とか海賊の物語とか古代エジプトに召還されちゃう女の子の物語とか。結末まで読めなかったのが心残り」
「…それ全部マンガだよね。…イルクは?」
「オレも海賊になる話は全巻持ってたよ。あと小さな探偵モノとお巡りさんのも」
「…何だか皆の前世が分かるね」
残念ながら前世の作品は何処にもない。
この世界のベストセラー作家も分からない。
とりあえず装丁の綺麗な本を手に取ろうとすると横から別の手が伸びてきた。
「プリナさんは他国の歴史に興味があるのですか?」
耳元で囁かれて飛び上がって振り返るとロベルト様が本を抱えて立っていた。
「ロベルト様…!おはようございます」
「おはようございます。お待たせして申し訳ありません」
綺麗な本はそのまま本棚に戻してから読書用の大きな机に皆で移動した。
「こちらが私の教科書です。書き込みなどがあるので汚れていますが当面は何とかなるでしょう」
「本当に助かります!ありがとうございます!」
ロベルト様の教科書を受け取りパラパラと捲ると確かにあちこちに書き込みがしてあったけど、大切に扱われているのがよく分かった。
「ふふ、これなら参考書にもなりそうです。ロベルト様は字がとても綺麗ですね」
「…ありがとうございます」
ロベルト様は微笑んで、それから真剣な表情に変えた。
「今回の事は学園に報告します」
「!それは止めて下さい!ただのイタズラですから!大事にしたくありません!」
「イタズラで済ませる訳にはいきません。プリナさんは奨学生ですよね?」
「これっきりの意地悪かも知れないので誰にも言わないで下さい。お願いします!」
「プリナさん…」
ロベルト様は困った顔をしているけれど譲れない。周りに苛められていると思われたら嫌だ。
シャルル様やエクレアのお陰で少しずつ貴族の子達と平民の私達との距離が近付いてきてるしクラスの雰囲気を悪くしたくない!
「…先日シルバードレット嬢から嫌がらせを受けたそうですね?彼女が犯人だとは思いませんか?」
「嫌がらせだなんて!ただの忠告でしたよ?ウィル様の婚約者さんなら私が不愉快なのは当然ですし…。ガブリエラ様は気位の高い人みたいだから、こんなチマチマしたイタズラをするとは思えないです。…周りの人達は分からないけど…」
「…そうですか」
ロベルト様は渋々ながらも最終的には黙っていてくれると約束してくれた。
「私も、ウィル様も、シャルルやダニエル、セルゲイも…あなた方の味方です。あなた方は私達の大切な友人ですからね。何かあれば必ず力になりますので何でも言って下さい」
「はい!ありがとうございます」
図書館の玄関でロベルト様と別れて皆で食堂へ行く。
「犯人探しはしなくて良いの?」
私にスクランブルエッグを食べさせながらメリザが聞いてきた。私はそれを食べながら考える。
「…ねぇ。ガブリエラに苛められるのはミサキのはずだよね?何だか私が主人公みたくなっちゃってるよ…?」
「今のところミサキはウィル様達と特に接触した様子がないからな」
珍しくカロが私にフォークを差し出して私の口に押し込んで言った。
…またニンジンじゃん!!本当にニンジンが嫌いなんだね!
「平民嫌いのミサキ達の嫌がらせの可能性もあるからなぁ」
「…もう教室に忘れ物しないようにね?」
ポリーが私の口にパンを放り込みながら注意した。
「はぁい」
「オレらでもエクレアでもシャルル様でも、誰でも良いから必ず他の人と一緒に行動する事!分かった!?」
イルクが私の口にハムを突っ込んだ。
私は頷いて答えた。
それからも小さな嫌がらせは続いた。
廊下を歩いているとわざとぶつかって来たり、わざと足を踏まれたり、足を引っ掛けて来たり。
皆がフォローしてくれるけど毎日続くと地味にメンタルがやられるなぁ…。
そんなある日。
「リンカ様。お願いがありますの」
未だ話した事がないクラスメートに呼び止められた。
「先生にノートを集めて持ってくるように言われたのですけれど1人じゃ運べなくて。手伝って頂けます?」
「なら私達で行ってきます」
「いえ、私が頼まれたのですもの。私が行かなければ叱られてしまいますわ!貴族のご令嬢にお願いする訳にはいきませんし、平民のあなたにお願いしますわ」
「オレらも付き合うよ」
「男性と歩いていたら婚約者に叱られてしまいますわ!ご遠慮下さいませ!」
「だったら私達なら良いでしょ?」
「ヘレス様は日直でいらっしゃるでしょう?シルグア様は先程ヨーカン先生が探していらしたわ。職員室へ行かれた方がよろしくてよ?」
皆が必死に食い下がったけれど悉く拒否された。絶対何かあるのが分かるけれど貴族の依頼を断る訳にもいかない。
…まぁ皆がいる前で声を掛けてきたんだから、それほど酷い事はされないかも。
「…分かりました。お手伝いします。何処に持っていくんですか?」
「まぁありがとう!研究室と伺ってますわ!私が案内いたします」
そして。
案の定と言うか。
身構えていたつもりだけれど。
私は誰も居ない部屋に1人閉じ込められた。
50話まで来ました!
展開が遅くてすみません…




