3.千種みかん、登場②
仕事をしながら書いているので不定期です。申し訳ありません。
「ごめんなみかん。俺も今年で17だからよ、そういうSFチックみたいなのは卒業したんだよ」
「なんかムカつくな。私は本当に未来からきた、信じてほしい」
「すごいねーみかんちゃんはー。それで本当はどんな理由なのかなー?」
「…………手首の骨」
「オッケーわかった。仮にみかんの言っていたことが本当だとしよう、いや本当だ。だとしても、話が何段階もぶっ飛び過ぎてて全然整理できてないんだが」
信じてあげたいのは山々だが説明が不足し過ぎで信じきれないのが現状だ。
「わかった。じゃあちゃんと話す」
「頼む。………特に俺とあ、ああ、あ阿久比さんを付き合わせるってやつを重点的にお願いな」
「わかった。まず信じてほしいのは私が未来からやって来たというところなんだけーー」
「そこは興味ない。早く阿久比さんと話を頼む」
「…………」
申し訳ないが、みかんが未来から来たとかまったく興味がない。俺は俺と阿久比さんを付き合わせるってところだけが聞きたいんだよ。
人というのは唐突にこの人たちを付き合わせたいとは思わない。俺と阿久比さんをお似合いだと思うからみかんは付き合わせようと考えるわけだ。だからどこをどう見て俺と阿久比さんがお似合いなのか第三者の視点から教えてもら痛たたたたたたたーー。
「痛たたたたたたたっ!?」
考え事をしている間に俺の右腕が勝手に関節技をかけられていた。か、肩が外れるっ!?
「ぜ、ぜひともみかんさんのお話を聞かせてくださいっ!!」
「高蔵寺がそこまで言うなら仕方ないな。いいよ、聞かせてあげる」
みかんが両手をぽんっ叩くと一気に右腕が解放され楽になった。駄目だ、痛すぎて少し泣けてきた。
「…………何かやったよな? いややってないとおかしいよね、この力は?」
明らかに異常だ。
今かけられたこの関節技といい、さっきのゴリラ並の握力といい何かトリックがないと辻褄が合わない。
「やった。ちょっと超能力で間接技を極めてみた」
「ちょ、超能力?」
「うん。見てて」
そう言うとみかんは置いてあった沢山のスプーンを指差す。するとふわふわと一本のスプーンが浮き始めた。
「おいおい嘘だろ」
「触ってもいいよ」
透明なワイヤーとかを使ってスプーンを浮かしていると思い、スプーンの周りを触って確かめてみるが何もない。
「な、何もないな…………」
「これは序の口」
みかんが人差し指をぐるぐるやるとスプーンが先っぽから丸まっていき、最後には渦巻きみたくなったスプーンが俺の目の前に置かれた。
「どやあ」
「どやあじゃねえよ。スプーンをこんなぐにゃぐにゃにしてどうすんだ。まあすごいけど。ちゃんと元に戻しとけよ」
「わかった」
こんなスプーンでは何も掬うことができないしな。それに店のものなんだから壊しては駄目だ。
先ほどとは逆回りでみかんが指を回すとテレビの巻き戻しを見ているかのようにスプーンが元の形へと戻っていった。
「これで信じてくれた?」
「……信じる。俺は実際に見たことは信じるって決めてるからな」
目の前でこんなことされたら超能力が嘘だとは言えないな。
「なあみかん」
「なに?」
「これは人前ではやっちゃダメだぞ。超能力が使えるって言うのも止めとけ」
もしこの超能力が世間知られてしまったらみかんが色々なところから注目されて普通に生活ができなくなってしまう。
「わかってる。未来の高蔵寺にも言われた」
「さっきから未来から来たって言ってるけどよ、どうやって来たんだよ? …………機械とか使ってとかか?」
…………も、もしかしてタイムマシンか!? 机の引き出しから乗るタイプのやつか? それとも車のタイプか? はたまた電子レンジのタイプなのか?
「ううん。機械は使ってない。超能力と根性で来た」
なんだよタイムマシンじゃないのか、ちょっと残念だな。
「未来では高蔵寺と私はマブダチだよ」
「マブダチって…………みかんは今いくつ?」
「14歳」
14歳ってことは中学生か。見た目が小さいからてっきり小学生だと思い込んでたぜ。
「みかんは何年後の未来から来たんだよ?」
「15年後」
15年後だから俺は32、3歳くらいか。
未来の俺は何の仕事をしてるんだろうか? 犬山や勝川とは15年後も連絡を取り合っているのか? 結婚は? 住んでいるところは? まったく想像がつかないな。
「どこで未来の俺と知り合ったんだ?」
15年後の俺が14歳のみかんと出会って友達になる機会があるとは考えにくいよな。
「平日昼間の公園。高蔵寺がブランコで遊んでいた時に私が話しかけて、そこからマブダチになった」
「15年後の俺は何してんのっ!?」
普通に働いていたら平日の昼間に公園にいることはないと思うが…………。
いったい未来の俺の職業は何なんだ?
「未来の高蔵寺は警備員をしているって言ってた」
「そ、そうなのか」
みかんの言葉を聞いて安心した。もしかしたら未来の俺は働いていないんじゃないかと考えてしまったぜ。
「自宅の」
「ニートじゃねえかよっ!」
やっぱり働いていなかったのか。そうだよな、そうじゃないと平日昼間の公園でブランコで普通は遊べないよな。いや、そんなことより。
「な、何で未来の俺は働いていないんだ。まさか不慮の事故とかで身体の調子が良くないとか」
「バリバリ元気って言ってた。病気にもなったことないって」
「じゃ、じゃあ企業の採用試験とかに落ち続けてるとか」
「ううん。今は働く気力がないんだって」
「もう嫌だ。未来は真っ暗だ」
俺の15年後の未来には希望はなく、あるのは絶望だけだった。
何で未来から来た少女にニート宣告をされないといけないんだよ。そんなことになっているなんて知りたくなかった。
『クールでカッコいい美人なあの娘を惚れさせたいっ!~恋愛チキンの俺は好きな人を惚れさせるために、未来からきた超能力少女の力を借りる~』読んでいただき本当にありがとうございます。
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