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炎狼大同盟

神聖帝国はその後も南から進撃を続けるが、クロウシュタット帝国を攻略するに当たり、絶対に避けられない関門が存在した。

それが、クロウカシス大山脈である。

最高7000mの超弩級山脈は大量の兵士を通すなど思いもよらず、帝国軍はこの山に数多の防御陣地を築き山岳兵を配備していたのだ。

なにをするにしても、この山脈を乗り越えなければ始まらない。

すでに神聖帝国は山脈を突破するために100万人もの大軍拡を行った。

また火砲も5000門、戦車も600両が生産され南部へ送られた。

俗にいう山脈の戦いの始まりである。



参加兵力

帝国軍70万

神聖軍200万



無数の砲火が火を吹く。

「撃てっ撃てっ!!」

「残らず撃ち尽くせ!」

火砲から撃ち出される無数の砲弾。

それは遥か遠くで炸裂し、山の形すら変えていった。

神聖帝国側の作戦は、大量の火砲に物を言わせた超準備砲撃である。

呆れ返る程の砲撃の果てに、神聖帝国側は歩兵部隊に突撃を命令する。

しかし。

そこで彼らが見たものは、地下壕で全ての砲撃をやり過ごし、無傷で迎撃する帝国軍の姿である。



現実の話になるが、硫黄島の決戦でも同じような事が存在した。

アメリカ軍は島の形が変わるほどの砲撃を行ったが、日本軍は地下壕でそのすべてをやり過ごし、損害は軽微に留まった。

第一次世界大戦でも、道に薬莢が山積みになるほどの砲撃をして塹壕に隠れる歩兵部隊を沈黙させることはできなかった。

歩兵なら狭い地下壕や建物に隠れることができ、そうなればいくら砲撃したところで意味がなくなってしまう。

歩兵ほど、特に砲撃に関して粘り強く抵抗を行える兵科は他にない。



「撃てっ!撃てっ!!」

神聖帝国側も全く同じセリフを言っていたが、こちらが撃つのは機関銃の鉛玉である。

圧倒的な機関銃の掃射の前にむやみに突っ込んだ歩兵部隊は倒れていく。

それを神聖帝国側も機関銃で応戦し、戦いは激戦となっていく。



「戦車隊だ!戦車がやってきたぞ!!」

ゴゴゴゴゴゴと地響きを上げてやってくるのは神聖帝国の戦車である。

砲撃や同軸機銃の銃撃を行いながら突進していく戦車隊に、歩兵部隊も鼓舞され、随伴して前進していく。

「………橋があるな。」

「だからどうした?渡るだけだろうが。」

「いや、違うんだ、あるにはあるが………あれ、壊れてるだろ。」

「アァッ!!?」

そう、そこには壊れて真っ二つとなった橋があるだけだった。

「歩兵は通れるだろうが、これじゃあ戦車の通行は無理だ………。」

そう、戦車は何もない平原で戦うときほど強いものはない。

歩兵や砲兵は隠れる場所がないのに、戦車ときたら自分自身が隠れる場所なのだ。

だが、このような山岳地帯では一気に使い勝手が悪くなっていく。

一番くるのはインフラである、戦車は歩兵が通れる場所も通れない事態がおおい。

平原等でも同じ事はあるが、山岳ではそんな事態が一歩歩くごとにこれなのだ。

無理に通そうとすれば、工兵を持ってきて橋をかけ、道を整備するしかない。



「敵はだいぶ苦戦しているようですな。」

「違いない。」

そう部下に返事を返すのはB軍集団指揮官のクラネフ・ダラット元帥である。

「まだまだだぞ、神聖帝国よ、このような」



この日進む事ができたのは1kmだけだった。

「川の渡河の方がマシだ、渡れるようにさえすれば一瞬だ、だがこっちは常にこんな妨害にあわざるおえん。」

そうこぼす下士官もいた。

しかし、神聖帝国は大量の兵士の投入で強引に進んでいく。

なにせ神聖帝国は元々100万人の兵士がいたのに更に100万人増員する事となったのだ。

当然の結果であった。



その日、クラネフ・ダラット元帥の部屋に一人の来客がいた。

「これは、ルドルフ殿ではありませんか。」

「どうも、クラネフ殿、少しの間はずさせてもらってね、この調子では当分北部の攻勢は無いだろう。」

指揮権はガル大将に委任してある、そう最後に付け加えると、二人は座って話し合う。

「なんですか、ルドルフ殿。」

「いや、これからの仕事の事でも話そうかと思ってね………不安に思わないか、今回インテリジェンスの情報によれば敵は100万の大軍拡を行ったのだろう?」

「ああ、その事は私も気がかりだった、敵はどうやら海外領土から兵士を引っ張って来ているらしい、やる気も練度も遥かに劣るが………海外領土の人間は一族郎党全員が臣民権をもっとらんから、それが手に入る軍人になりたい奴は五万といる、幾らでも引っ張ってくる事ができるだろう………。」

「なぁ、ものは相談だが、連中はこうした海外から引っ張ってくるのに海路を使っているらしい………海軍に封鎖を打診できないかね。」

「それだ、よし、早速やってみよう。」

こうして陸で激戦が巻き起こる中、海でも戦いが起こり始め、そして何より、押され気味だった戦局の転換期となる出来事があったのである………。



帝都、ヴォルフガング。

無数に建てられた建物がどこまでもどこまでも続く。

そんな中、ぽっかりと建物の海に空く穴がある、その穴には建物は中央の宮殿しかなく、周りは全て庭園となっている。

これこそが現皇帝サイクラシュ・サイザーが住む皇宮である。

そして、会議室を覗けば、そこには前進を黒い、何処までも黒い軍服に身を包み、長い髭、髪もこれまた黒い男が椅子に座っていることだろう。

男が立つ。

「これは、教皇殿ではありませんか、まさかあなた自身が来てくれるとは、思ってもおりませんでした。」

「いえいえ………あなたが新皇帝ですか、私は前大戦であなたのお父上とあっている、同盟を締結した時の事だよ、私は枢機卿の一人としてあったのだ、あなたににて立派なお人だった。」

「ありがとう、ところでそろそろ話に入ろう。」

「はい、同盟の件ですな。」

男………皇帝は椅子を進め、教皇は座る。

「また、締結してくれるおつもりと聞いたが、それは本当でしょうか。」

「はい、私、教皇と、全枢機卿、何より全国民の意思です、我々は、先の大戦で領土の半分を彼ら、神聖帝国に取られることとなった、これは百年、二百年前の話ではありません、ほんの数十年前の話です、その領土にはあの大戦の記憶を持つ人間が、未だに我々の助けを待っている、早く奴らから解放してくれ、と………自惚れに聞こえるかもしれませんが………。」

「炎狼大同盟。」

「そうです、かつて我々とあなた方の同盟がそうよばれていた、そして、我々は、それをもう一度復活させたい!!」

「我々はすでに編成した25個師団を援軍として出す用意がある、貴国の領土は必ずや奪還し、もう一度盟約を結び直そうではありせんか。」



こうして、2月1日、25個師団が旧火神国領に海を通して侵攻を開始、10日に上陸を果たした。

その時点で火神国も神聖帝国に宣戦布告、こうして火神戦線が形成された。



参加兵力

帝国軍50万 火神国80万

神聖軍50万



「………よし、出撃か………。」

どうこらせと立ち上がるのは将官服に身を包んだ男である。

「ちきしょう、アイアンアーミーズの指揮官はやめさせられたが、諦めたわけじゃないぜ………。」

それは、閉職に追いやられるところだったのをなんとか頼み込み、師団長に就任したサッター・クルルト少将の姿であった。

「ふっ、ずっと血が疼いてたんだ、あの時から、どうすればいいのかをずっと考えてた、それがやっと出たからここに来た、とっとと出世して中将に戻る!」

やってやる、そう意気込むサッターであった。



神聖帝国の火神国領土は、クロウシュタットとは国境線が接していない、火神国の西側の部分だ。

侵攻が始まるまで火神国は宣戦布告はせず、領内は通れない、故に海路から上陸することとなった。

海岸を揚陸艦が埋め尽くす。

「降りろ!急げ急げ!!」

上陸中は無防備である、防御側としてはこれほど絶好の機会はない。

今回上陸した場所は敵が展開していない場所であるが、すぐにやってくる事が予想され時間は全くないのが現状だ。

「これより旧火神国の都市であるブラッタキアまで侵攻、物資を溜め込み陣地を構築する、そして敵を待ち構える!」

そういうのは今作戦の25個師団を率いる大将だ。

「この都市の占領は貴官に任せる、よろしく頼む。」

そう言われたのはサッター………ではなく別の将官である。

(………やはり、か。)

サッターは内心ため息をついていた。

やはり前回の失敗で信用を失ったらしい。

だが、いつかは出番が来る、その時活躍すれば万々歳と考えた。

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