1.高蔵寺伊織の日常
仕事をしながら書いているので不定期です。申し訳ありません。
<学校>
放課後、フォークソング部の部室。窓から見える桜の木々にはまだ花びらが咲き誇っている。
この部室の窓際の席から俺は桜じゃなくて下校しようといている一人の女子生徒を眺めている。
「…………相変わらずめちゃくちゃ可愛いくてめちゃくちゃ綺麗だなー阿久比さん」
俺が目で追っているのは阿久比志紀波という名前の同学年の女子生徒だ。
二年ほど前から俺は阿久比さんに恋心を抱いている。
しかし特にこれといってアタックをするわけでもなく、遠くから眺めているうちにあっという間に高校2年生の春を迎えてしまっていた。
「伊織ー。さっきから独り言が気持ち悪いから止めてもらっていいかー」
「犬山と同じく。気になってゲームに集中できない」
「…………口に出てた俺?」
「「うん」」
口を揃える二人の男子生徒の犬山と勝川、俺と同じクラスであり友人である。
二人とも俺と同じフォークソング部の部員であり、放課後はいつも一緒にこの活動拠点の部室で駄弁ったり、ゲームなどをして遊んでいる。
「そんなに阿久比のことが好きなら告白すればいいじゃないか。いつまでもこんな遠くから見てないでよ」
「そうそう。早くして来なよ」
軽い口調で言ってくる犬山とその隣でゲームをやりながら適当に相槌を打つ勝川。
「バカやろう。俺みたいなやつが阿久比さんに告白なんてできるかよ」
「まあ阿久比はこの学校で美人ランキングやったらベスト3には入るくらいは美人だからな」
「ベスト3じゃなくてぶっちぎりのナンバー1だからな」
一般的な人から見ても阿久比さんは美人であるのは間違いはない。まあ俺の中ではどの女性よりも一番美人だと思っている。
「王子様ランキングがあったらぶっちぎりだね」
「そうだな。それは間違いないな」
そう。阿久比さんは巷で言われている王子様系女子なのだ。
身長は175センチでスタイル抜群、テレビでよく見るモデルの方とも遜色ないほど手足も長い。
また綺麗な顔の輪郭にショートカットがめちゃくちゃよく似合っている。
前髪はセンター分けにしており、そこ見えるシュッとした整った眉毛が王子様のイメージを与えている。
ポカリスエットのCMとかが絶対似合う。爽やかなイメージがまさに阿久比さんって感じがする。
この見た目に加えて誰にでも隔てなく優しく、頼りがいのある性格もあってか阿久比さんの回りにはいつも女子生徒が集まっている。男子より女子からの方から告白されることの方が多く、週一のペースでされている。
阿久比さんは学校の人気者の一人である。
「王子様で人気者の阿久比に比べて伊織はヤンキーだからね」
「ヤンキー関係ねぇだろ。それに今は真面目だし」
犬山の言う通り俺は中学校の頃、少しだけやんちゃをしていた。
やんちゃと言っても可愛いもので同じ学校で気にいらない先輩の頬に少しだけグーパンチをしたり、他校で同じくやんちゃをしていた生徒と接触ありのじゃんけんをしていただけだ。可愛いらしいものだろ?
その噂が入学して一ヶ月ほどで広がり、俺も高校の人気者の一人になった。
でも俺は阿久比さんに恋心を抱いてからは心を入れ換えて、真面目に生活をしている…………つもりだ。誰も殴ってないし。
「へえ真面目ねえ。高蔵寺、1年最後のテスト赤点いくつだったよ?」
「……………4つ」
「それって何教科あったけ?」
「……………9つだったと思う」
「おいおい。真面目ってなんだっけ勝川?」
「たぶん赤点を取らないように勉強することじゃない?」
「うるせえ。真面目=頭がいいと思うなよ。ともかく俺はもうヤンキーじゃねえ」
勉強ができないから不真面目っていうのは考えが古いと思う。
「…………『鮮血のジャックナイフ』こと高蔵寺伊織」
「ぶはっ! か、勝川、それはズルいぞ」
「ちゅ、中学の時の黒歴史を蒸し返すのはやめてくれよ」
『鮮血のジャックナイフ』
これは俺が中学生時代に自ら名乗っていた異名である。当時はカッコいいと思っていたが、今では黒歴史以外の何物でもない。
今のご時世、黒歴史は一度誰かが知ってしまうと、あっという間に知り渡っていくものであり、今では同学年のほとんどの生徒が俺の黒歴史を知っている状況だ。
もし過去に戻れるのならばあの時の自分に『今はカッコいいかもしれないけど、後々ものすごくダサくなるよ。いじられ続けるよ』と注意換気したいと強く思っている。
「あーやっぱり『鮮血のジャックナイフ』はいつまでも面白いなぁ」
「本当に。これは後世まで残さないと駄目だね」
笑い疲れている様子の犬山と勝川。
「さてと……もうそろそろ夕方アニメが始まるし、帰ろうかな」
そう言うと勝川はゲームを鞄に閉まう。時計を見てみるともうすぐで18時になるところだ。
「そうだな。暗くなる前に帰るかー」
「ほら早く帰るよ『ジャックナイフ』」
「略すな勝川。あと今度俺の黒歴史をいじったらそのゲーム機の画面を指紋でべたべたにするぞ」
「そんなことしたら、伊織の黒歴史をネットにも書き込むからね」
「ごめんなさい。調子乗りました」
「ははっ! ほら早く帰ろうぜ」
教室の鍵閉めをし、三人は下駄箱まで駄弁りながらぐだぐだと夕焼け色の廊下を歩いて行った。
『クールでカッコいい美人なあの娘と惚れさせたいっ!~恋愛チキンの俺は好きな人を惚れさせるために、未来からきた超能力少女の力を借りる~』読んでいただき本当にありがとうございます。
誤字・脱字があったら申し訳ありません。
続きが気になる、面白いと思ってくれた方は感想や高評価、ブックマーク登録の方をどうかよろしくお願いします!
これからも日々努力していきます。