第6話 異世界は『ゲーム感覚で』
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〜アプリ〜
『i health』
『i data』
『i bank』
『i tube』
『i board』
『i ranking』
『i map』
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「知らないアプリだ。
いや、それよりも!」
これまで使っていたアプリを必死に探すが、まったく見当たらない。
大切に保存しておいた母の写真も消えてしまった。
「 ……なんとなく、神の行動原理が分かってきたな」
神は、無慈悲だ。
人間のことを道具としてしか見ていない。
だから、自身の目的達成のために不必要な弱者を簡単に切り捨てられるし、個人が大切にしていた思い出もすべて捨て去ることができる。
有益な人間と有益なシステムだけ残して。
馬鹿にしやがって。
魔王の方が、まだ人間味がある。
「よし、決めた。
試練なんて知るか。
俺は俺の生きたいように生きる」
母との思い出を消去され、俺はしっかりと神のことが嫌いになった。
もう、神の言うことなんて聞くつもりは一切ない。
そう胸に刻み込んだあと、
俺は適当にアプリを起動した。
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『i health』
〜説明〜
ユーザーの詳細なステータスが分かる。
また、取得したスキルの一覧・詳細を確認できる。
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まんま、ゲームのステータスウィンドウである。
試しに、自分のステータスを確認してみる。
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佐藤太一(20・男)
体力: 17/17
強度: 8
速度: 10
魔力: 11/11
闘気: 9/9
〜恒常スキル〜
・羅纏冥加(壱)
……בְ△너●qΣ×д怨T。
〜攻撃スキル〜
・ミニ・フレイム(C)
……半径1メートル以内の任意の空間に、
手のひらサイズの炎を生み出す。
消費魔力1。
〜防御スキル〜
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「うわ、なんか全体的にステが低い。
ポケモ○だったら、御三家の初期ステータスだな。
―――て、なんだこれ?
知らないスキルだし、
めっちゃ文字化けしてるんだが」
恒常スキルに、知らないスキルが追加されている。
『ミニ・フレイム』を貰ったことは知っていたが、『羅纏冥加』は初耳だ。
説明欄も文字化けして、詳しいことは分からない。
「もしかすると、神によって刻まれた記憶の中に何か答えがあるかもしれない」
そう思い、さっそく記憶の中を探ってみる。
しかし、何も情報は出てこなかった。
「人類全体に付与された基礎的なスキル。
もしくは、魔王が付与したスキルのどちらかだな。
まぁ、分からないもんは無いのと同じだ」
俺は気にしないことにした。
とりあえず、『i health』については理解した。
この調子で、他のアプリも確認していく。
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『i data』
〜説明〜
未知のモンスターやアイテムの写真を撮ると、それに関する情報を教えてくれる。
また、倒したモンスターの数もカウントしてくれる。
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「これ、めっちゃ便利だな。
……そういえば」
俺は林の中で見つけた謎の実を思い出した。
このアプリを使えば、あれの正体が分かるはず。
さっそく、林から謎の実を取ってきて写真を撮る。
―――カシャ!
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『マロネの実(C)』
〜説明〜
食用果実。
わずかに魔力が回復する。
シュミル地方の竜人族が好んで食べる。
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「食用なのは嬉しいけど、龍人って。
なんか、ネタバレくらった気分だな」
竜人という響きに好奇心をそそられるが、存在を知ってしまった以上、将来、彼らと出会ってもそこまで感動できなくなってしまった。
複雑な気分になりながらマロネの実を少しかじる。
「……うま」
バニラアイスのようなまろやかな甘み。
食感はバナナに似ている。
市販で売ってたら、入店早々、速攻でカゴに入れるレベルの美味しさ。
好きだ。
気に入ったので、2個追加で収穫した。
握り拳2つ分くらい大きいので、これだけあれば十分だろう。
マロネの実を楽しみながら次のアプリを起動する。
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『i bank』
〜説明〜
金(G)やアイテムを保管できる。
また、アイテムをGに変換できる。
〜補足〜
アイテムに触った状態で「keep」と唱える。
→アイテムポーチに転送。
モンスターの素材は、討伐後に自動で転送。
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『i bank』は、アイテムポーチ兼換金所の役割を担ってくれるらしい。
それが分かったら、さっそく実践だ。
「keep」
まだ食べていないマロネの実を手に持って、言われた通りの呪文を唱える。
―――シュッ!
すると、マロネの実が一瞬で姿を消した。
そこでスマホを確認すると、
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『アイテムポーチ』
・マロネの実 ×1
(保存期間:5日)
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ポーチ欄に、マロネの実が追加されていた。
「じゃあ、次はこれを売却して……」
マロネの実を選択、売却ボタンを押す。
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所持金:100G(+100)
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100Gで売れた。
それがどれほどの価値なのか分からないが、ひとまず金を稼ぐ方法は分かった。
あとで、林になっているマロネの実を半分ほど金に変えよう。
全部採るのは卑しいので、半分は残す。
この調子でアプリを全部確認する。
しかし、
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『i tube』
〜説明〜
動画を撮影、投稿できる。
再生数に応じて、Gが手に入る。
※現在、利用不可。
特定ダンジョン内では利用できません。
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『i board』
〜説明〜
ネット掲示板。
ユーザー同士で自由にチャットができる。
※現在、利用不可。
特定ダンジョン内では利用できません。
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『i ranking』
〜説明〜
ランキングを確認することができる。
総合ランキング、討伐数ランキングなど様々なランキングが存在する。
毎月、ランキングに応じた報酬が手に入る。
※現在、利用不可。
特定ダンジョン内では利用できません。
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「特定ダンジョンでは利用不可……。
ということは、俺って今……」
嫌な予感がする。
そこで、最後に残ったアプリを起動する。
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『i map』
〜説明〜
現在地や転移装置、アイテム交換所の位置が分かる。
〜現在地〜
『星画天蓋』(☆2ダンジョン)
第6階層・セーフエリア
※ダンジョン内はマップ表示できません。
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どうやら俺は、ダンジョンに囚われているらしい。
※補足
このダンジョン内は通信圏外です。
そのため、中にいる人のランキングは変化しません。
外に出れば、ステータスの変化が反映され、ランキングの変動が起こります。




