54 火遊びもほどほどに。
シーーン。
呼吸の音も、時計の音も聞こえない(この部屋に時計はない)なかで、場は静まり返ってる。
思わず立ち止まり固まった私に罪はない。ええ。
「………取り敢えず、一つ」
スッと不機嫌そうに目を細めたユウは、語りだした。彼も大概、自分勝手だ。
「僕の身の上の最終決定権は、僕にあります。よそでこそこそ話し合うのはやめていただきたい。不快です」
そう言い切った後、思い出したように彼は付け足す。
「………痴話喧嘩も大概に」
………すみません。
居たたまれない上に気まずいため、私は頃合いを見計らって部屋から出る。逃げたと言っても良い。
……後は任せました、殿下。
「お世話になってます、殿下」
「あ、ああ」
「用があって参ったのですが、邪魔をしてすみません」
「い……や、…大丈夫だ」
気まずいが、ここでそれを言うわけにもいかないだろう。
こちらが心情を整えているうちに、向こうは喋りだした。
「公爵から手紙を預かってきました」
…………。
「……わかった」
「それから………殿下、火遊びもほどほどに」
そう言ってさっさと部屋から出ていった。
……とんだ爆弾を投下していったものである。
なんと言うか……独特のリズムを持った姉弟だ。
今後を今度こそしっかり見通そうと誓いつつ、俺はそう思った。