21 偉い人だったんだなー
馬車に乗り込んで十五分ほど経ったころ、学園に到着した。
私は一般生徒ではないので、職員室の方へ向かう。
実は、私はこの学園に来るのは初めてなのだ。
採用試験はないし、面接はないし。
ハッキリ言って、履歴書を送っただけだ。
…こんなに簡単に入れて、大丈夫なのだろうか…。
最近流行りだという"ぶらっくきぎょう"だったりして…。
まあ、私が簡単にここに入れたのは、公爵家の威光もあるのだが…。
なんて考えている間に職員玄関らしき所にたどり着いた。
えーっと…?ここの扉をノックすれば良いのかな?
コンコン
「あ、いらっしゃーい」
若い女性が扉から出てきた。
「こんにちは。私は…」
「ああ、貴女は新米先生かな?女の子のほうは確かルラーナ公爵家の子?」
「はい、アルルベッド・ド・ルラーナです」
笑顔で名乗ったら、女性は少し驚いた様子を見せた。
「どうしました?」
「ああ…いや、かなりフランクに話したものだから。てっきり、無礼だなんだ騒ぐと思ってね」
「そんな下らないことで怒りませんよ。と言うか、やって騒がれると思っていたことをわざわざやったんですか?」
「貴族の子供にはたまに世間知らずもいるの。でもここで先生をやるにはそれじゃ駄目だから。洗礼みたいなものだね」
「洗礼と言うより、変な態度を取りでもしたら、家へ帰ることになりそうな雰囲気を今の言葉から感じましたけど」
女性はまた驚いた様子を見せた。
「貴女、随分ハッキリとものを言うね。気に入った」
女性は佇まいを直した。
「では、改めて。私は学校長のサラ・ド・カナヨルタだ。よろしく」
「こちらこそ」
学校長かぁー。偉い人だったんだなー。
そんなことを思いながら、私は差し出された手を取った。