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第21話:10:00、校舎内の確認

「…………んんっ!」


 ぎゅっと抱きしめてくる佐藤(さとう)(すず)先生を、抱きしめ返すことも引き離すこともできずにおろおろしていると、双葉(ふたば)さんが咳払い。

 それを合図に、佐藤先生がゆっくりと離れる。


「と、とりあえず、ここから出よう」


 50人ほどの大所帯で体育館から移動する。

 男子と恋人同士の男女はいくつかある避難所の一つ指定避難所の市役所に送っていくことになったが、佐藤先生含む恋人いない女子たちはおれが引き取ることになった。


 あんな事があったんだし、男子がそばにいるとか嫌じゃないのかと聞いてみれば、避難所の方がもっとたくさん男いるでしょって的確なツッコミが。

 で、体育館の地下にも保存食や水などの備蓄があるが、校舎の地下にも備蓄があり、購買や学食で保存している食料を手土産に持てるだけ持っておれの拠点にいきたいらしい。


 新参者になるからね。


 佐藤先生も、ほかの女子たちも、立場はわきまえると苦笑していた。


 でも、そうか。なるほど。


「おれなら、備蓄の品全部持っていける」


 容量無限のアイテムボックスのことを言うと、なにそれずるいと笑っていた。

 嫉妬とかはなさそう。本気で言ってるわけではないのかもしれない。


 警戒しながら校舎内に入ると、魔物はいないが屍鬼はいた。が、わざわざ殺す必要もなく、《死霊操術》からのファーム行きだ。

 校舎内の自動販売機にスキル《解錠》を使用して飲みものとお金を全部取り出し、購買と学食でも食料を全部アイテムボックスに詰めてお金も集める。

 学食のバックヤードには大量の野菜や果物、大型冷蔵庫と冷凍庫に肉や豆腐などの冷蔵・冷凍保存が必要な食材、箱に入ったままの缶やペットボトル飲料がたくさん保管されていた。購買の商品もここに保管されているようで、ノートやシャープペンなどの文房具も大量にあったので確保。

 地下に保存されている備蓄は、水と食料と着替えと毛布を持ち出し用のリュックに詰め込み、避難所に行く男女一人一人に渡していく。

 こんなにたくさん、いいのか? と問われるが、むしろそれだけでいいのか?と問い返す。


 ストレージには武器や着替えなど最大10kgまで収納できる。

 着替えや毛布やタオルなど軽くてかさばる物はストレージに収納した方がと言えば、なるほどとリュックの中身を調整していた。


 大きめのリュック一つに食料と水をパンパンに詰め込んだとはいえ、食料は1週間分で、あとは避難所に頼らないといけなくなる。

 物資をたくさん持ち込めれば、その分だけ対応が良くなる可能性はあるだろうから、無理のない範囲で可能な限り持ち運ぶべきだと主張すれば、男子たちは2つ目のリュックに乾パンやビスケットなどの軽くて量も多い食料を詰め込んでいて、水は生活魔法で何とかすると笑っていた。


 元は男子組にいて、暴走した男子たちに歯向かいボコボコにされていた数人の男子は、暴走を止められなかったと悔いていた。

 みんな大人しそうで、相手に意見を言うことも難しそう。だというのに、麻痺して動けない女子たちを見て、襲いかかろうとする男子どもに立ちはだかり、数分程度とはいえわずかな時間を稼いだ。

 そのおかげでおれが間に合ったのだから、感謝しかない。悔やむ必要なんてない。


 そういう気持ちを上手く言葉にできたらいいのだろうけれども、


「……女子たちを、守っただろ。……勇気ある、行動だ、と思う」


 なんか、どもってしまった。


 でも、助けた女子たちも、男子たちにかっこよかったよと言っているし、彼らは間違ってない。

 助けた女子の数人が、男子に積極的に話しかけている。

 もしかしたら、カップルとか成立するのだろうか。

 それはそれで、いいことだと思う。

 お互いの生存に繋がるのなら、喜ばしいことだろう。


 ……でも、いちゃつくならよそでやってほしい。

 腕にひっついて、顔を赤くしてる男子をからかってる女子を見て、なんだかそわそわする。


 ……嫉妬? 独占欲? 助けたばかりで知りもしない女子のことを?


 ちょっと、自分の感情がよく分からなくなる。



 地下の備蓄物資を収納し終えて、うーん、とうなる。


「平坂くん、どうしたの?」


 東さんがそばに寄って、首をかしげている。


「……うーん、と……。ちょっ、と、付き合ってくれる?」


 ふと思いつき、ほかの人には出発前の休憩と言って、一華(いちか)さんと双葉さんには念のため警戒をお願いする。

 声をかけてきた(あずま)さんと西園(にしぞの)さんを連れて、まずは職員室に移動する。


「それで、平坂くん。なに思いついたの?」


 西園さんは、なんかわくわくしてる。

 大したことではないのだけれど。


「んーと、E-フォンの機能で、カメラを起動、事務椅子をパシャリ」


 E-フォンの画面に、《画像保存》《メール作成》《売却》《ボックス保存》と表示される。

 画像保存とメール作成はそのままの意味。売却はショップに売却でポイントに変換される。ボックス保存はアイテムボックスに保存される。


 今回試したいのは、売却。

 キャスター付きの事務椅子は、ショップでの売却価格30ポイント。3000円相当だ。

 一つ売ってみると、ショップの方で《中古品》が解放された。



  ・各ショップ

   :道具・薬品

   :武器

   :防具

   :銃火器・車両・燃料等

   :衣類・生活雑貨

   :スキル

   :特殊

  ◯:中古品 new!

   :※売却

   :※素材化



 また、自動販売機や購買などから集めた現金をカメラでパシャリすると、1000円札が10ポイントに変換される。


「……校舎内の備品は、売却可能か。そんなわけで、机とかイスとか、アイテムボックスに放り込むとポイントに変換できるし避難所にも持っていけるのかなと。地面や床に座るよりは、イスの方が負担が少ない場合もあるだろうし」


 東さんと西園さんには、学校中の机やイスなどの備品をかき集めて来るから、しばらく待ってほしいとメールをお願いして、各部屋を回りあらゆるものをアイテムボックスに放り込んでいく。

 図書室の本とか、娯楽になるんじゃないかと言えば、2人はたしかにと声をそろえていた。


「付き合ってくれてありがとう。ごめん、あちこち歩かせて」


「大丈夫だよ。有意義な時間だったから。むしろ、ありがとうね」


「そうそう。ポイント集めの手段を知れて良かったよ」


 よかった。2人とも嬉しそうだ。


 できるだけ時間をかけずに移動して備品を回収して回ったものの、合流するまでに30分ほどの時間を要した。

 気がついたこと、できることなど情報を共有して、要第一高校を後にする。


 もう、ここに来ることはないだろう。

 あるとしたら、体育館の地下の備蓄を回収しに来る時だろうか。




 双葉さんたちには、E-フォンでEエヴォリューションN(・ネットワーク)S(・サービス)を利用し最寄りの避難所を調べてもらった。

 避難所は事前に調べていた場所もあるが、最新の情報に更新したかった。

 古い情報に従って行った先が、魔物や屍鬼の巣窟だったら目も当てられないし。


 西区は要第一小学校が避難所になっているが、維持するための物資がそれほど多くはないとの理由から、受け入れは在校生と教師、それらの家族に限定されている。


 (かなめ)市の中央区にある、要駅と要市市役所も避難所になっているが、要駅は駅周辺の店舗の人などが集まっていて、リーダーシップを発揮する人に乏しいようで、治安は微妙なようだ。

 駅職員や企業などの各組織・商店ごとに班分けされている感じで集まっていて、常にピリピリした緊張感があって疲れる。とのコメントがあったという。


 それに対し、市役所は市長を含めた上層部が軒並み屍鬼化して不在で、市の災害救助マニュアルをもとに一般職員が手分けして避難民の対応に当たっているようだ。


 男子たちと彼氏持ちの女子たちは、市役所に行くことを望んだ。

 やはり治安は大事で、少しでも安心できるところに行きたいとのこと。

 自宅と家族も気になるけれど、避難してる可能性もあるからと。

 そうなると市役所に行ってから中学校に戻るのはさすがに効率が悪いので、先に要第一中学校に行き、佐藤先生と高校生女子たちを休ませることに。

 衛生面は、佐藤先生に渡したスキル《洗浄》を定期的に使用していたからそれほど心配は無さそうだったが、あまり眠れていなかったらしく、軽い紹介と部屋割りをして早めの昼食を食べたらほとんどが眠ってしまった。

 佐藤先生も残って中学生組と情報交換するということなので、おれたちは市役所に移動することにした。


 移動中、《要塞》化した中学校の快適さを羨む雰囲気はあったが、残りたいとか移動を拒否するとかはなく、少なくとも表面上は和やかに移動できた。


 ……で、暴走男子に立ち向かった男子たちはこの短い時間で全員見事にカップル成立しており、恋仲になった女子たちは中学校を出る決断をして、彼氏とさっそくイチャついていた。


 恋人同士としては先輩になる高校生男女はニマニマしていて、うちの女性陣は羨ましそうにその様子を見ていた。


 幸せになりなよってのは本音だけど、これからのことは心配だし、なんだかそわそわするのは隠せてないかもしれなかった。


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― 新着の感想 ―
極限状態だからこそ、恋が燃えますよね( ˘ω˘ )
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