↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/30

第13話 基地での立場

 エプロン上で待機していると、エディから声がかかった。


『整備班から誘導信号を受信しました』


「研究所の?」


『はい。先行して到着しています』


 画面上に経路が表示された。基地本体から少し離れた場所に、新しい格納施設が見える。


「あれか」


『はい』


 格納庫前では、見覚えのある整備員たちが待っていた。誘導灯に従い、スタンリーは《誉》をゆっくりと進める。


『収容位置を表示します』


「普通の機体みたいに降ろせないもんな」


『脚がありませんので』


「分かってるよ」


 《誉》は高度を落とし、そのまま格納庫へ入った。所定の位置で静止すると、整備用の固定装置が機体を保持する。


『固定完了』


「よし」


 降機の手順を終えてコックピットを出ると、整備班の一人が近づいてきた。


「お疲れさまです。《誉》はこちらで確認しておきます」


「頼む」


「武装と消耗品も搬入済みです」


「博士、うるさかっただろ」


「穂先の数まで何度も確認されました」


「……想像できる」


 スタンリーが機体を振り返る間にも、整備員たちは作業に取りかかっていた。


「それと、基地司令がお待ちです。準備ができましたら、司令部へ向かってください」


「分かった。どこへ行けばいい?」


「案内の方が来ています」


     *


 司令部へ案内されたスタンリーは、扉を叩いて返事を待った。


「失礼します」


 室内には二人の軍人がいた。一人は机の向こうに座る年嵩の男。もう一人は、先ほど《誉》を見上げていた男だった。


「スタンリーだな。基地司令のハメル准将だ」


「スタンリーです。マーチン研究所から来ました」


「よく来た。こちらはエリアス中佐だ」


「人型機動兵器部隊を預かっている。よろしく頼む」


「よろしくお願いします」


 エリアスはスタンリーを一度見て、頷いた。


「さっきの黒い機体の操縦士か」


「そうです」


「……なるほど」


「何ですか?」


「いや。もっと変なのが来ると思っていた」


「機体の話ですか? 俺の話ですか?」


「両方だ」


「……ひどいな」


 ハメルが軽く咳払いし、椅子を勧めた。


「まず、この基地での立場を説明する。博士からは何と聞いている?」


「所属は研究所のまま。作戦上の要請は、研究所と調整したうえで受ける、と」


「その通りだ。試験内容や機体の管理、運用の判断は研究所側にある。軍の指揮系統には入らない」


「現地での連絡は、どなたに?」


「エリアス中佐が窓口になる」


 エリアスが頷いた。


「こちらの作戦区域や友軍の配置は共有する。お前も、どこで何をする予定かは知らせてくれ。互いの動きを邪魔しないためにな」


「分かりました」


「協力を頼むことはあるが、可能かどうかはそちらで判断してもらう。できないことは、できないと言ってくれればいい」


「それは助かります」


 ハメルが机上の資料へ目を落とした。


「基地内での待遇は、大尉相当とする」


「……大尉ですか?」


「正式な階級ではない。宿舎や食堂、施設の利用などについて、同等に扱うということだ。必要な作戦会議にも参加してもらう」


「部下がつくわけではないんですね」


「つかん。待遇を理由に、兵へ命令できるわけでもない」


「分かりました。研究所の操縦士のまま、ここで生活して、一緒に作戦へ出る、と」


「そういうことだ」


 スタンリーが頷くと、ハメルは基地の配置図を広げた。


「次に基地の体制だ。人型機動兵器部隊は二個中隊。一個中隊十二機で、計二十四機を配備している」


「全部、すぐに出られるんですか?」


「いや。整備中の機体もあれば、操縦士の休養もある」


 エリアスが答えた。


「常に二十四機を出せると思わないでくれ」


「なるほど」


「ほかに戦闘機や地上車両、防空部隊、歩兵もいる」


 ハメルが配置図の各所を示した。


「基地全体の指揮は私、人型機動兵器部隊はエリアスが担当する」


「中隊長は、別にいるんですか?」


「ああ。一方の中隊を率いているのがシェパード大尉だ」


 エリアスが答えると、スタンリーは顔を上げた。


「さっき、一緒にいた人ですか?」


「見ていたか」


「こっちも見られてましたから」


「だろうな」


 エリアスは少し笑った。


 説明が一段落すると、ハメルは資料を閉じ、スタンリーを見た。


「最後に一つ。実戦は初めてだと聞いている」


「はい」


「訓練と違って、こちらの都合で止めることはできん。敵は、お前の身体数値を見て手加減してはくれない」


「……そうですね」


「試作機の実戦データを取る話は承知している。だが、初日から限界まで試そうとは思うな。まずは現地の状況と、味方の動きを覚えろ」


「分かりました」


「そのうえで働いてもらう。そして、戻ってこい」


 ハメルは続けた。


「人も、機体もだ」


 スタンリーは少しだけ笑った。


「博士と順番が逆ですね」


「何の話だ?」


「いえ」


 スタンリーは姿勢を正した。


「了解しました」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。