序章 深紅の王座、若き覇王の即位
雷鳴がとどろき、激しい雨が王宮の瓦を叩き割らんばかりに降り注ぐ夜だった。
異母兄たちとの凄惨極まる王位継承争いの果てに、当時27歳だった黎央は、血に染まった大殿の階段を一段ずつ踏み締め、玉座へと辿り着いた。
先代の崩御に伴い、朝廷の権力を我が物にしようと画策していた門閥貴族たちは、生き残った最年少の王子である黎央を「扱いやすい傀儡」にしようと目論んでいた。しかし、深紅の帳が垂れ下がる王座に腰を下ろした黎央の瞳を見た瞬間、並み居る宿老たちは一斉に背筋を凍らせた。
そこにあったのは、若者に似つかわしくない、すべてを焼き尽くすかのような冷徹な覇気の光だった。
「本日を以て、私がこの国の唯一の主である。異論のある者は、今すぐこの場で首を差し出すがいい」
低く、しかし大殿の隅々にまで響き渡る声。その足元には、最後まで抵抗し、黎央の手によって直接切り伏せられた異母兄たちの鮮血が、未だ川のように流れていた。朝廷を牛耳っていた右丞相や兵部尚書らも、その圧倒的な武力と、一切の容赦のない決断力の前に、ただ平伏して言葉を失うしかなかった。
こうして黎央は、誰にも心を開かぬ孤独な覇王として即位した。しかし、血の粛清によって築かれたその王座はあまりにも冷たく、彼の魂は、凍てつく闇の深淵で常に乾き、飢え続けていたのだった。




