運命はレジ袋が繋いだ。
何もない日に、巫山戯ていたら思いついたものです。
熱が入ってしまったので、こういった形にさせていただきました。
世界からレジ袋が消えたなら____
僕達の出会いは、一枚のレジ袋から始まった。
あの日は大雨、強風という最悪のコンディションだった。
僕は傘を忘れてしまい、ずぶ濡れで街を歩いていた。
すると突然、ふわりと甘い香りがした。
「この香りはなんだろう…」
声に出てしまった。
立ち止まって振り返ると、その女性も同じように、こちらを見た。
「これは、あの…今晩のオカズなんです…」
そのレジ袋から、美味しそうに唐揚げが顔を出した。
僕は思わずそれを覗き込んでしまった。
すると、何故だかお腹が大きく鳴いた。
「あらっ?お腹空いてるんですか?」
彼女は優しく微笑する。
「えぇ、まぁ…これから何かを食べようかと考えていて。」
僕は頭を掻きながら控えめに言った。
「なら、好都合ですね。私一人暮らしなんですよ。」
____その一言が僕達の出会いになるとはまだ誰も知らない。
「では、お言葉に甘えて…」
控えめに微笑む彼女に、僕は惹かれた。
そう、僕達は恋に落ちたのだ。
それからは、この道ですれ違う度に、たわいもない話をするようになった。
オカズの話、天気の話、恰も主婦の話だが、僕は彼女と話すのが楽しみで心の支えだった。
でも、今日は違った。
僕がそこで見たのは、一枚のレジ袋と、プラスチックの容器から出て転がっている唐揚げだった。
「今日は唐揚げだけなの?」
「うん。そうかも…」
そう話す彼女は、どこか元気がなかった。
何か、あったのだろうか。
嫌な予感ばかりが頭の中をぐるぐると回る。
「あのね。エコバッグの普及に及んで…レジ袋が削減されるんだって…」
「そんな…」
僕等のたった一つの思い出の品が消えてきまうなんて。
「そんなの、僕が止める。例え僕が朽ち果てようと、世界が滅びようとも、君とレジ袋は僕が守る」
「治さん…」
彼女は、心配そうに僕のことを見た。
「大丈夫。命をかける覚悟はできてる…」
オレンジ色の空が僕らを包んだ。