幕間 あなたのいない世界は…[後]
すっと明るい光が消え、止むと。
どこか知らない場所へいた。
「………メルサ嬢、ここは………?」
「ちょっと、どこよここは!?」
知らないらしい。
………彼女によって起きたらしいことなのに?
ついてきたユウラムらしき蛇も、『何やってんだ』と言わないばかりの目をしている。
「やあ、みんな。元気かな?」
どこからともなく声が聞こえて顔を上げると
「………ルラーナ公爵?」
「ご無沙汰してますね、殿下」
ニッコリと侮れない笑顔を浮かべた。
なぜ、彼がここに?
………いやいいのか? 公爵は少なくとも敵ではないから、事故として見れば、良へ寄るのでは………。
「ちょっと、アルルのお父さん!? なんでここに!?」
…………メルサ嬢。
相手は、この国の宰相で公爵閣下なんだが………できればもう少し言葉遣いを何とか…………いや、言ってることは最もなんだが。
「うん、はじめましてかな? 当代の聖女さま」
「えっ!? なんでそれを!?」
「うーん、みんなから話に聞いてるしねぇ………とりあえずほら、ここにかけてご覧」
――公爵は流石に、言葉遣いごときで怒ることはなかったが………なぜそんな、恐れなくこの人に関われるんだ、メルサ嬢。
そう思いつつ見守ってると、公爵が指し示した方向にソファセットが現れた。
……………は?
「そうはいかないわよ! アルルのお父さん! ユウラムを戻しなさーいッ!」
「………メルサ嬢ッ!」
「…………元気だねぇ」
悲鳴のように声を上げたのは俺、しみじみと呟いたのが公爵だ。
「ユウラムね………ま、戻してもいいんだけど。ちょっとこっちへおいで?」
公爵が現れてから完全に気配を消していたユウラム(蛇)は、公爵へ促されて恐る恐る近づいた。
その彼を引き上げて、公爵はまじまじと見つめる。
「―――まだかな」
「はぁ!?」
『 』
「………なぜ?」
三人で驚くが、公爵は態度を変えない。
「同じ轍は踏ませられないからなぁ。先に蛇にしとけば、魔女は何もできない。ユウラム、君は君のお姫様が魔法を解いてくれるまで、少しだけ待ちなさい」
……意味が、よく。わからないな。
「アルルからの伝言だけ聞いてね。むこうは上々だそうだ。ごめん、本当は直接伝えたかったんだけど、せっかく転移を使うようだったから、こちらから操作させてもらった」
………直接?
………操作?
「………まさか!」
メルサ嬢が叫んだ。
「あんた…………魔女の、手先!?」
「誤解だよ………僕は中立者だ」
ただ、少し微力だけど――
そう呟いた声をかき消すように、ゴゴゴーーーッ、と凄まじい風が吹いた。




