第18話:18:00、夕食と、スキルの話
18:00
サブメンバーと居残り組の中学生たちが、《要塞》化した中学校の厨房で、初めて利用する施設機能に四苦八苦しながら夕食を作り終え、みんなで食事をする。
その頃には流鏑馬婦警改め弓削奈月さんも目を覚まし、乙骨優とともに合流し自己紹介を済ませていた。
十分な食事をとり満腹。自室で体を休めていると、眠気に襲われてくる。
今はまだ、寝ている場合ではないので、E-フォンを操作してショップの装備やスキルを眺めていく。
「今必要なのは……これと、これか」
ショップでスキルを見繕い、御剣一華さん、双葉さん、三樹の三姉妹と、弓削奈月さんを呼び寄せる。
「はい、なあに? ……あら、眠そうね。ひざ枕しようか?」
「姉さん。そういうのは二人きりのときにしてね。それで、武くん。どうしたのかな?」
一華さんの魅力的な提案を、双葉さんが一蹴する。
……ん? 二人きりだとお願いしてもいいの?
「眠いのは確かだけど、スキルを取得してもらおうと思って」
「スキル、ですか」
神妙な顔をする三樹。
変なスキルではないぞ。
「ああ。《成長補正・極》と《共有》だ」
成長補正・極は、レベルアップ時の能力上昇が3倍になり、これまで上がったレベルの分も加算される。
取得するだけで一気に強くなれる非常に便利なスキルだ。
ただし、ショップで購入するには10万ポイント必要。1000万円相当だ。
渡す相手は厳選しないと、保有ポイントはあっという間に枯渇してしまう。
共有は、3000ポイントとスキルにしては安い部類に入る。
ただ、その効果は絶大だ。
共有スキル保有者のスキル一つを指定して、ほかの味方と共有できるというもの。
アイテムボックス・無限と組み合わせると、街を巡回している警官眷属たちもアイテムボックスを使えるようになる。
眷属の屍鬼たちが魔物を倒しても、ドロップアイテムに変化しない。
それはつまり、倒した魔物は時間とともにゾンビとなってまた動き出すということ。
あくまで一時しのぎにしかならない。
そのため、警官眷属たちとアイテムボックスを共有することで倒した魔物の復活を阻止するとともに、素材をゲットすることにもつなげる。
「4人とは、おれのアイテムボックスを共有してもらうよ。特に弓削さんは霊馬召喚で単独行動するかもしれないし」
事故車両に放置車両、道路のがれきなどなど、移動の妨げになるものも一緒にアイテムボックスに放り込んでほしい。
ガンマン眷属に警官眷属数名とスキル《共有》でアイテムボックスを共有する。
これでおれの手間がだいぶ省ける。掃除も一気に進むだろう。
あとは必要に応じてスキルを購入し渡す感じか。
物理や魔法などの耐性、半減はできれば全員に付けたいところ。
耐性+10と半減、どちらも50%減になる。
無効や吸収・反射は、物理・魔法・銃撃・火や水の各属性・状態異常と各種存在するが、どれか一つしか購入・取得できない。複数取得しても、最初のが優先されてオンオフとか使い分けることができない。
それに対し、耐性と半減は全種購入・取得することができる。
耐性と半減の両方取得しても最大95%減だというのだから、絶対安心ということにはならないけれど。
でも、状態異常や知覚の外側から一方的に攻撃できる銃撃・遠距離攻撃は、半減が絶対に欲しい。
物理半減などは、最大HPの50%以上のダメージを食らうと、50%に1を足した数字でスキル《食いしばり》が発生する。
通常の《食いしばり》は致死ダメージを受けた際に発生するものだが、半減を取得すると即死級の大ダメージを受けたら半分残るという壊れ性能をしている。
通常の食いしばりと半減スキルの食いしばりで、即死ダメージを2回耐えられるって、強すぎだろうとは思う。
とはいえ、半減スキルに含まれる食いしばりは、物理や魔法など各種半減スキル全部合わせて1回しか発生しない。
物理と魔法と銃撃とで1回ずつ食いしばり発生、なんてことにはならない。
単純にダメージを減らすためのスキルとして考えても強いのはたしか。
ただ、耐性や半減スキルは、防具や装飾品にも付いている場合があるから……。
優先順位を正確に判断するのはとても難しい。
スキル《共有》で、半減スキルを共有できればいいのだろうけれど、耐性・半減等戦闘に関するスキルは共有できないので、世の中甘くはないと肩を落とす。
単純に物理防御を上げるスキルなんてのも格安で買えるのもあって、無効スキルのように干渉してしまわないか確認していると、待ったがかかる。
「あのね、武くん。いくら武くんがたくさんポイントを持っているといってもね、私たちのことだけじゃなくて自分のことにも使ってほしいのよ」
「うーん、一華さんの言うことも分かるけど、おれの場合は称号でステータス上がってる分もあって、今は必要性を感じないんだ。……あー、状態異常半減は取っておくかな……」
一華さんに言われて気づく。
1日目が終わり2日目が始まった段階で称号を得て、その影響で得たスキルもある。
その中に、呪いを無効化するものがあったために、他の無効化や半減するスキルを取得できないものとばかり思っていた。
しかし、実際は《状態異常半減》スキルを無事取得できていた。
今はまだ、分からないことが多すぎる。
無計画にスキルを購入・取得すれば、無駄になってしまうかもしれない。
しかし、それを警戒しすぎると、思わぬところで足をすくわれるかもしれない。
よく考えていても、思いつきでやった方が上手くいくかもしれない。
どうするのが最善か。
それは、状況によって変わるところもある。
「武くん、この属性攻撃って、オンオフできるのかな?」
自身のE-フォンの画面を指す双葉さん。
……距離が近くて、E-フォンじゃないところを見てしまいそう。
「分からない。属性攻撃は、物理攻撃に属性レベル分の割合ダメージが加算される感じだから、取得した段階で攻撃力が割増になるみたい。でも、耐性持ちには有効な手段じゃないから。……うーん、属性が付いてる武器や武器に属性を付与する装飾品を、必要に応じて装備した方がいいんじゃないかな?」
「なるほど……。では、守りに重きを置いて考えた方がいいんだね」
「双葉さんなら、速度を上げるのもありだと思うよ。《分身》とか《縮地》とか。あとはもっと安定して空飛ぶ系。《天駆》とか《空歩》《空走》とか」
レベルが高く称号で能力も上がっている今のおれならまだ双葉さんには負けないけれども、素の能力はおれよりよほど上な双葉さんなら、レベルが同じなら正直勝てる気がしない。称号分の強化があっても。
それくらいは違いがあると思っている。
……というか、双葉さんを傷つけるとか、死んでもやりたくないんだが。
「なるほど。長所を伸ばすように考えるのが良さそうだね」
ありがとう、と頭を撫でられ、頬に手を添えられた。
憧れの女性と見つめ合い、息をするのも大変になってしまう。
「……っ、先輩、私はどんなスキルがいいと思いますかっ?」
双葉さんとは反対方向に顔を引っ張られる。
「いや分からんよ。三樹とはまだ一緒に戦ってないから。だから、スキル構成も焦るな。急に生えるのもあるだろうし、称号と一緒にもらえるものもある」
「…………んむぅ…………」
「まずは、風呂入って寝ろ。明日はまた要第一高校行くつもりだから、そのときにな」
三樹の頭を撫でて、自室を出る。
屋上に出て、星が瞬き始めた夜空を見上げる。
空は、世界改変前と変わらない星座が浮かんでいる。
手を伸ばしてみても、夜空の星々は掴めない。
ただ、今も、魔物の犠牲になっている人や、魔物に怯えて過ごす人たちがいる。
間違いなく。
ゆっくりと、首を横に振る。
悔いるのは、後にしよう。
今は、この《要塞》をより安全な場所にするために、できることを。
「《死霊召喚》」
不死属性の眷属を召喚する魔法スキル。
選んだのは、リビングアーマー。
鉄の全身鎧と兜の中身は空洞。そこに死霊が宿り、剣や槍、盾を持って近づくものを倒す番人だったりする。
鑑定スキルで得られた情報から、『装備を変更でき、登録しておくことができる』という特性を持っていることが判明。
ならば、使わない手はない。
「《光の鎧》、《光の剣》、《光の盾》、《光の弓》を購入。そして装備」
あえて声に出して、リビングアーマーの装備を交換する。
特徴のない鉄の全身鎧は、金で縁取りされた純白に輝く鎧に変わり、刀身に光を纏う純白の剣、宝玉がはめられた純白の盾、手に持つと光で構成された弦と矢が現れる弓を装備する。
この状態で、登録する。
一度戻して、再召喚。
すると、登録された純白の騎士鎧が姿を現す。
成功だ。消費MPも普通の死霊召喚と変わらない。
夜の闇に輝く光も、要塞化の迷彩効果で外からは見えない。
この屋上から、狙った相手に確実に当たる光の矢を射らせる。それだけで、防衛施設の追加は必要ないと思えるくらいには、非常に強力といえる手札を手に入れることができた。
…………その代わり、40万ポイント……4000万円相当……を消費したが……。




