53 はぁ?
………え………?
私はポカーンと、間抜けな顔をしてしまった。
勝手な彼に文句を言って、秘密を吐いてもらおうと思って会いに来たのに。
いつの間にか彼のペースになっていることに驚きつつ、なんとなくぼうっとしてしまう。
だが、だんだん表情は引き締まり、仕舞いにはきっと青筋さえ浮かべた、ひきつった顔に変わっていっただろう。
好き?
私を?
殿下、が?
……怒られるのに耐えかねて口説きだしたのなら、見上げた根性をしていると思う。
場を和ませるための冗談なら、彼は随分鈍感な男だということになる。もう少し空気を読むべきだ。仮にも王太子なのだから。
というか、全く笑えない。
婚約者が愛し合ってるとか、どこの夢物語なのかと言いたくなる。
いや勿論、愛に生きた人々を否定する気は無いけれど。
「……無表情で考え込むな」
「…………えっ……あ、はい……」
完全に意識が飛んでいた。
まぁ私みたいな人間にとってみれば、無理ないが。
どうやら、青筋を立ててたのは殿下の方だったようだ。
告白相手にまるっきり存在を忘れられれば、まぁそうなる。
「………いつから、です?」
とくに動揺することなく、疑問がすぐに口から出た。
うん。私はこういう女なのだ。
「………わからない」
はぁ?
「じゃ、どこが好きなんです?」
「…………顔……?」
ええぇ……そんなんで告白してきたんですか?
テストなら、落第点どころか退学もあり得るくらいのレベルなんですが。
……駄目だ。
はぁ、こんなときにこんなこと考えてる私も私だが………職業病というかなんと言うか………。
「解答、本当にそれで良いのですか?」
「いや………すまない。なんか………こんがらがってきた」
あ、わかります。
「……今日はお開きにしましょう」
「……そうだな。この話は、また後日」
「手紙の件もです。お忘れなく」
「…………………ああ」
というわけで帰路につくために席を立ち、扉を開けたところに………ユウがいた。
言いたくない。じつに言いたくない、が………。
なんか、嫌な予感がする。




