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純白のギャンブラー~王都カジノの少女賭博録~  作者: レブラン
4章

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51話 余剰資金22の命綱

 現在の表記はスロット▼10、ブラックジャック▼2、ポーカー▼2、バカラ▼2、ミニ競馬▼0、ダイス▼0。

 賭けた台を合計すれば59、いや2.0倍なので118減り、現在の資金は282まで減った。

「どうして」呟きながらムエルニは思考を加速していた。

 そうして一つの結論にいたった。


「資金がこんなに減って、今すぐ回収しちゃいます!」


 ユエルが回収ボタンに手を出そうとしたら、ムエルニが事前に止めた。


「それだけは、絶対しちゃダメ! 今すぐ全資金――10、いや20残しでいいからどれでもいいから全額投資して」

「……それだと、またなにかあったら」

「ミラン、それでもいいの。いいから早く!」


 ムエルニの顔は蒼白になり、その声には悲鳴にも似た切迫感が混じっていた。

 あたしは即座にブラックジャックに資金の260を投入した。

 残り余剰資金はたったの22。


「ブラックジャックに入れたよ」


 その言葉にムエルニは安堵したのかユエルから手を離して床に座り込んだ。

 ギャンブル台の全数値は、未だ変わらず横ばい。


「急に数値が低くなったのもビックリしたっすけど、ムエルニどうしたんすか」

「ごめんなさい。懸念点を忘れていたの」

「懸念点?」

「ええ、このギャンブルはギルド全体に説明されるって言ってたわよね」


 ミランはムエルニの言う意図がなにかに感づいたのか、「……まさか」と言って、目を大きく見開いた。

 だけどあたしとユエルはいまいちピンと来なかった。


「ミラン、あなたにも分かったのね。そう数値の変動は、このギャンブルの説明よ」

「説明っすか?」

「ええ、このギャンブルはまだこの会場で説明した時には、まだ開催しているのを知らせていなかった。だけど、あいつが言うにはギルド全体で映像が映ると」


 ムエルニの説明でようやく、あたしの中で合致した。


「そこで、皆があたしたち、いえ会場の様子を一斉に見ると」

「フェルその通りよ。こんな催しが開催されるんですから、私ですらギャンブルは一旦中止にして画面を注視するの」

「だから注目度があれだけ下がったんだ」

「そうね。その際に、私たち以上に賭けていたチームの余剰資金が底を尽き脱落したと」


 運が良かったというべきだろうか、いや違う。ムエルニの判断が良かったんだ。

 こうなることを事前に察知して、余裕をもたせるように残しておいたムエルニはすごい! 


「これ以上は資金は減らない。ただ次の問題があって、注目度の回復」

「……説明を聞き終えた客はどれだけ他のギャンブル台に視線を集めるか」

「ええ、天井の見極めね」


 そう言いながらミランに差し出された手を取り、ムエルニは立ち上がる。

 あたし達は数値に注目していた。

 未だ変動のない数字。


「そういえば5チームは落ちたけど、あと11チームだよね?」


 あの場にいたのは16だったはず。

 あたしの疑問に答えるようにミランは横に首を振る。


「……1体減って10チーム」

「あ、そっか。ラングレーさんかぁ」


 確か約30人だったはずだし、あれでだいぶ人数減ったのかな?

 競争とはいえ、このギャンブルは結構熾烈を争いそう。


「それにしても自分がやるなら、あの敗退宣言のあと行動はせずというか、すぐに回収して様子見っす……」

「仕方がないわよ。あんな緊迫した状況なんだから。たまたま気づけたから良かったものの、気づけなかったら出遅れていたと思うの」

「……とりあえず様子見」

「そうね。ここから上がっていくのは確実でしょうし待ちましょ」


 しばらくして、全部の台の数値が息を吹き返すように上がっていく。

 現在の表記はスロット▲70、ブラックジャック▲20、ポーカー▲25、バカラ▲18、ミニ競馬▲15、ダイス▲10。


「全体的に上昇傾向ね」

「危険水域から脱出したっすね」

「ええ、あんなものがそうそうあってたまるものじゃないの」

「……油断大敵」

「そうね。ミランの言う通り、今はこうして安心しててもなにかあるかもしれない」

「そうっすか? このまま放置してても上がっていきそうっすけどね。フェルはどう思いますか?」


 あたしはムエルニの考えに賛同できる。

 だけど、このまま放置してても、あたし達みたいな低い数値から上手く賭けられたのが大きいのだから、良い所で回収すれば結果的に1位になれるはず。

 その意味でならユエルにも賛同できる。


「確か3人の言う通りなにか(・・・)はありそう。だけど、現状はこのままが一番いいんじゃないかな?」

「そう、フェルあなたがそう言うならその通りなんでしょうね」

「ムエルニの言う通り、なにかがありそうなのは確か。だけど現状考えてしまっても仕方がないと思う」


 無難に言うしかなかった。

 下手に伝えると疑心暗鬼になりかねないからだ。

 ムエルニは考え込むも「そうね」と言った。

 しばしの安寧と休息をあたし達は数値を見ながら考え込んだ。


『各参加者に告げる』


 ゴーレムからそう聞こえるのはダリオさんの声。


『先ほどは、急なことで疲れただろう。そこで贈り物をやろうと思う』


 ドームの中に入ってきたのは数体のゴーレムだった。

 手には長い木の何かと飲み物が入ったものを持ってきてくれた。


『ゴーレムに持たせたのは折り畳み式の椅子とジュースだ。椅子は広げると形になるから、そこに座ってくれ』

「やるわねあいつ」

「……ああ」

「早速広げて使いましょう」


 折り畳み椅子を広げると、丁度良い高さで座れた。

 ゴーレムからジュースを貰うと、任務を終えたのか、そのままドームから出て行った。


「美味しいっすよこの飲み物」

「……確かに」

「ええ、喉も渇いてたから余計に美味しく感じるわね」


 あたしも皆と続けて飲んでみると、口の中に果物のような甘味が広がり、喉越しも良くとても美味しい。すぐに飲み干してしまいそう。

 皆、顔が綻びにこやかになっていた。

 あたしもそうなっているのだろう。


『さて、各人休憩しながら聞いてくれ。今後のイベントについてだ』


 イベントってなんだろ?

 ムエルニとミランに視線を向けると、二人はすでに嫌な予感を顔に浮かべていた。


『まず一つの球が消えたよな? その次の球が消えたときイベントは開催される。それはなにかと言うと、特定のギャンブルを1.5倍チップを参加者に支払うと言うものだ』

「はぁ!? ありえないわよそんなこと」


 ムエルニは思わず立ち上がった。


『それがありえるぞムエルニ』


 ゴーレムに触れていないムエルニの顔から、ダリオは彼女が何を考えているのかを正確に読み取っていた。


『俺も最初はこのままどうするか迷ったが、今日は選定戦の一大イベント。せっかく盛り上がるならってことでリーシャに提案したら通った』


 開いた口が塞がらないとはまさにこのことだった。

 リーシャ様が許可したのだからムエルニはなにも言い返せず、黙り座った。


『まあ、何のギャンブルが1.5倍になるかは時間になれば教える。事前に知りたいなら情報ダイスを使えよ』


 そうしてダリオさんの声は沈黙した。

 ムエルニとミランは大きくため息をついた。


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