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閑話 南の国を巡る人々[III]

彼女は、ふっと笑った。



「ははっ……バレたか。ついに。」


「………聖女さま」



ポタポタと血が流れる。身体からじゃない。心から、精神から血が吹き出す。


……ここ数年、悪い予感はしてた。防げた戦いはあったのに、病はあったのに、不幸は起こり続けたのだから。


―――目をそらし続けた結果が、今ここにある。



「自責の念に苛まれる必要はない。お前が半端に優秀で、半端に運の良かっただけのこと………なぁ? 南戦争の生き残り」



ガラリと変わった雰囲気。口調。表情。

あんなに綺麗だった目は、虚ろに濁っていた。



「なぜ………こんなことを。アモルも、知っているのですか?」


「もちろん………悪くするつもりは無かったが」



とん、と額を指でつかれると力が抜けた。ガクリと倒れる時見た彼女は。



「方舟に乗る資格があるのは、善良な者だけなのだ」



確かに、泣きそうな顔をしていた。

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