裏切られまして
どうしてこうなった……
神官はその場に立ち尽くした。目の前に転がるのは4つの死体。それらから視線を少し上げれば一仕事しました、といった表情の味方であったはずの一人の少女。
何故だ?
出かかった言葉を神官は飲み込む。
「わたしを連れていって。必ず悪いようにはならないから」
蘇る言葉
少女は、こうなることを知っていたのか?それなら悪いこと、というのはこの4人が死ぬことだったのか。だとしたら、あの時素直に頷いていればこんなことにはならなかったのか。こんな、若い未来ある若者が死ぬことはなかったのではないだろうか。
口から血の味がして神官は思考を中断した。どうやら、知らない間に唇を噛んでいたらしい。そこから出る血に神官は不快感で眉間に皺を寄せる。
「だから、あの時わたしを連れていってって言ったのよ」
目の前の少女が言った。考えていたことを見透かすような口ぶりだ。
「どうして?って顔してるけど、当たり前でしょ。愛してる人を守りたかった。あなた達と同じ考えだっただけよ」
少女は人を死なせたはずなのに何故か正義感や使命感で溢れた顔で言うと、ピクっと反応して後ろを振り向く。
カツンカツンと足音を立て影から現れたのは黒い髪に青い瞳黒い服を着た細身の、美しい男。
すると少女、国一の魔術師、魔女と呼ばれ笑顔やはしゃいだ姿をしたことがなく、冷たい無機物な女だと言われてきた少女が宝物を見つけたような、長い付き合いである神官でさえ聞いたことのない嬉しそうな声、そして始めてみる笑みで彼を呼んだ。
「魔王様!」