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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
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48)有意義な放課後

音楽の授業の後、私はエクレアと2人音楽室に残っていた。


『エクレア、それ何て曲?』

『雨だれ』

『綺麗な曲だねぇ。前世でもピアノ習ってたの?』

『ううん。ピアノはエクレアとして習ってきただけだよ』

『えぇ!?すごい!!エクレア頑張ったんだね、偉いね!ピアニストみたい!!』

『貴族の嗜みってやつよ。私なんて普通のレベルだよ』


エクレアはピアノを弾き終えると立ち上がって私に向かって深く頭を下げた。


『プリナ、本当にごめん!!ガブリエラを止められなかった!!』

『え?…ああ!大丈夫だったよ?エクレアが前もって教えてくれてたし。ありがとう』

『…でも絡まれたんでしょ?私が居ない時に』

『うん、まぁ…。でも忠告?されただけだったよ。同じ性悪でもミサキより迫力があったよ!さすが年季が違うね!』


私が言うとエクレアは眉を下げて笑った。

私はエクレアの横で鍵盤を押した。


『私もピアノが弾けたら良いのにな』

『前世では何か楽器やってたの?』

『ええと小学校から中学校まで授業でずっとリコーダーとピアニカでしょ、学芸会ではトライアングルとカスタネット!あ、大人になってからカラオケでマラカスとタンバリンは触ったよ!』

『……高校は?』

『選択授業で私は美術を選んだから高校は音楽の授業は受けてないよ』

『美術は何をやってたの?』

『先生が「佐藤さんは作風が独特だから自由にやってみなさい」って言うから好きなことやってたよ。石膏でトーテムポール作ったり水彩画とか油絵とか』

『今世でもやれば良いのに』

『村になかったし生まれ変わって絵の具どころかクレヨンだってパステルだって色鉛筆だって触ってないんだよ?』

『私はプリナが描いた絵を見てみたいな』

『う~言われたら私も絵を描きたくなったよ』

『美術部に入ったら?一度美術室に行ってみたら良いよ』

『うん、そうしてみる』


思い立ったが吉日!

私は美術室のドアを開いた。


「こんにちは~。誰かいませんか?」

「その声はプリナか?今はオレ1人だ」


部屋に入るとダニエル様が1人筆を握っていた。


「ダニエル様は絵がお好きなんですか?」

「似合わないだろ?」

「ふふ、そんなことないですよ?」

「筆を握って無心に描いてる時間が好きなんだ。下手くそだけどな~」

「分かりますよ、私も好きですから」

「そうか。…プリナも何か描いてみるか?」

「良いんですか!?」


私はダニエル様の隣で真っ白なキャンバスに向かった。この感覚、すごく懐かしい…。


隣でダニエル様は無言で熱心に筆を進めている。私も無心になって思うままに描いてみた。

とても静かな時間。



「…プリナ。そろそろ帰ろうぜ」

「!ああ、ダニエル様。すみません、お待たせしてしまいましたか?」

「いや、オレも集中していたからさ、気が付いたらこの時間だったよ。…プリナは何を描いてるんだ?」

「何だろう?特に何も考えてませんでした。…ダニエル様は…犬ですか?」

「………………馬だ」

「ごめんなさい!!ええと、まだ描き途中ですもんね!?」

「そうだけど。…下手だって言っただろ?」


ダニエル様は顔を赤らめてそっぽを向いてしまった。


「プリナの絵は…何て言うか優しい色合いだな。どんな絵が完成するのか楽しみだよ」

「ありがとうございます!続きを描きにまた来ても良いですか?」

「鍵はオレが預かってるから絵を描きたくなった時は声をかけて。オレも付き合うよ」

「お忙しいダニエル様を付き合わせるのは…ダニエル様が絵を描きたい時に教えて下さい」

「でも好きな時に描きたいモンだろ?…だったら鍵を渡しておくよ」

「えぇっ!?良いんですか…?私に渡しちゃっても」

「オレもプリナの絵が見たいからさ。完成したら教えてくれよな?」

「…はい。ありがとうございます」


ダニエル様と美術室の前で別れて音楽室へと戻る。


「さすがにエクレアはもう居ないよね…」

「プリナ?こんな時間にどうしたの?」


音楽室にはシャルル様がいた。


「シャルル様こそ!」

「僕はバイオリンを弾きに来たんだ。たまに思い切り弾きたくなるんだ。ここなら誰にも邪魔されないから」

「…そうだったんですね。シャルル様の貴重なプライベート時間を邪魔してすみませんでした。今直ぐに出ていきます!」

「!ごめん!そういう意味じゃなかったんだ!プリナは音楽の授業でその…褒めてくれたし、プリナのために弾くと約束したから…良かったら聴いて行って欲しい」

「…本当ですか?ふふ、シャルル様の演奏を独り占めですね!私すごく贅沢です!」


それから夕食の時間まで観客が私1人のシャルル様のミニコンサートが開催された。


美術室での穏やかな時間と音楽室での贅沢な時間。

とっても幸せな時間を過ごした。




後で皆から突っ込まれる事になるけれど、この時の私は未だ知らない。




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