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純白のギャンブラー~王都カジノの少女賭博録~  作者: レブラン
5章

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69話 幹部会議と、新たな舞台

 選定戦から一夜明け、昨日の劇的な余波もあり、カジノ『セブンズミラー』の集客率はいつも以上に高かった。多くの客が、興奮冷めやらぬカジノへ期待に満ちた顔で来訪していた。

 そんな中、ギルドの奥深くにある一室では、リーシャを筆頭にダリオ、ムエルニ、ルクス、ライネスの五人がテーブルを囲んでいた。まさに幹部会議といった厳粛な空気が漂っている。


「私が復権しましたので、これまでと変わらずビシバシいきますの」


 ムエルニは腰に手をあて、勝ち誇ったような笑みを浮かべている。服装は一般職員の黒い制服ではなく、以前着用していた鮮やかなピンクのドレスに身を包んでいた。その派手やかな姿は場の厳格な空気をより際立たせていた。


「おいおい、それじゃあ見た目と同じで前と変わらんぞムエルニ」


 苦笑まじりに口を開いたのはダリオだ。


「分かってますの。私だってそこまで馬鹿じゃないわよ。だけど、恨まれようと誰かがしなくちゃいけないの」

「まあ確かにそうだが。厳しいだけじゃ皆は疲れちまうぞ」


 そんな二人のやり取りを見て、ライネスがダリオの背中を豪快に叩いた。


「いいじゃねえか。俺様はそのままのムエルニでいいがな。お前が優しく教えてるのを想像するなんて身震いが起きるぜ」


 ダリオはやれやれと肩をすくめ、呆れたようにため息をついた。


「あ、あのぉ……か、会議始めませんか?」


 そう言って、オドオドしながら手を上げたのはルクスだった。


「ああ、そうだな。てかルクスお前も参加するとは思ってもみなかったぞ?」

「そうだな。この前の選定戦の最中もちゃんと出てたし意外だぜ。お前はこういう場には一切出ないと思っていたが」

「わ、私も今のままだとだめだと、お、思っていたので」

「そうか、良い変化だな」


 これまで表に立たず、裏方としてギルドを支えていたルクス。この変化がフェルと出会った影響なら、とダリオは心の中で感謝した。


「さて、雑談は終わりにしましょう。これからのセブンズミラーの運営方針について」


 リーシャの低く通る声が響くと、全員の背筋が伸びた。


「その前にまずは、幹部であるあなた達の役割を改めて伝えましょう。これは再認識の確認でもあるわね」


 リーシャは静かに、一人ずつ視線を射抜くように向けた。


「この場にいないリベルは皆知っての通り、騎士団の隊長であるため王国仕事が主。ただし、連携として今後も変わらず私たちと手を組む立場にあるわね」

「あいつと組むとしたらライネス、お前が多いんじゃないのか?」


 ダリオの疑問に、ライネスは腕を組みながら「さあな」とぶっきらぼうに返事をした。


「そもそも、これまであいつと組むってことは少ないぞ」

「そうなのか?」

「ああ、俺様は確かにギルドに関しての内部外部に対しての揉め事専門には解決するが、あいつは基本的に国に対してだろ。規模がそもそもちげえよ」


「ええ、ライネスの言う通りよ」リーシャはそう役割の違う旨に同意した。


「ただし、国と私たちのギルドに繋がりがある事件ならライネスに出向いてもらうわよ」

「まあそこは分かってるよリーシャ。そうお前との契約したからな」


 続いて、リーシャの視線はルクスへと移った。


「次にルクス。あなたね」

「は、はい!」

「これまで通り、ギルド内の点検、検査、修繕行ってちょうだい。もし必要であれば、職員達の立ち入りは制限させるわ」

「あ、ありがとうございます」

「それから、選定戦で使っていた魔法とゴーレムなのだけど。とてもよく出来てたわ。期間が短かったとはいえ流石ね」

「い、いえ。リーシャ様が事前に提案していた物があったのと、以前使用していた魔法の応用があったから出来たんです」

「特にゴーレムは良く仕上がっていたわよ。また形状変化も兼ねて相談させてもらうわね」

「は、はい。任せてくだしゃい!」


 噛んでしまったルクスに、ダリオが優しく言葉を添えた。


「ルクス、俺からも礼を言うぜ。本当あの時はありがとうな。無茶ぶりにも付き合ってもらえて助かった。選定戦上手くいったのはお前のおかげだ」


 ルクスは顔を伏せ、髪の隙間から照れくさそうに、けれど誇らしげな表情を覗かせた。


「ルクス、この男は本当無茶なことをするのですから、次から無理なら無理とハッキリ言い返せばいいですの」


 ムエルニが横から口を出す。


「え、え、え。い、いえ私も頑張らなくちゃと思っていたので……」

「そう、ならいいのだけど……もしまた無茶な要求なら私に言いなさい。幹部となった私がとっちめてやりますの」

「なら私の頼み事も、ムエルニあなたが私をとっちめるのかしら?」

「い、いえリーシャ様のお考えは私には到底思いつかないようなことなので……その、あの……」


 焦りまくるムエルニに、リーシャは「ふふ、冗談よ」と、悪戯な少女のような笑みを向けた。


「さて、次にムエルニあなたね。以前あなたが担当していたのと変わらないのだけど、わかるかしら?」

「はい、私の役割はギルドの資材担当であり、ギルドに必要な物品などの手配ですの」

「その通りよ。あなたが抜けた時の穴はダリオが埋めていたから、引継ぎはしっかりやりなさい」

「はいですの!」

「次にリベルと同じくここにいないクロウズ。彼は対外戦での戦力よ」

「そういや、あのおっさんは大博打大会の日程とか決まったとしても、どうやって知らせるんだ? こっちから知らせに行こうとしても居場所わからんだろ」

「知らせなくても彼は戻ってくるわよ。感は鋭いのよ」


 リーシャは事もなげに言い放った。その絶対的な信頼の裏打ちに、ムエルニもダリオもルクスも、何かを言いたげな表情を浮かべる。

 放浪癖のあるあの男をただ「待つ」という方針には不安しかないはずだが、主であるリーシャが断言してしまえば、それ以上に食い下がる術を彼らは持っていなかった。三人は顔を見合わせ、言葉を飲み込むようにして口籠った。

 そんな微かな不穏さを一蹴するように、リーシャは視線をダリオへと戻す。


「最後にダリオ。少しの間とはいえ、あなたはムエルニの空いた席を穴埋めしてくれたことには感謝してるわよ」

「まっ、この中だと俺しかできないから仕方がない。資金管理による資材調達も似たようなもんだしな」


 こうして幹部それぞれの役割が改めて共有された。

 次に上がった議題は不人気台の撤去と、ミニ競馬のような魔法を使う新台の増加による新規開拓。従業員の待遇改善などだが、事務的な議題が手際よく片付けられていく。しかし、それらはあくまで前座に過ぎなかった。


「さて、次に皆気になっているでしょう大博打大会の件ね」


 リーシャがそう話を切り出すと、空気が一変した。

 その場にいた全員が、次のステージへ進む緊張感を感じ取った。


「前回の事は知っているわね。ムエルニ」

「前回の大博打大会は国王が選抜した『セブンズミラー』、『ブラックローズ』、『トワイライト』の三大ギルドにてギャンブルによる頂上決戦を行った結果、『セブンズミラー』の勝利に終わったはずですの」

「正解よ。ただ、今回のは少し違うわよ。セブンズミラー、ブラックローズは問題なく選出されるのだけど、『トワイライト』ではなく『黄金遊戯会』が選出されるわね」

「確かに、あそこは今一番勢いついていると聞いてますの」

「質を高めているって話だし。まあここよりも客層はいいわな」


 ダリオが冷めた分析を付け加えた。その言葉にムエルニがムキになって言い返す。


「ダリオ、確かにそうだけど。セブンズミラーだって悪くないはずよ」

「そうかねー。地下ギャンブル場はまだしも、1階はそうとは言えなくね?」


 ダリオの容赦ない指摘に、ムエルニは顔を真っ赤にして鋭く睨みつけた。一触即発の空気が流れる中、その重苦しさを打ち消すような野太い声が響く。


「おいおい、今は大博打大会についての話だろ。お前ら二人がまた揉め始めてどうすんだよ」


 呆れたように口を挟んだのはライネスだった。

 彼女は大きな身体を椅子の背もたれに預け、小競り合いを続ける二人を宥めるように視線を向ける。


「そうでしたわね。私としたことがダリオの話術にまんまとハマりましたの」

「いや、まあいいや続き言ってくれ」


 ダリオはヒラヒラと手を仰ぐように次の話へと促す。


「そうね。聞いた話では各ギルド代表三人を選出して。挑むと言った感じかしら」

「三人……ならリーシャ俺を選抜メンバーに選んでくれ」

「私もですの。リーシャ様」


 二人は意気込むように名乗り出た。選定戦という身内だけの大会とは異なり、外部の大きな大会である。それに昨日の件でユエルに対する屈辱的な思いは、二人とも共有しているらしい。


「二人ともやる気は十分なのは分かったわ」

「なら」

「けどダメよ」

「どうしてだよ!」


 即座の否定に、ダリオは思わず立ち上がり抗議する。

 諭すように、リーシャは指を立て説明し始めた。


「理由は二つ。一つは、二人とも個人的にユエルに対して怒りを向けている。個人的なものなら勝手にしたらいいわよ。けど、その怒りが他のギャンブルに対してポテンシャルが発揮できるかしら? これならライネスやルクスを出したほうがマシよ」


 ダリオは反論の言葉を飲み込み、大人しく椅子に座り直した。また、ムエルニも言い返さずに唇を噛む。

 二人ともに自分達が感情的に囚われている自覚はあるのだ。


「二つ目は――もう選出させるメンバーは決定しているわ」


 リーシャの声が、会議室に冷たい衝撃となって響く。


「一人目は私。二人目はクロウズ。そして、三人目はフェルよ」


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