閑話 東の国を巡る人々[Ⅰ]
邪魔者は死んだ。みんな消えた。私と彼女によって、もうじき世界は生まれ変わる。
「……アモル」
「はい」
聖女さまが口を開く。おそらくこれが、最後の号令だ。
「私は今を、過去にする」
「………?」
「美しくて……楽しくて……幸せな、過去。
……………美化された、綺麗な物語に。それこそが私たちの、最終目標だ」
「………聖女、さま?」
「だからアモル………私に呪いをかけてくれ。私の輪廻は、およそ数百年周期で起こる。私は過去を、全て覚えているんだ」
「過去を………?」
それは所謂、前世というものか。
「このまま生まれ変われば、私は恐らく限界を迎える。今世もかなりガタが来ていたからな」
「……お話はわかります。幾人ものご記憶があればきっと、お辛いのでしょう。でも私には、呪いなど掛け方も知りません」
「……確かに、じゃあこうしてくれ。お前はこれから何十年もかけて、"伝説の聖女"の奇跡を伝える」
「………あなたは?」
「……前世で悪逆の限りを尽くした非道の女は、過去と自分の差異に傷付く。苦しんで苦しんで……そして"私"は消滅する」
「………!!」
「これが私の、未来へ贈る歴史だ」
なぜ。
「………どうしてあなたは、自分を追い込むのです。どうして自分を、大切にできないのです」
「仕方がない。私は過去を抱えて生きることに、もう疲れたんだ。だからこそ、こうするために、私は聖女のフリをした。エセ聖女たちの伝説は、世界を巡る」
何でもないように、さっぱりと笑った。この方はいつもこうだ。
「………私がそんなことに協力するとでも?」
「しなきゃしないでいい。私が自分でするまでだ。………けれどできれば、お前に頼みたい。ずっとお前と二人でやってきたから」
狡い。ずるい。
「………お任せください」
「あぁ………頼んだ」
そうしてあなたは、ナイフで自分を殺した。
―――聖女さまは、残酷だ。
遅れました。すみません。思いついたので一気に。
止めはしません、まだ。




