ギルド
この物語はフィクションです、実在の人物や団体とは関係ありません
「」で囲まれた箇所は口に出した言葉、
『』で囲まれた箇所は心に思った言葉、になります
カインとアーレンは敢えてギルドにやって来た。ギルドの建物内は普段にない緊張感で満ちている。
「お前達は冒険者だな、ジョブは何だ?」
男からカインとアーレンの二人は乱暴に声を掛けられた。男は国の人間である。アーレンの鎧姿を見て男は二人を冒険者と判断していた。
「私は剣士です」
アーレンが答える。
「剣士か…」
男は意味ありげな顔をした。
「外套を着たお前は魔法使いじゃないだろうな」
男がカインを睨むとカインは外套を脱ぐ。
「僕は騎士です…」
カインは剣を携えて鎧を身にまとっていた。鎧を着たカインは筋肉質に見える。特に胸板が分厚い。
「お、おぅ…」『オドオドした態度の割に随分とゴツい体だな』
男は呆気に取られている。
『剣士と騎士なら問題の二人組ではないか…』「念の為に荷物を見せろ」
男に言われてカインとアーレンは荷物を見せた。カインの荷物に不審な物はない。
「ん、どうして剣士の荷物に魔導書があるんだ?」
男がアーレンに指摘する。アーレンの荷物の中にはカインから贈られた回復魔法の魔導書があった。
「使わないというので知り合いに譲ってもらったんです」
アーレンは男に答える。嘘は吐いていない。知り合いが隣にいる夫のカイン、贈られるという形で譲られた、だけである。
「貸して下さい」
アーレンが魔導書を手に取って開くと押し花が挟まれている。
「ウォータンド国で男から女へ贈る慣習がある水涙花という花です」
「持ち運ぶ為に押し花にしました」
アーレンは男に説明した。やはり嘘は吐いていない。
『女に花を贈る為に持ち運んでいるのか…こういう男がモテるのかね』
男は勘違いしている。アーレンは「贈る為」と言っていない。
「なるほど…持っている魔導書がこれだけって事はそういう事なんだろう」
男は納得する。
カインとアーレンは検問を擦り抜けた。ギルドへ魔石を提出して報酬を得る。
「無事に報酬を得る事が出来たな」
「はい」
カインとアーレンはギルドを後にした。